第7話
文字数 1,346文字
5年生になった。
類と私は、クラスが離れた。
類は怜奈と、同じクラスだ。
類は相変わらず、行きも帰りも私と一緒だったけれど、怜奈は類を見つけると私たちの間に割り込んでくるようになった。
類は怜奈に助けてもらったことを特別、恩に感じていない様子だったけれど、怜奈はそのことがあったから、類に近づくことができるとでも思っているようだった。
二人が同じ教室へ入っていくのを見て、私は、二人の姿がお似合いだと感じた。
そんな風に思ってしまったのがすごく悔しかったけれど、類はもちろん、怜奈だって話してみなければ顔だけは綺麗なのだから、並んで歩いているのを見るとどうしてもそう感じてしまう。
邪魔者は、むしろ、私の方なんじゃないか、と。
類は私の宝物、だったのに。
類と二人の時間が減ってしまって、それだけでも寂しかったのに、その年、町の中の空気が変わり始めた。
私たちが小さい頃にできた遊園地の経営が思わしくなくなってきた。
それに伴い、お土産屋、ホテルなども徐々に撤退していき、町の風景は静まりを見せ始めた。
寂しいな、とは思っていたけれど、私の生活は特に変わらなかった。
ただ、少しずつ、観光関連で暮らしていた友達が町を出ていった。
昔に戻っただけだ、とお父さんは言ったけれど、お母さんはそうは思っていないようだった。
「あすみが大きくなる頃、この町に、あすみが就けるような仕事はあるのかしら」
そうは言ったって、お父さんは市役所で働いているのだから私もいずれはそういう仕事に就くのだろう、と漠然と思っていた。
けれど、お母さんが言ったことが現実になるのではないか、と、そのうち思うようになった。
6年生になった。
1学年3クラスあったのが、ギリギリ2クラスに減った。
そのために6年でもクラス替えがあり、私と類はまた同じクラスになった。
怜奈もいっしょだった。
類といっしょに行っていた、商店街の七夕祭りは今年から縮小されることになった。
町内会の子どものイベントも、去年までと比べると大幅に減った。
というのも、観光業だけでなく、商店街のお店も次々と閉店していったからだ。
最初は電気屋さんだった。
次はお花屋さん。
早々に他の町へ越して行ったのはわりと若い家族だった。
やり直すなら早い方がいいということだ。
この町にしがみついているのは本当に古くからあるお店で、どこももう店主がお年寄りだ。
他の町で暮らす家族の元へ身を寄せるか、あきらめずに細々と続けているようなお店ばかりだった。
類のおばあちゃんのお店もその一つだった。
夏休みに入る頃、学校へ行く道で怜奈が類に言った。
「ねえ、夏休みにさ、花畑を見に行かない?」
「花畑?」
「ひまわり畑!ここからバス1本で行けるとこがあるんだよ!」
ひまわり畑…。
いつだったか、類が言っていた。
そんな近くにあるなんて。
そこと同じかはわからないけれど、類は興味を示した。
「じゃあ、あすみも行こう!」
類がこっちを見た。
「…えっ?」
私も、怜奈も同時に口に出した。
「前に言ったよね、いつかいっしょに行こうって。」
「え?あ、う、うん」
「じゃあ、いっしょに行こうよ」
「…お母さんに聞いてみる…」
類が微笑むのを見て、単純に、嬉しかった。
類は、バカな王子様なんかじゃない。
類はまだ、私の宝物だ。
怜奈が、またこっちをにらみつけていた。
★
類と私は、クラスが離れた。
類は怜奈と、同じクラスだ。
類は相変わらず、行きも帰りも私と一緒だったけれど、怜奈は類を見つけると私たちの間に割り込んでくるようになった。
類は怜奈に助けてもらったことを特別、恩に感じていない様子だったけれど、怜奈はそのことがあったから、類に近づくことができるとでも思っているようだった。
二人が同じ教室へ入っていくのを見て、私は、二人の姿がお似合いだと感じた。
そんな風に思ってしまったのがすごく悔しかったけれど、類はもちろん、怜奈だって話してみなければ顔だけは綺麗なのだから、並んで歩いているのを見るとどうしてもそう感じてしまう。
邪魔者は、むしろ、私の方なんじゃないか、と。
類は私の宝物、だったのに。
類と二人の時間が減ってしまって、それだけでも寂しかったのに、その年、町の中の空気が変わり始めた。
私たちが小さい頃にできた遊園地の経営が思わしくなくなってきた。
それに伴い、お土産屋、ホテルなども徐々に撤退していき、町の風景は静まりを見せ始めた。
寂しいな、とは思っていたけれど、私の生活は特に変わらなかった。
ただ、少しずつ、観光関連で暮らしていた友達が町を出ていった。
昔に戻っただけだ、とお父さんは言ったけれど、お母さんはそうは思っていないようだった。
「あすみが大きくなる頃、この町に、あすみが就けるような仕事はあるのかしら」
そうは言ったって、お父さんは市役所で働いているのだから私もいずれはそういう仕事に就くのだろう、と漠然と思っていた。
けれど、お母さんが言ったことが現実になるのではないか、と、そのうち思うようになった。
6年生になった。
1学年3クラスあったのが、ギリギリ2クラスに減った。
そのために6年でもクラス替えがあり、私と類はまた同じクラスになった。
怜奈もいっしょだった。
類といっしょに行っていた、商店街の七夕祭りは今年から縮小されることになった。
町内会の子どものイベントも、去年までと比べると大幅に減った。
というのも、観光業だけでなく、商店街のお店も次々と閉店していったからだ。
最初は電気屋さんだった。
次はお花屋さん。
早々に他の町へ越して行ったのはわりと若い家族だった。
やり直すなら早い方がいいということだ。
この町にしがみついているのは本当に古くからあるお店で、どこももう店主がお年寄りだ。
他の町で暮らす家族の元へ身を寄せるか、あきらめずに細々と続けているようなお店ばかりだった。
類のおばあちゃんのお店もその一つだった。
夏休みに入る頃、学校へ行く道で怜奈が類に言った。
「ねえ、夏休みにさ、花畑を見に行かない?」
「花畑?」
「ひまわり畑!ここからバス1本で行けるとこがあるんだよ!」
ひまわり畑…。
いつだったか、類が言っていた。
そんな近くにあるなんて。
そこと同じかはわからないけれど、類は興味を示した。
「じゃあ、あすみも行こう!」
類がこっちを見た。
「…えっ?」
私も、怜奈も同時に口に出した。
「前に言ったよね、いつかいっしょに行こうって。」
「え?あ、う、うん」
「じゃあ、いっしょに行こうよ」
「…お母さんに聞いてみる…」
類が微笑むのを見て、単純に、嬉しかった。
類は、バカな王子様なんかじゃない。
類はまだ、私の宝物だ。
怜奈が、またこっちをにらみつけていた。
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