第2話

文字数 488文字

横浜に来てじきひと月になる。
仕事も決まり、そろそろと僕は楽器屋の貼り紙のメンバー募集にいくつか応募した。

酷く暑い日だった。
右も左も分からぬこの街の路線バスを乗り継ぎ、最寄りのバス停から永遠にも思える真っ直ぐな歩道を歩き、横浜国大の門をくぐった。

ハードケースにリッケンバッカーを忍ばせ、重たそうに抱えて現れた僕を、彼らは「ジョン!」と歓迎した。
背の高い甘いマスクのボーカルと大学生らしく爽やかなドラム。
馴染めるか不安だった。

Doors/break on through
kinks/all day all of the night
David Bowie/ziggy stardust

課題曲に不足はない。
ひと通り合わせる。
何度もミスをした。
変わる空気。
それだけだった。

帰り際、耳元で「サークルの先輩とか、上手い人たくさんいるから」
と、囁かれた。

僕はハードケースにリッケンバッカーをしまい、あまりの重さに引きずるようにして部室を出た。

焼けるような日照り。
校門を出るまでが、そしてそこからバス停までの道のりが、バスを降りて彼女の待つ部屋へ帰る最後の急坂が、どいつもこいつも酷く長かった。
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