五十五 嬉しょん
文字数 2,263文字
町中一は、ななさんのラケットの体から、思い切り不自然に、如何にも機械でできていますというような、メカメカしい見た目の両腕が生えているのを見て、思わず、ブブブッと吹き出してしまう。
「なんで笑うのよぉん。何よこれぇん。酷いじゃないぃん」
「すまんすまん。あまりにも不格好、いや、似合っていたもんで、ついつい、面白、違った。あれだよ。感動して笑ってしまったんだ」
「本音がだだ漏れよぉん。あんたん。酷過ぎだわぁん」
「そんな事ないぞななさん。その腕、実に格好良くって、便利そうじゃないか」
「今更そんな事言われたって、ごまかされないわぁん」
「ごまかしてなんかない。凄いじゃないか。手の生えたラケットだぞ? 俺は初めて見た。それに、それって、書くだけじゃなくって、他にも色々な事ができるんじゃないか?」
町中一は、言葉を出している途中で、書くだけじゃなくっての件のところを思い付いて、本気でこれは便利かも知れないと思ったので、それをそのまま言葉にしてみた。
「あらぁん。そうぉん? あんたんがそんなふうに言うなら、ちょっと、このままでいて、みようかしらねぇん」
町中一の今の言葉で、気分が良くなったのか、ななさんの態度が一変して、満更でもないような声音で言い、両手を、動きを試すかのように、動かし始めた。
「駄ラケット。手が生えて良かったわんね。主様。そんなのは放っておくわん。うがちゃんが待ってるんだわん。早く書き方を教えてあげるんだわん」
「おお。そうだった。そうだった。それじゃ、えっと、そうだな。まずは、うーんと、どう教えよっか」
「まずは、魔法で、お手本となる文字が書いてある物を出すと良いと思うんだわん。それで、それを見て、書き取りをやってもらえば良いんだわん」
「流石、柴犬。ナイスアイディア」
柴犬の提案を受けて、すぐに、お手本となる、この世界の文字が書かれている紙を、人数分、町中一は魔法で出した。
「これ、五十音なのか?」
紙に書かれている文字を見た町中一は、思わずそう呟く。
「本当は違うんだわん。でも、女神様の力で、主様にはそういうふうに理解できるようになってるんだわん。言葉が分かるのも同じ理由なんだわん」
「それは、凄いな」
「この世界には他にも幾つか違う言語があるんだわん。主様はそのすべてを理解できるようになってるんだわん」
「なんだよそれ。それだけで何かしらの仕事ができて、食って行けるだろ」
「もちろんなんだわん。主様なら朝飯前なんだわん」
言い終えると、なぜか、柴犬が自分の事のように、誇らし気な表情をする。
「おい〜。柴犬〜。お前は本当にかわいいな」
町中一は、柴犬の頭を撫で撫でした。
「わひーん。主様やめろわん。皆が見てるんだわん。恥ずかしいんだわん」
柴犬が全身で、喜びを表現しつつ、そんな事を言う。
「またまたそんな事を言って。何が恥ずかしいんだ? ただ、褒めているだけじゃないか」
町中一は更に撫で撫でした。
「やめろわん。本当に嫌なんだわん。そんなにすると、駄目なんだわん」
「何が駄目なんだ~? ほーれほーれ。柴犬はかわいいなあ」
町中一は、これでもかと、柴犬の頭を撫で撫でした。
「やめろって言ってるのにわんっっ。もう我慢できないんだわんっっ」
柴犬が、悲鳴に近いような声を上げ、お小水をしょぼぼぼぼと、その場にしてしまう。
「え? 何? どうした?」
町中一は手を止め、これは、おしっこだよな? やべっ。本当に嫌だったのか? これは、やり過ぎちまったか。と思うと、柴犬。ごめん。すぐに体を拭いてやるからな。と言って、魔法を使ってタオルを出した。
「平気なんだわん。それに、本当は、嫌じゃないんだわん。嬉し過ぎてお漏らしちゃっただけなんだわん。違ったわん。本当は、嬉しくなんかないんだからわんね」
「柴犬~。かわいいなあ〜。お前が最強だ~」
町中一は、タオルで柴犬を包み込み、その体を拭き拭きしながら、抱き締める。
「はわはわはわわん。主様。やめるんだわん。また漏れちゃうんだわん」
「でも本当は、もっとして欲しいんだろう?」
「そんな事ないんだからわんね。でも、もう、ちょっとだけなら、やっても良いんだからわんね」
「何あれ? あれは、新手のお漏らしプレイか何か?」
「ちょっと、あれは酷いわね。わえ達には、エッチな事は禁止とか言っておいて。自分達だけなんて」
スラ恵とお母さんスライムの不穏な会話が、柴犬とじゃれ合っている町中一の耳に入って来た。
「よーし。うがちゃん。早速練習をしようか?」
町中一は、このままだと、スライム親子がまたおかしな事を始めてしまうかも知れないと思うと、柴犬とじゃれ合うのをやめて、何事もなかったかのように、うがちゃんに声をかける。
「了解ですうが。先生。何から書けば良いうが?」
うがちゃんが、目をキラキラと輝かせて、元気良く言葉を返して来た。
「大変良いお返事です。では、この紙を。おっと、そっちの二人もな」
町中一は、うがちゃんの態度に、心を打たれつつ、文字の書いてある紙を皆に配る。
「えーっと。一応確認だけど、皆、読めるか?」
「読める」
「読めるわ」
「読める〜?」
「うがは、全部読めると思ってたけど、読めるのと、読めないのが、あるうが」
「大丈夫だぞうがちゃん。ちゃんと教えてあげるからな」
