第21話

文字数 770文字

愛知県安城市。
小山市と同規模の都市だが、愛知県にあってはごく平均的な都市であろう。
そのまみの実家で僕らは両親の厄介になる事になった。
子どもたちが出て行き、両親とおばあさん3人には広すぎる家を売ろうか?という話が出ていたから、僕にとってはまみへの恩返しのつもりだった。

仕事が決まると、早速メンバー募集をした。
30代になり、年齢的な苦労は感じたが、二転三転の末、どうにかライブが出来そうな布陣が整った。
まみは参加出来ないから、週末僕1人で名古屋までリハーサルに通った。 

そんななか、長男が産まれた。
初めての育児に、ふたりともてんてこまいだったが、まみの両親の存在が有り難かった。
僕はそれまで自分の事しか考えてなかったぶん、世の中について考えるようになった。
大切な我が子が生きていく社会はどうあるべきか?
食糧・エネルギー・コミュニティー。
頭でっかちになっていた。
休みの日には長男を自転車に乗せ、あちこち連れてまわった。

しかし、それは同時に他人んちで暮らす息苦しさからの逃避でもあったと、今になっては思う。

その頃のバンドはツインギターの4人編成。
みんな年下だけど演奏力が高く、僕は今度こそ、いつも逃げ回ってきたプレイヤビリティの壁をよじ登るつもりで、ややテクニカルな曲を作る様になっていた。
a thousand reasons
the edge of oblivion
broken promises
evrybody banished
これらの複雑で忙しい曲たちは、今まで作り続けてきた延長線上にあり、なかなかうまく演奏出来なかったけど自分なりに取り組みがいのあるものだった。

いよいよ、名古屋での初ライブが決まり、その日はまみも長男をベビーカーに乗せて観に来る事になった。

バンド名は、ontournowthruforever、もう変えるつもりはなかった。

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