第10話

文字数 597文字

僕のバンドも休止状態に陥った。
ドラマーは自分のバンドと掛け持ちだった為、仕事が忙しくなると、当然自分のバンドを優先した。
僕ももうひとつバンドを組んでみたが、長続きしなかった。

春と付き合って4年。
僕は26歳になっていた。
ただでさえ、精力的とは言えなかった僕らの自主企画は、春のバンドが解体するとより停滞して行った。
年間1∼2本のライブ。
バンドをやってる気がしなかった。
1人で新曲をレコーディングしたりもしたが、金と時間ばかりかかった。

i'm not for shure of (where to stand)
nothing's shure for is for shure
i'm waiting for the summer comes again
friday i'm in love (the cure のカヴァー)
不安の中待ち焦がれるだけの、他力本願な歌。

僕は焦っていた。
そして、苛立っていた。

その頃春は、自分の部屋に僕を招く時、寝室から浴室に至るまでキャンドルを灯し、電気を消した。
才能に恵まれながら、男に現を抜かして呆けているように思えた。
音楽の話のかわりに自分の家族の事や、ふたりの将来についてばかり話す様になり、当時パチンコ屋に勤めていて不定期だった僕の休みに合わせる為、仕事を辞め休みの融通が付けやすいアルバイトを始めた。
バンド解体以来、彼女がギターを手にしたのを見る事はなかった。
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