第2話
文字数 1,058文字
次の日、朝ごはんを食べながら私はお母さんに言った。
「これから、おもちゃ屋さんへ行ってくるから」
「なんで?」
「おもちゃ屋さんのおばあちゃんの孫が転校してくるんだって、私と同じ年の。その子に昨日会ったの。おばあちゃん、早く友達をつくってあげたいんだって。」
「…孫…」
お母さんの動きが止まり、お父さんが横から言った。
「綾 の子か…」
「あっ………そう…あすみ、仲良くしてあげてね」
「…うん」
なんだか変な感じがしたけど、お母さんが仲良くしてと言うんだから、仲良くしよう。
ちょっと緊張するけど、心が軽くなってワクワクしてきた。
いつもより髪型も服もちょっと手をかけて家を出た。
おもちゃ屋さんに着くまでは足取りが軽くて早く着いたのに、いざ中へ入ろうとすると、勇気が出ない。
顔はとても綺麗だったけれど、怜奈みたいな子だったらどうしよう。
おもちゃ屋さんの前で中をチラチラ覗いていると、おばあちゃんが気づいて戸を開けてくれた。
「あすみちゃん、ほんとに来てくれたんだねえ、ありがとう!…類ー!類ー!」
呼ばれて、類が出てきた。
私と目が合い、また微笑む。
「おはよう」
初めて聞いたその声で、私は、もう類のことが好きになった。
怜奈とは違う。
この子は、顔も、心もきっと綺麗だ。
「何して遊ぼうか?」
穏やかな声で、類は言った。
私は類の瞳に映るのがまだ恥ずかしかったし、顔を直視することもなかなかできなかった。
最初の日は、おもちゃ屋のおばあちゃんの家で、類と二人でトランプをした。
その次の日も、またその次の日も、私は類に会いに行った。
類に見られると恥ずかしいけれど、二人でいるのは嫌じゃなかった。
私はどんどん、類に惹かれていくのがわかった。
類は絵を描くのも上手だった。
こんなに上手に描ける子を、私は知らない。
夢中になって、もっと描いてと言って、色々な物を描く類を私は見ていた。
「ねえ、どうしてそんなに上手く描けるの?」
「お父さんに教えてもらったから。僕のお父さんはね、絵描きなんだよ。」
類のおばあちゃんは「外に遊びに行ったら?」と言ったけれど、私は「暑いから。もう少し涼しくなってから行きます」と答えた。
類はあまり口数が多くない。
それでも私の話にはよく微笑んだ。
優しい微笑み。
私は類の声を初めて聞いた日から決めていた。
こんなふうに、人を包み込むような優しい声の類を、私の宝物にしよう。
類は、私が守る。
私だけの、宝物。
だから、なるべく誰かに類が見つからないように、私は類を隠すことにした。
もっともっと、類と仲良くなりたい。
みんなに会わせるのは、それから。
★
「これから、おもちゃ屋さんへ行ってくるから」
「なんで?」
「おもちゃ屋さんのおばあちゃんの孫が転校してくるんだって、私と同じ年の。その子に昨日会ったの。おばあちゃん、早く友達をつくってあげたいんだって。」
「…孫…」
お母さんの動きが止まり、お父さんが横から言った。
「
「あっ………そう…あすみ、仲良くしてあげてね」
「…うん」
なんだか変な感じがしたけど、お母さんが仲良くしてと言うんだから、仲良くしよう。
ちょっと緊張するけど、心が軽くなってワクワクしてきた。
いつもより髪型も服もちょっと手をかけて家を出た。
おもちゃ屋さんに着くまでは足取りが軽くて早く着いたのに、いざ中へ入ろうとすると、勇気が出ない。
顔はとても綺麗だったけれど、怜奈みたいな子だったらどうしよう。
おもちゃ屋さんの前で中をチラチラ覗いていると、おばあちゃんが気づいて戸を開けてくれた。
「あすみちゃん、ほんとに来てくれたんだねえ、ありがとう!…類ー!類ー!」
呼ばれて、類が出てきた。
私と目が合い、また微笑む。
「おはよう」
初めて聞いたその声で、私は、もう類のことが好きになった。
怜奈とは違う。
この子は、顔も、心もきっと綺麗だ。
「何して遊ぼうか?」
穏やかな声で、類は言った。
私は類の瞳に映るのがまだ恥ずかしかったし、顔を直視することもなかなかできなかった。
最初の日は、おもちゃ屋のおばあちゃんの家で、類と二人でトランプをした。
その次の日も、またその次の日も、私は類に会いに行った。
類に見られると恥ずかしいけれど、二人でいるのは嫌じゃなかった。
私はどんどん、類に惹かれていくのがわかった。
類は絵を描くのも上手だった。
こんなに上手に描ける子を、私は知らない。
夢中になって、もっと描いてと言って、色々な物を描く類を私は見ていた。
「ねえ、どうしてそんなに上手く描けるの?」
「お父さんに教えてもらったから。僕のお父さんはね、絵描きなんだよ。」
類のおばあちゃんは「外に遊びに行ったら?」と言ったけれど、私は「暑いから。もう少し涼しくなってから行きます」と答えた。
類はあまり口数が多くない。
それでも私の話にはよく微笑んだ。
優しい微笑み。
私は類の声を初めて聞いた日から決めていた。
こんなふうに、人を包み込むような優しい声の類を、私の宝物にしよう。
類は、私が守る。
私だけの、宝物。
だから、なるべく誰かに類が見つからないように、私は類を隠すことにした。
もっともっと、類と仲良くなりたい。
みんなに会わせるのは、それから。
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