第6話 目的地、到着
文字数 697文字
終着音に目を覚まし、新幹線から在来線へと乗り換える。ここでもドキマギしていたら駅員さんが助けてくれた。そうよ。意地になる必要なんかない。人を頼ることは悪いことじゃないからね。
車窓の景色はどんどん緑が増えていた。駅で扉が開くたび、もあ、と熱を帯びた真夏の風が吹き込む。その香りが都会とはもうちがった。植物の水分。緑の匂い、土の匂い。生命の息吹。
そうしてようやく目的地に着いたのはもう夕刻だった。時計はそうだが実際空はまだ青く、日も高い。
それにしても駅舎がボロいな。日本最古と言われても疑わないくらいだ。木造なのか、なんというか全体的に朽ちている。無人駅なのは家出少年の湊斗くんにはありがたいね。駅員の代わりにサビ柄のでかいネコがベンチでぐーすか寝ている。近くをヤモリがシュシュっと走った。蝉の声がシャンシャンと絶えずやかましい。
いや、しかし暑い。車内との温度差もあって余計にそう感じるのかもしれない。だけど大都会の暑さとはやはり種類がちがう。空気に含まれる水分の純度が、酸素の濃さがちがう。木の葉の一枚ずつがちがう。日の光の当たり方がちがう。
湊斗くんもそれを感じているらしく、大きく深呼吸をしていた。
すう──
はあ──
《いいね。浄化されるようだな》
木漏れ日がやさしく湊斗くんの髪を撫でた。
ほほう? どうやら「ようこそ」って歓迎されてるみたいだな。本人はそのことにぜんぜん気づいてなさそうだけど。
汗をかきつつもくもくと歩く湊斗くんの背中を宙から見下ろしながら、彼の未来に想いを馳せる。なんつーか、もう親みたいな心境だわな。
《がんばれよ、湊斗くん》
片道切符で、どこまでゆけるか。
車窓の景色はどんどん緑が増えていた。駅で扉が開くたび、もあ、と熱を帯びた真夏の風が吹き込む。その香りが都会とはもうちがった。植物の水分。緑の匂い、土の匂い。生命の息吹。
そうしてようやく目的地に着いたのはもう夕刻だった。時計はそうだが実際空はまだ青く、日も高い。
それにしても駅舎がボロいな。日本最古と言われても疑わないくらいだ。木造なのか、なんというか全体的に朽ちている。無人駅なのは家出少年の湊斗くんにはありがたいね。駅員の代わりにサビ柄のでかいネコがベンチでぐーすか寝ている。近くをヤモリがシュシュっと走った。蝉の声がシャンシャンと絶えずやかましい。
いや、しかし暑い。車内との温度差もあって余計にそう感じるのかもしれない。だけど大都会の暑さとはやはり種類がちがう。空気に含まれる水分の純度が、酸素の濃さがちがう。木の葉の一枚ずつがちがう。日の光の当たり方がちがう。
湊斗くんもそれを感じているらしく、大きく深呼吸をしていた。
すう──
はあ──
《いいね。浄化されるようだな》
木漏れ日がやさしく湊斗くんの髪を撫でた。
ほほう? どうやら「ようこそ」って歓迎されてるみたいだな。本人はそのことにぜんぜん気づいてなさそうだけど。
汗をかきつつもくもくと歩く湊斗くんの背中を宙から見下ろしながら、彼の未来に想いを馳せる。なんつーか、もう親みたいな心境だわな。
《がんばれよ、湊斗くん》
片道切符で、どこまでゆけるか。