ほんとうの嘘つき

文字数 213文字

躓いて
転んで
顔から
落ちる

砂が
口に
入り
彼は
砂の味がする
と思ったものの
砂の味なんて
知らないから
嘘つきにも程がある
と自分で自分を笑う

ときどき
空気がおいしい
と嘘を吐く

彼は
なんとなく
で生きて
きたのだから
なんとなく
で生きて
いくしかないのだ

砂の味に
血の味が
混じる

彼は
前歯が
折れた
ことに
気づき
嘘でしょ?
と真顔になる

嘘つきは
誰に
嘘でしょ?
と言ったのだろうか

余裕が
なくても
嘘をつけるのが
ほんとうの
嘘つきだ

彼は
自分は
嘘つきだと
嘘を言っていただけの男
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