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文字数 871文字

 親父は、憔悴しているかと思えば。
コーヒーを飲みながらタバコを燻らしていた。
 一瞬、怒鳴りたくなったが。
部屋はとんでもなく荒らされ嵐が去った後の様だった。
 几帳面な親父が、無惨にも床に散らかされた本や資料に一切手をつけずに。
呆然としているかの様に見えた。

「只今。親父オーバーバードはどうなった?」

 俺が、その事しか聞けない雰囲気で、そう聞くと。

「撃墜された」

とだけ短く言った。
 言いたい事が山程あったが。
ふと見ると、親父の机の上にあったパソコンが消えていた。押収された様だ。
 この部屋は、一昔前の書斎になっていた。
いや書斎だった。
唯、廃屋の様な感じだったが。

 サッシのガラスが派手に割られて、部屋に散乱していた。親父はスリッパを履いていた。
俺はソファーの上の本を、本棚を起こして直そうとして。本棚が何かに引っ掛かって立ち上がらないので諦めて。
本を投げ捨てソファーに座った。
親父は俺のそんな行動にも腹を立てなかった。

「親父、この作戦、成功なのか?やる意味あったのか?」

 俺はそれが聞きたかった。
何故、解放されたのかも気になった。
すると親父は、タバコを揉み消すと。

「1つ言っておく事がある。
この家は盗聴されている。私達は正義だ、包み隠す事など何も無い。だから、どんなに聞かれようとも私は気にしない。
お前も、そのつもりで喋れ」

「ウワーッ!!」

 俺は大声を挙げた。庭の弟子達が俺の声に驚き、振り向いてこっちを見ていた。

「これで、盗聴機を使ってた奴が苦しんでいるだろう、あははは」

と笑うと。親父はニヤリと笑い、

「相変わらず、お前は面白い発想を持っているな。だが最新鋭ならフィルターが付いていて、大きな声は直ぐに小さくなるだろう」

「そうですか・・・」

 盗聴が怖い訳ではなかったが。俺の不用意な言葉で、再び警察に突入されては堪らない。
俺は言葉を選んでしまった。
 二人に沈黙が降りた。
すると庭から、靴にビニールのカバーをした、弟子の1人がガラスを片付けだした。
ジャリ、カリッと音がした。
掃除機をかければ早いのだろうが。
大きな物だけ、片付けるんだなと理解した。
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