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文字数 939文字

 掃除機が使えないのかな?そんな事を思っていると。親父がリモコンでテレビをつけた。
親父の部屋にテレビ?
確か、リビングにあった筈だが。
 リビングに行くのがはばかれた。
テレビはニュースをやっていた。
国営放送だった。

 暫く無言で見ていたが、まったくオーバーバードの事件はニュースになっていなかった。
もう3日も経つのだから、飽きたのかな?
それとも全て闇の中へと沈めてしまったのか。
オーバーバードのリンダのやった事が、無意味に感じてイライラした。

 と、その時アメリカとロシアの首相が、国際協力で月に基地を造る話をしていた。
 月に基地?ニュースによると。
10年のスパンでやるとの事であった。
他の国も参加を表明しているとの事であった。
 親父はテレビを消した。そして、

「これが我々の作戦の成果だ。納得したか?」

と静かに言った。

「これが世界平和?あの、とんでもない兵器を世界中に拡散したのだろう?ロシアは持っていないのか?」

「オーバーバードがメッセージカプセルを投下した。既に開発が始まっているだろう」

「はっ!そんな事を。第三次世界大戦にならなきゃ良いけどね」

「どの道、一国が持てば戦争は免れない。
だから我々とリンダ博士で、この方法をとったのだ」

「リンダ博士?」

「そうだ、人工知能を開発した、リンダゲシュタット博士だ」

「オーバーバードの人工知能も、同じ名前を名乗っていたよ」

「そうか?確か、人工知能の名前はジョウサンだったと思ったがな。分かりやすいように、
そう名乗ったのだろう」

「可哀想に。リンダ、いやそのジョウサン、
とやらは、バラバラになってしまったんだな。
世界平和の為に」

「そうだな」

 親父は何も感じていないかの様だった。
俺は、生死の境を一緒に戦った仲間として、
拘りがあった。
 兎に角、俺は多分、仕事も何もかも失ったろうから。家の片付けを手伝う事にした。
夕方には、ガラスの片付けも終わり。
部屋も整然と片付けられ。ガラスが割れた、
サッシや窓はダンボールで塞いで。
何とか人の住める家に戻っていた。

 弟子達のパソコンも没収されて。
携帯もタブレットも押収されていて。
俺達はリビングにテレビを戻すと。
そこで親子の様に大家族の様に。
皆で食事をとった。
 皆、研究も何も出来ないので。酒を飲んで、良く喋った。
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