第17話 冬瓜は夏野菜
文字数 1,014文字
5分ほど走ると緑の中に古い住宅が見えた。車を停めて、また「ごめんくださあーい!」と言う。よく通る声だ。はは、呼び鈴とかも使わないんだね。
人間の返事の代わりに元気な「ワンワン!」という犬の声が聴こえた。続いて「あれ美織ちゃん」とご婦人の声も。
ゴンザブロウは雑種の中型犬だった。美織さんに懐いているらしく、ハ、ハ、と喜んでいる。かわいいな、こりゃ。
「さっき畑のほうに行ってたの。スイカたくさんいただいて。ありがとうね。ゴンザブロウの話になったから会いにきたんだ」
それからまた彦星くんの紹介と世間話、そして「最近足が痛くてね」というご婦人との話の流れでゴンザブロウの散歩を引き受けてしまった。
わかってはいたけど美織さんってまじパワフルだな。彦星くんも若干戸惑ってるもんね?
「彦星くんも一緒に。お散歩、楽しいよ!」
くう。この笑顔には敵わない。
普段冷房の効いた天文館に引きこもっている彦星くん。なかなかいい運動になったんじゃないかな?
散歩の途中、なゆうちゃんと同級生の子の家の前でカボチャと冬瓜 とトマトを山盛りもらった。持つのはもちろん彦星くんの仕事だ。あはは、大丈夫?
「彦星くん、冬瓜て知っとる?」
畑のマダムに訊ねられて「えと……」と記憶を辿る彦星くん。
「これよ」
「え。こんなデカいんですか」
丸ごとの冬瓜も珍しいけど、丸ごとのカボチャも都会ではあんまり見かけないよね。
「『冬瓜』って、夏野菜なんですね。『冬』って書くのに」
「そやよー。なんで冬って書くんじゃろね?」
「んー。知らないなあ」
あはは。教えようか? 冬瓜は皮が厚いから日持ちするんだって。だから『冬まで持つ瓜』という意味で『冬瓜』というんだそうだよ。
「ありがとうー」と手を振ってゴンザブロウを家に返すとまた冬瓜をいただいた。
「すごい荷物になりましたね」
「ねー。みんなほんと、優しくってありがたいよ」
美織さんは車を走らせながらほくほくと嬉しそうに笑って「スイカ、今夜切ろうね」と彦星くんに言った。
晩の食卓には出汁の効いた絶品の冬瓜料理、それからカボチャサラダ、あと真っ赤なスライストマトが並んだ。
そして食後のデザートには、赤色が鮮やかなくし切りの大きなスイカだ。彦星くん、どう食べたものかと困っていると、館長が笑って「こう」と教えてくれた。
「種は出してね」
「あ、はい」
うはは! そのくらいはわかるよな? いいね。夜風で風鈴がちりん。これぞ日本の夏だ。
人間の返事の代わりに元気な「ワンワン!」という犬の声が聴こえた。続いて「あれ美織ちゃん」とご婦人の声も。
ゴンザブロウは雑種の中型犬だった。美織さんに懐いているらしく、ハ、ハ、と喜んでいる。かわいいな、こりゃ。
「さっき畑のほうに行ってたの。スイカたくさんいただいて。ありがとうね。ゴンザブロウの話になったから会いにきたんだ」
それからまた彦星くんの紹介と世間話、そして「最近足が痛くてね」というご婦人との話の流れでゴンザブロウの散歩を引き受けてしまった。
わかってはいたけど美織さんってまじパワフルだな。彦星くんも若干戸惑ってるもんね?
「彦星くんも一緒に。お散歩、楽しいよ!」
くう。この笑顔には敵わない。
普段冷房の効いた天文館に引きこもっている彦星くん。なかなかいい運動になったんじゃないかな?
散歩の途中、なゆうちゃんと同級生の子の家の前でカボチャと
「彦星くん、冬瓜て知っとる?」
畑のマダムに訊ねられて「えと……」と記憶を辿る彦星くん。
「これよ」
「え。こんなデカいんですか」
丸ごとの冬瓜も珍しいけど、丸ごとのカボチャも都会ではあんまり見かけないよね。
「『冬瓜』って、夏野菜なんですね。『冬』って書くのに」
「そやよー。なんで冬って書くんじゃろね?」
「んー。知らないなあ」
あはは。教えようか? 冬瓜は皮が厚いから日持ちするんだって。だから『冬まで持つ瓜』という意味で『冬瓜』というんだそうだよ。
「ありがとうー」と手を振ってゴンザブロウを家に返すとまた冬瓜をいただいた。
「すごい荷物になりましたね」
「ねー。みんなほんと、優しくってありがたいよ」
美織さんは車を走らせながらほくほくと嬉しそうに笑って「スイカ、今夜切ろうね」と彦星くんに言った。
晩の食卓には出汁の効いた絶品の冬瓜料理、それからカボチャサラダ、あと真っ赤なスライストマトが並んだ。
そして食後のデザートには、赤色が鮮やかなくし切りの大きなスイカだ。彦星くん、どう食べたものかと困っていると、館長が笑って「こう」と教えてくれた。
「種は出してね」
「あ、はい」
うはは! そのくらいはわかるよな? いいね。夜風で風鈴がちりん。これぞ日本の夏だ。