第19話:リーマンショックと夏の避暑

文字数 2,046文字

 リーマンショック時には、多くの金融機関が30倍~40倍のレバレッジをかけていたと言われている。中身のない金融商品で大きく儲けようとした結果であった。世界的に有名な投資家ウォーレン・バフェット氏は、「デリバティブは殺傷力の高い危険な武器である」とかねてより警鐘を鳴らしていた。

 サブプライム問題の噴出からリーマン・ブラザーズの破たんが原因で米ドルが極端に売られ代わりに買われたのが財政が安定していた日本円だった。1ドル104円で取引されていた為替レートが10月28日には、株価大暴落で日経平均株価が6994円へ。12月には急激な円高87円へ。そのせいで日本の輸出産業は大打撃を受けた。

 リーマンショックに直接関係していないにもかかわらず日本市場も大暴落した。円高が進むと輸出産業が大損するので日経平均株価も引きずられるように株価を下げてしまった。日本の株価が輸出産業で持っていると言う証拠でもあった。日本市場が低迷しているさなか、最もダメージを受けた当事国であったアメリカは経済危機をうまく脱した。

 その後、順調に株価を回復。移民が多く少子化問題のないアメリカは、GDPも順調に推移し経済危機を脱する条件がそろっていた。またリーマンショック後、アメリカ経済はFRB議長のベン・バーナンキがリーダーシップを取り不況が長引かなかった、ベン・バーナンキはデフレ克服のため、「ヘリコプターからお金をばら撒くように」豪快に、あらゆる債券や証券を買いまくった。

 また、米ドルの希少価値が薄まってドル安が進むようにするため、刷れるだけのドルを刷りまくった。そのせいで、ベン・バーナンキは「ヘリコプター・ベン」とか「ヘリコプター印刷機」というあだ名が付いたほどであった。ここからもアメリカ政府の徹底的なデフレ抑制対策が取られていたことが理解できる。

 しかし、この頃、みなとみらいの海を見渡せるマンションの賃貸物件が増えた。そして、賃料もやや下がり2LDK80平米のマンションが月28万円の賃貸物件が出ていた。ただし、その他、礼金56万円、敷金56万円が必要であった。それでも田所香里さんが、まさに夢のようだわとマンションからの眺めを見て興奮していた。

 そして悪夢の2008年が去り2009年が明け、1月に田所寿一夫妻が引越を終えてみなとみらいのマンションに入居し、早期退職割増制度を利用して早期退職しようかと田所寿一が聞いた。すると奥さんが、子供達も巣立ったので、今後、なんとかやっていけそうだから、そうしましょうかと同意してくれた。

 こうして田所寿一は手にし6月ボーナスをもらいと通常の製造業の2倍近い退職金を受け取り退職した。しかし、みなとみらいのマンションについては購入ではなく賃貸ので良いだろうと考えた。その理由は、自由に旅行ができ、何か予期せぬ事情がおきたり不景気で不動産価格の多きな下げも考慮して田所寿一夫妻が決めた。

 その後、夏には、避暑のため北海道の釧路の一流ホテルのマンスリーパックを利用して網走、知床、十勝、帯広の名所を巡ったり、温泉でゆっくりして過ごし9月に橫浜に帰って来た。この頃、田所智次とナンシーも老後のことを考え始め、早期退職して2人で英会話教室を開いて悠々自適な老後の生活設計を考え始めた。

 こうして2010年が明け、この年、田所智次は、夏のボーナスをもらい、橫浜銀行を早期退職した。そして、橫浜、新横浜、川崎を中心に英会話教室を週に2回ずつ行うことにした。今年は、7月~8月、日本では記録的な猛暑となり田所寿一夫妻は、昨年同様、避暑のため釧路に2ヶ月、滞在して快適な生活を続けた。

 しかし、巷では、9月7日、尖閣諸島で中国漁船と日本の警備艇との衝突事件が発生。その後、衝突事件の映像が公開され国会で大問題となった。こうして、2011年が明け、3月11日、東日本大震災が発生した。その時、隣の人が動かない方が安全だと言われ、部屋に留まった。

 その他、以前から気に入った天然水を使っていたので2Lのペットボトル6本、米も10キロ単位で買っていたので1ヶ月以上の在庫があり冷凍室に肉、魚も入っていたので夫婦で机の下で避難していた。田所夫妻は、高層マンション特有の長周期震動を経験して目が回るような不思議な体験をしたが特に大きな被害はなかった。

 また、このマンションでは、非常用の電源が確保されていたため、外部からの電力供給が断たれた場合でも電力を調達できる仕組みになっていて電気は使えた。しかし、洋服タンス、机は、倒れたので怖かった。地震後、倒れたものを片付けて、その晩には、ガスも使えて通常通りの生活が戻った。

 しかし、テレビを見ると東北の津波の惨状や大火災、原発の冷却装置の破損、国道と大勢の会社員達が長蛇の列をなして歩いている姿が見えて怖くなった。そのテレビ放送を見て眠れない夜を過ごした。この地震は、日本における近代以降の観測において最大となるマグニチュード9を記録した。
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