討論型ラジオ クロエ vs 横田  その2 

文字数 10,733文字

横田
「ちょっとちょっとwwあんたらさぁww私が言ってることはこの世の真実だかんねwwアメリカとかフランスとか資本主義国はどこでも貧富の差が拡大してんじゃんw
コロナ後は株や不動産を持ってる富裕層はどんどん金持ちになりwwウ戦争後のインフレの影響で貧乏なひとり親世帯には欠食児童とかいるでしょw韓国とかねww」

横田が例に出したのはお隣の韓国である。

韓国経済は、22年度から続いたインフレの影響で国民の生活が苦しくなり、さらに半導体需要が一巡したことや(執筆時点の24年2月では半導体の在庫調整が終わりつつあり、台湾を中心に半導体部品の輸出が増えている)中国不動産バブルの問題で中国向けの輸出が低迷したことにより貿易黒字額が大幅に減少。失業者が急増した。

韓国政府の発表によると、
現在の韓国にいる欠食児童の数は27万人。
1日1食も食べられない児童がそれだけいるのだ。

韓国政府は食料配給券代わりに児童向け「配給カード」の支給を決定。
自動チャージ式のプリペイドカードで1日600円まで使用可能。
使途は食品のみ。コンビニやスーパーで使用可能。
その日に600円使って空になったら翌日には全額チャージされる。

クロエ
「そうだったのね……。韓国の子供たち、
 ご飯が食べられなくてかわいそう。
 そのカードを使っても1食分の食事にしかならないじゃない」

羽生田
「韓国はひどいものだな。国の宝であるはずの
 子供がそんな状態では夢も希望もあるまい」

橋本
「ちなみに子供が成長期に動物性たんぱく質、食物繊維、
 ビタミンなどおかずから得られる栄養がしっかりと取れないと
 平均寿命が激減します。江戸時代の日本がまさにそうでして、
 主食のご飯ばかり食べてたので平均寿命が50歳前後でした。
 医療も遅れも深刻で子供が生まれても
 多くが乳幼児の間に死んでしまうんです」

クロエ
「そうなんだ……私は今の日本しか知らないけど、
 今はこんなに発展してる日本でも昔は貧しかったんだね……」

羽生田
「そうか。君はフランス人だから昔の日本を知らないのも当然だ。
 フランスといえば明治時代は日本の100倍は発展していたからな。
 我が日本と欧州の中心、文明大国フランスとでは文字通り
 比較にもならんほどの文明の違いがあったことは俺も知っている」

クロエ
「ううん……そんなことないよ。私の国だって
 貧しくて食べられない人がたくさんいたと思う。
 それに今のフランスは日本よりGDPがはるかに下だよ」

横田
「日本にもさww子ども食堂とかあるけどww
 ひとり親世帯の子供で給食費とか払えない世帯も多いじゃないww
 住民税非課税世帯が増加してるわよねw 
 若者は結婚して子供作ってもさっさと離婚するから
 負の連鎖が止まらないわよねww」

クロエ
「あんたは……!! 
 日本人の癖に同じ国の子供たちが貧しくてご飯も
 満足に食べられないのを知ってて何とも思わないの?」

横田
「仮にそう思ったところで私に何ができんのよww
 私らって一国民に過ぎないからさぁww
 一人一人の貧困家庭の子供に何かしてあげられんのww
 そういうのは政府の仕事でしょww」

クロエ
「その政府が脱税したりして遊んでるんでしょ!!」

横田
「そうそれ!! 政府が遊んでんのよww
 なにせ前回の不祥事で(政治献金を収支報告書に未記載で脱税)
 岸田内閣の大臣が5人も同時に辞職しちゃったもんねw
 いやー日本の政治はレベル高いわぁw 
 参考までにさぁw クロエちゃんの国にこんなのある?」

クロエ
「私の知る限り、ない……。第二次大戦のナチスドイツとの
 開戦前ならそういうのもあったけど」

※1930年代のフランス政府の内閣の連続解散。
 ドイツとの国力差の大きさに絶望した政府首脳が次々に
 パニックを起こして内閣が1月ごとに解散した。

羽生田
「確かにドイツやイギリスも含めて各国の政治を比較しても
 我が国の政治の質が先進国で最低なのは間違いないな。
 辞任したブタの代わりに就任する大臣のブタどもも
 いつ不祥事を起こすかで週刊誌の記者が楽しみに待っている状態だ。
 岸田政権の内閣は、金に飢えた豚小屋にいるブタの中から
 また別の豚を探して任命してるようなものだ」

