七十五 栗と……?

文字数 2,179文字

 最初から、トップギア全開のでんきぃぃぃぃあんまぁぁぁぁ~を喰らって、ガゴルが、一瞬にして、その快楽に心と体を奪われて、あられもない痴態を曝し始める。



「こんな隊長、初めて見た」



 スマックが言って、これでもかと、じいーっとガゴルの姿をガン見しながら、何やら、腰を引いて前屈みになった。



「ふははははははは。どうだわん? これの足で、ヒイヒイ言ってしまっている今の気持ちはどうだわん? お前の頭と心とお股が壊れるまで、やめないんだわん。ふははははははは。わん」



 柴犬が、完全に力に酔っています。というようなリアクションをしつつ、とっても、悪そうな笑みを顔に浮かべる。



「うん。これは、ちょっと、エロいかも」



 町中一も、あんなに強気だった女性が、こんなに乱れて。ごくりっ。これは、うん。うん。素晴らしいかも知れない。と思いつつ、腰を引いてしまった。



「はっぅ。ふうぃー。イってしまった。あ。違った。これはいけない。少年。頭のかわいそうな生き物。もう良いだろう? 許してやってくれ。このままじゃ隊長が壊れてしまう」



 なんだかすっきりしたような顔をしてから、恥じらうような表情を見せつつスマックが言う。



「スマック、お前? どうした? なんかあったのか? ひょっとして、それは、まさか」



「何を言うんだ少年。手も何も使ってないのに。そんな事ができるはずないじゃないか」



 スマックが言って、お股の辺りをごそごそと弄った。



「スンスン。クンクン。むむぅぅぅわん。栗の臭いがするんだわん。ガゴルのお股から出てるのとは違う臭いなんだわん。これは、どういう事なんだわん?」



 柴犬が、でんきぃぃぃぃあんまぁぁぁぁ~を続けながら、顔をキョロキョロとさせる。



「どういう技術なんだか知らないけど、男の事だからな。あまり追及しても良い事はなさそうだ。そんな事より、スマック。すまない。俺は、柴犬を止める事はできない。柴犬の心の問題だからな。柴犬の気が済むまでは、悪いがこのままにさせてもらう」



「そんな、少年」



 スマックが、不自然に、体をビクンビクンと痙攣させてから、また、すっきりとしたような顔をする。



「これは? わん? 栗の臭いが、強くなったような? わん?」



「ええ? また、なの? どういうメカニズムなの? ジ〇ン驚異のメカニズムなの?」



 町中一は、本当に、どういう事なんだろう? やっぱりあれかな? 兵隊さんだから、戦闘で手とかを怪我して何もできなくなった時とかの為に、そういう訓練とかもしているって事なのかな? はぐぅっ。すいません。すいません。世界中の兵隊さんすいません。今のは俺の勝手な偏見でした。などと、阿呆な事を考えてしまう。



 ガゴルが、一際大きな、絶叫のような喘ぎ声を上げると、白目を剥いて、体を痙攣させながら、気を失った。



「隊長」



 スマックが、ガゴルの傍に走った。



「ふんっ。わん。もう気絶したのかわん。つまらない奴なんだわん」



 柴犬が、弱者を侮蔑するような目を、ガゴルに向け、吐き捨てるように言葉を放つ。



「柴犬。もう気は済んだのか?」



「主様。ありがとうなんだわん。これは、これから、今日の出来事を胸を張って、人に話す事ができそうなんだわん」



 柴犬が、キラキラと輝くかわいい円らなお目目で、町中一の目を見た。



「そうか。それは良かった」



 町中一は、まだ気を失っているガゴルと、そのガゴルを介抱しているスマックの方に目を向ける。



「スマック。悪いが、俺達はこれで帰らせてもらう。こんな事になった後で、こんな事を言うのは調子が良いと思うが、もし、俺達の力が必要だったら、いつでも呼んでくれ」



 町中一は、返事は聞くまい。こうなってしまっては、もう、関係が続く事はないだろうしな。と思うと、柴犬。行くぞ。と言ってから、魔法を使おうとした。



「少年。こっちこそすまなかった。酷い事をしてしまった」



 スマックが、立ち上がって、深く頭を下げる。



「そんな、俺達こそ、こんなに酷い事をしたのに」



「いや、とても素敵な物を見せてもらった。俺は、今、猛烈に感動してる」



 スマックが言ってから、しまったというような顔をする。



「今のは、あの、あれだ。聞かなかった事にして欲しい。それで、そんな事より、こっちこそ、本当にすまなかった。次からはできるだけ気を付ける。だが、俺も、下っ端だからな。また迷惑をかけてしまうかも知れない。少年。それでも、俺との繋がりを絶たないでいてくれるか?」



 スマックが言って、町中一に握手を求めるように手を伸ばす。



「ああ。もちろんだ。これからもよろしく」



 町中一も、握手をしようと思って、手を伸ばす。



「むぅぅわん? なんだか、スマックの手も栗臭いんだわん?」



 町中一は、そうだった。これはいけない。と思うと慌てて手を引っ込める。



「少年?」



「あの、あれだ。えっと、ええっと、そうだ。俺のいた国では、握手っていうのは、あんまり、えっと、縁起だ。縁起の良いものじゃなくってな。今は、やめておこう」



「そうか。それはすまなかった」



 スマックが手を引く。



 ふうー。危なかった。うまくごまかせたかな? それにしても、あんな手で握手を求めて来るとは。悪気はないんだろうけど、これは、スマックとの付き合い方を、今後は考えた方が良いかも知れないな。と、町中一は、大真面目にそんな事を思いながら、柴犬の方を見た。
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