町中一は、そう言ってから、うがちゃんを安心させようと思い、うがちゃんの頭をそっと優しく撫で撫でした。
「なんで笑うのよぉん。何よこれぇん。酷いじゃないぃん」
「すまんすまん。あまりにも不格好、いや、似合っていたもんで、ついつい、面白、違った。あれだよ。感動して笑ってしまったんだ」
「本音がだだ漏れよぉん。あんたん。酷過ぎだわぁん」
「そんな事ないぞななさん。その腕、実に格好良くって、便利そうじゃないか」
「今更そんな事言われたって、ごまかされないわぁん」
「ごまかしてなんかない。凄いじゃないか。手の生えたラケットだぞ? 俺は初めて見た。それに、それって、書くだけじゃなくって、他にも色々な事ができるんじゃないか?」
町中一は、言葉を出している途中で、書くだけじゃなくっての件のところを思い付いて、本気でこれは便利かも知れないと思ったので、それをそのまま言葉にしてみた。
「あらぁん。そうぉん? あんたんがそんなふうに言うなら、ちょっと、このままでいて、みようかしらねぇん」
町中一の今の言葉で、気分が良くなったのか、ななさんの態度が一変して、満更でもないような声音で言い、両手を、動きを試すかのように、動かし始めた。
「駄ラケット。手が生えて良かったわんね。主様。そんなのは放っておくわん。うがちゃんが待ってるんだわん。早く書き方を教えてあげるんだわん」
「おお。そうだった。そうだった。それじゃ、えっと、そうだな。まずは、うーんと、どう教えよっか」
「まずは、魔法で、お手本となる文字が書いてある物を出すと良いと思うんだわん。それで、それを見て、書き取りをやってもらえば良いんだわん」
「流石、柴犬。ナイスアイディア」
柴犬の提案を受けて、すぐに、お手本となる、この世界の文字が書かれている紙を、人数分、町中一は魔法で出した。
「これ、五十音なのか?」
紙に書かれている文字を見た町中一は、思わずそう呟く。
「本当は違うんだわん。でも、女神様の力で、主様にはそういうふうに理解できるようになってるんだわん。言葉が分かるのも同じ理由なんだわん」
「それは、凄いな」
「この世界には他にも幾つか違う言語があるんだわん。主様はそのすべてを理解できるようになってるんだわん」
「なんだよそれ。それだけで何かしらの仕事ができて、食って行けるだろ」
「もちろんなんだわん。主様なら朝飯前なんだわん」
言い終えると、なぜか、柴犬が自分の事のように、誇らし気な表情をする。
「おい〜。柴犬〜。お前は本当にかわいいな」
町中一は、柴犬の頭を撫で撫でした。
「わひーん。主様やめろわん。皆が見てるんだわん。恥ずかしいんだわん」
柴犬が全身で、喜びを表現しつつ、そんな事を言う。
「またまたそんな事を言って。何が恥ずかしいんだ? ただ、褒めているだけじゃないか」
町中一は更に撫で撫でした。
「やめろわん。本当に嫌なんだわん。そんなにすると、駄目なんだわん」
「何が駄目なんだ~? ほーれほーれ。柴犬はかわいいなあ」
町中一は、これでもかと、柴犬の頭を撫で撫でした。
「やめろって言ってるのにわんっっ。もう我慢できないんだわんっっ」
柴犬が、悲鳴に近いような声を上げ、お小水をしょぼぼぼぼと、その場にしてしまう。
「え? 何? どうした?」
町中一は手を止め、これは、おしっこだよな? やべっ。本当に嫌だったのか? これは、やり過ぎちまったか。と思うと、柴犬。ごめん。すぐに体を拭いてやるからな。と言って、魔法を使ってタオルを出した。
「平気なんだわん。それに、本当は、嫌じゃないんだわん。嬉し過ぎてお漏らしちゃっただけなんだわん。違ったわん。本当は、嬉しくなんかないんだからわんね」
「柴犬~。かわいいなあ〜。お前が最強だ~」
町中一は、タオルで柴犬を包み込み、その体を拭き拭きしながら、抱き締める。
「はわはわはわわん。主様。やめるんだわん。また漏れちゃうんだわん」
「でも本当は、もっとして欲しいんだろう?」
「そんな事ないんだからわんね。でも、もう、ちょっとだけなら、やっても良いんだからわんね」
「何あれ? あれは、新手のお漏らしプレイか何か?」
「ちょっと、あれは酷いわね。わえ達には、エッチな事は禁止とか言っておいて。自分達だけなんて」
スラ恵とお母さんスライムの不穏な会話が、柴犬とじゃれ合っている町中一の耳に入って来た。
「よーし。うがちゃん。早速練習をしようか?」
町中一は、このままだと、スライム親子がまたおかしな事を始めてしまうかも知れないと思うと、柴犬とじゃれ合うのをやめて、何事もなかったかのように、うがちゃんに声をかける。
「了解ですうが。先生。何から書けば良いうが?」
うがちゃんが、目をキラキラと輝かせて、元気良く言葉を返して来た。
「大変良いお返事です。では、この紙を。おっと、そっちの二人もな」
町中一は、うがちゃんの態度に、心を打たれつつ、文字の書いてある紙を皆に配る。
「えーっと。一応確認だけど、皆、読めるか?」
「読める」
「読めるわ」
「読める〜?」
「うがは、全部読めると思ってたけど、読めるのと、読めないのが、あるうが」
「大丈夫だぞうがちゃん。ちゃんと教えてあげるからな」
町中一は、そう言ってから、うがちゃんを安心させようと思い、うがちゃんの頭をそっと優しく撫で撫でした。