第10話 スマホ(2)

文字数 565文字

『ヒマリさんの誕生日会ですが、僕も参加できますか?』
 ちょっと白々しかったな……。
『それはかまわないだろうけど』
『まだなにやるか決まってない』

『BBQってコウキくんから聞きました』

『まだ決まってないよ』
 そうとう嫌なんだな。

『ふたりでゲームでもやってましょう』

『やだ』
『BBQなんて大っ嫌い』
『ジュンは平気なの? 君の言う青春ごっこじゃん』

『僕はアカリさんといっしょなら』
 なんか攻めた返答……。
 いやでも積極的な気分になるな……。

『ヒマリはチヤホヤされたいだけだから、別のパーティーでいいんだよ』
 なんかはぐらかされた?

『主役は僕らじゃないんだしさ』
『開放的な雰囲気も大事なんでしょ?』

『今日のジュン変』
 そう。
 僕はきっと告白したくて先走ってるんだ……。

『じゃあさ、飯盒炊爨(はんごうすいさん)でカレーでも作る?』

『カレー?』
『あたし飯盒なんて炊いたことない』

『僕もない。チャレンジ』
『会場をキャンプ場にしてもらってさ』
『BBQやる人は別で楽しんでもらって』

 それきり返信は途絶えた。
 僕のスマホはスクールバッグのポリエステル繊維の囲いの中でひっそりとしていた。
 数学Bの富澤がガラガラに声を嗄らし、英語Ⅱの鎌田が三回連続でくしゃみをした。ショートホームルームで田島から夏服の切り替えを連絡された。そして放課……。

『やる』
 僕の中に力があふれた。
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