第8話
文字数 1,296文字
放課後、ランドセルを置いて類の家へ向かった。
その途中の橋の上で、怜奈が待っていた。
「あずみ、もうお母さんに聞いた?花畑の話。」
「…まだだけど。何?」
「やめてくれない?断ってよ、類に。いっしょには行けないって。」
「どうして?」
「あたしは、花をね、見に行こうって言ってるんだよ、類と。」
「…それがどうしたの?」
「あのね、ここじゃあ花なんてそこら中に咲いてて、わざわざ見に行くようなものなんかじゃないのかもしれない。だけど、ここじゃないところではわざわざ見に行く価値のあるものなのよ。」
そんなことは分かってる。
私が言いたいのは、どうして二人が花を見に行くからといって私が遠慮しなきゃいけないんだということだ。
「…だから、何が言いたいの?」
「あぁ…もう!ハッキリ言わないとわかんないかな?ジャマしないでって言ってるの、類と私のデート!」
デート…?
何言ってるんだろう。
類はそんなつもり、全くないはず。だから私のことも誘ったのに。
「類に直接言ったら?二人で行きたいって。」
「そんなことしたらあたしが嫌われるじゃない!」
「…知らないよ。」
「あんたっていつもそう!どうしてあたしのジャマばっかりするの!」
何言ってるんだろうか。
「いつ、私が怜奈のジャマしたっていうの?」
いつだって、怜奈のほしがるものを私は譲ってきたじゃないか。
「いつでもだよ!ずっと!とにかく、類とのことはジャマしないで!」
「…類は、私を誘ったんだよ?」
類は、私のものだ。
「だけど、あずみは類のこと、見捨てようとしたじゃない」
「あれは…」
「あれは何?何なのよ、言ってみなよ!あずみは類よりも自分が大事なんじゃない!類が許したって、あたしが許さない!あたしの方が、類のこと好きなんだから!」
無茶苦茶だ。
あの出来事で私と怜奈の想いの強さは測られるものだろうか。
そう思っていても、やっぱりあの時の後ろめたさはわき上がる。
決定的に違うのだ。
類を助けに向かった怜奈と、何もしなかった私では。
そう、類が許したって、許せないのは、私だって同じだった。
けれど、
『わかった。私が断るよ』
いつもの調子で、私が身を引くのを怜奈は待っている。
でも、これだけは譲れない。
類は、私の宝物だから。
あの時守れなかった分、これからは守ると決めているのだから。
「あすみ?」
橋の向こう側から類がやってきた。
「あっ、類!あのね、あずみ、ダメだって!花畑!お母さんがダメだって!」
「な…」
なんて奴なんだろう。
少しは改心したと思っていたのに、ここまでひねくれてるなんて。
「そっか…じゃあ、僕も行かない。」
「えっ!?」
「あすみが行かないなら、行く意味がないから。」
怜奈は何も言い返さず、口をあけて何かを言いたそうにしたけどやめて、早足で帰っていった。
「類…」
「僕はあすみと行きたい。怜奈じゃない。」
「…じゃあ、行こう、二人で。」
「え?お母さんは?ダメって言われたんでしょ?」
答える代わりに、涙がポロポロこぼれてきた。
類は私の宝物。
そして私も、類の宝物でありたい。
類の言葉は、私が類の宝物と言っているみたいに聞こえた。
類が私の頬をそっと手のひらで包んだ。
もう、後ろめたさは感じなかった。
★
その途中の橋の上で、怜奈が待っていた。
「あずみ、もうお母さんに聞いた?花畑の話。」
「…まだだけど。何?」
「やめてくれない?断ってよ、類に。いっしょには行けないって。」
「どうして?」
「あたしは、花をね、見に行こうって言ってるんだよ、類と。」
「…それがどうしたの?」
「あのね、ここじゃあ花なんてそこら中に咲いてて、わざわざ見に行くようなものなんかじゃないのかもしれない。だけど、ここじゃないところではわざわざ見に行く価値のあるものなのよ。」
そんなことは分かってる。
私が言いたいのは、どうして二人が花を見に行くからといって私が遠慮しなきゃいけないんだということだ。
「…だから、何が言いたいの?」
「あぁ…もう!ハッキリ言わないとわかんないかな?ジャマしないでって言ってるの、類と私のデート!」
デート…?
何言ってるんだろう。
類はそんなつもり、全くないはず。だから私のことも誘ったのに。
「類に直接言ったら?二人で行きたいって。」
「そんなことしたらあたしが嫌われるじゃない!」
「…知らないよ。」
「あんたっていつもそう!どうしてあたしのジャマばっかりするの!」
何言ってるんだろうか。
「いつ、私が怜奈のジャマしたっていうの?」
いつだって、怜奈のほしがるものを私は譲ってきたじゃないか。
「いつでもだよ!ずっと!とにかく、類とのことはジャマしないで!」
「…類は、私を誘ったんだよ?」
類は、私のものだ。
「だけど、あずみは類のこと、見捨てようとしたじゃない」
「あれは…」
「あれは何?何なのよ、言ってみなよ!あずみは類よりも自分が大事なんじゃない!類が許したって、あたしが許さない!あたしの方が、類のこと好きなんだから!」
無茶苦茶だ。
あの出来事で私と怜奈の想いの強さは測られるものだろうか。
そう思っていても、やっぱりあの時の後ろめたさはわき上がる。
決定的に違うのだ。
類を助けに向かった怜奈と、何もしなかった私では。
そう、類が許したって、許せないのは、私だって同じだった。
けれど、
『わかった。私が断るよ』
いつもの調子で、私が身を引くのを怜奈は待っている。
でも、これだけは譲れない。
類は、私の宝物だから。
あの時守れなかった分、これからは守ると決めているのだから。
「あすみ?」
橋の向こう側から類がやってきた。
「あっ、類!あのね、あずみ、ダメだって!花畑!お母さんがダメだって!」
「な…」
なんて奴なんだろう。
少しは改心したと思っていたのに、ここまでひねくれてるなんて。
「そっか…じゃあ、僕も行かない。」
「えっ!?」
「あすみが行かないなら、行く意味がないから。」
怜奈は何も言い返さず、口をあけて何かを言いたそうにしたけどやめて、早足で帰っていった。
「類…」
「僕はあすみと行きたい。怜奈じゃない。」
「…じゃあ、行こう、二人で。」
「え?お母さんは?ダメって言われたんでしょ?」
答える代わりに、涙がポロポロこぼれてきた。
類は私の宝物。
そして私も、類の宝物でありたい。
類の言葉は、私が類の宝物と言っているみたいに聞こえた。
類が私の頬をそっと手のひらで包んだ。
もう、後ろめたさは感じなかった。
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