10頁

文字数 925文字

 はっ!?こいつは、とんでもない野郎だ。
 女の声だが。やろうとしているのは若い、
いかれた兄ちゃんの発想だ。だが・・・。

「やってくれ、信じるよ」

「了解!」

と言うと。あっという間に画面が代わるように旋回した。旋回ではない向きを変えたのだ。
航空力学的な常識を覆して。
まったくの無衝撃、無音。
そして、何の気配も前触れもなく方向転換したのだ。
これでは普通のレーダーでは追えない。
 いや既に、俺の人間としての感覚を越えてしまっている。
気分が悪い。何となく酔ってきた。
そんな気分だった。

 それから、何を考えているのか分からない、この戦闘機に俺は振り回された。
 最大速度は俺の知っている物とは、一線を画していた。これは飛行機ではない。
空飛ぶ別の物体だった。
 成る程、戦略の全てを書き換えなければならない程の新兵器だ。ミサイルなど子供が投げたボールより、ゆっくり見えた。
戦闘機などハエやカ以下だった。
追いつく事も出来ない。

 高高度に達すると、まるで深海の底を眺めているかの様だった。ウロウロする小魚を見ている気分だった。
私は外をなるだけ見ないようにした。
酔いそうだったのだ。
感覚が追い付かないのだ。

「済まない、ロシアには脅威を伝えられたと思うが。これから何処へ?」

「そうですね、ヨーロッパも回りますか」

「君は楽しんでいないか?」

「まさか・・・」

 いや、この子は生まれたての子供だ。
自分の能力に酔っている。自慢したくてしょうがないのだ。そう感じた。

「ヨーロッパに行く前に、質問しても良いかな?」

 『どうぞ』

「この機は、戦闘機は一体、どの位のスペックがある?その速度とかだが」

 『機密です。あはは、冗談です。
世界に知らせようとしているのに仲間に秘密にしてもしょうがないですね。
速度は・・・、理論的には無限です・・・。
機体は、そうはいきませんから。
まあマッハで計測出来る範囲です。
一応、重力エンジンが機体をバリヤーの様に包みますので。まあ、中の機械やパイロットの事を考えなければ。
ほぼ、無限のスピードが出せますが。
やった事はありません』

「やらないでくれ。やはり燃料は核か?
普通のターボファンエンジンを積んでいたが」

「いえ、ガソリンです。正確には揮発性の低い油です。灯油位の」
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み