第3話

文字数 513文字

轟音の中にいた。
ただ、立っていた。 
マイクに背を向け、ギターからも手を離し、アンプに向かい、ただフィードバックノイズを垂れ流す。

何も出来ず、突っ立っていた。

このところ、ずっとこうだ。
まわりに付いていけない、と感じると、すべてを放棄してしまう。

いや、ただフィードバックさせてた方がマシなんじゃないか?
あの悪夢の1日は、簡単には消えなかった。

僕を拾ってくれたのは、別の国立大学のバンドだった。
スタジオの壁にはthee michelle gun elephantという無名バンドのライブ告知がいつも貼ってあった。
どうやらバンドメンバーたちのサークルの先輩らしかった。

そのバンドでは、僕はボーカルギターを任された。
だが、すぐに技術の差に苦しんだ。
バンド名も僕の思い付きが採用され、ライブでは真ん中に立ち、アイコン的な居場所を許された。

しかし、彼女と一度目の別れをした時、出ていく彼女に有り金全部渡して金に困り、スタジオ代を他のメンバーたちに立て替えてもらう様になった事を契機に、僕は姿をくらました。
心配して訪ねて来るメンバーに、居留守を使った。

自分のバンドを組まなきゃダメだ、と、僕はメンバー募集を出し、何度もオーディションを重ねた。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み