橋本
「で、横田リエはこう言いたいわけですね。
 政府が仕事をしないで税金を使いたい放題にして
 遊んでるんだから、私も貧困者を救う義務などないと」

横田
「わかってんじゃんwwチェリー橋本wwwその通りよww」

クロエ「その呼び方、次に口にしたらコロス」

横田「おー、こわいこわいw」

羽生田「いや、案外可愛らしいあだ名かもしれんな」
橋本「ちょっと芸人ぽく見えますよね俺ww」
羽生田「ラジオリスナーの受けはいいかもしれん」
橋本「じゃあ今度から俺のことはチェリー君ってことでw」
横田「あんたら、諜報の人間にしてはノリがいいわねww」
クロエ「は、橋本君……」
橋本君「クロエさん。俺は本当に気にしてないっすからw」

横田「そろそろ政治の話の続きしてもいいw?」

横田はこう言った。
資本主義は1%の勝ち組と99%の負け組を作り出す仕組みだと。
少なくとも自分たちは勝ち組である。

横田は学力が中途半端だが富裕層の家系だからお金に困ってないのは当然として、
クロエ、羽生田、橋本もいわゆる高学歴である。ボリシェビキのエリートなので進学先に困ることもない。ならば卒業後は普通に働いて金持ちになることを目指せばいい。
なぜ貧乏人のことや更生不可能な日本の政治のことを考えて無駄な時間を費やすのか。その時間は無駄である。

横田
「これってラジオ番組だから全校生徒が聴いてんのよねww
 だったらちょどいいわw 
 言いたいこと全部言わせてもらうww!!」
 実は私さぁ、今年の春に副会長の井上ちゃんと
 話す機会があったんで彼女と本音で語り合ったんだけどさww」

世の中の政治の仕組みを変えることは難しいし、この学園のボリシェビキが目指す国家転覆も実現可能性が限りなくゼロに近いことは副会長がはっきりと認めていた。

近代史において政治と経済のレベルでの共産主義化はいまだにどこの国も成功した例がなく、少なくともソ連は崩壊し、中国共産党は市場を開放して資本主義経済の下で
今日まで発展を遂げることができた。資本主義は一握りの金持ちを生み出す仕組みだが、資本家が事業を起こして労働者の雇用が生まれる。自由な競争と資本の蓄積こそが国を発展させることもまた事実。負け組の貧困者が生まれることもまた必要悪なのだ。

またマリカは自身が熱烈なボリシェビキではないことも語っていたそうだ。それは昨年の生徒会選挙から多くの学園ボリシェビキが悟っていたことではあるが。マリカが目指している究極の学内政治の目的は「生徒が自ら政治について学ぶ力」を養うこと。この学園では共産主義を是正とする教育を強制してはいるが、卒業までに何が正しいと思うかは生徒の自由意思に任せる。

彼女の選挙公約だった「クラスでの自治をするための常設委員部の設置」においても、高校生がクラスごとに小さな政治組織を作る「政治ごっこ」を通じて日頃から政治感覚を身に着けてほしかったからだ。常設部を設立する際の法律的(学則)な事柄についても中央委員部と十分に話し合ってから実行させている。入学2日目の新入生歓迎会の日に大演説をしたことで夢美派にみられる政治集団を作り出すきっかけにまでなった。

横田
「井上ちゃんってさww話してみてわかったけど、
 かなり頭良いのよねw高校生のレベルであそこまで政治や
 歴史に詳しい人はまずいないわよw 言っちゃ悪いけど、
 ここにいるあんたらなんて井上ちゃんの足元にも及ばないんだけどw」

クロエ
「私らより学力の低いあんたに言われたくないわ。
 早稲田の夜間部の偏差値って、
 私らBクラスの平均偏差値より低いじゃん」

羽生田「しかし同志井上副会長が聡明な方であることは確かだな」

橋本君「この横田からも褒められるって、あの人
やっぱり優秀すぎっすよねw それに人格者でもある。
もう総理大事になった方がいいレベルの人材。
今年の生徒会のレベル高すぎっすw」

横田
「私が言いたいのはねw あの井上ちゃんほどの
 トップエリートでも日本で共産主義革命を起こすなんて
 不可能だって言ってんのよww
 あんたらの親分がそう言ってんだよw
 これについてあんたらの意見を聞きたいわねぇw」

クロエ
「それは今は不可能だってことでしょ。そんなこと
 我々ボリシェビキはみんな知ってるよ。でもうちの
 フランスにもドイツにも強硬派の共産主義政党はあるし、
 いつか世界の資本主義が行き着いた末に人口の過半数を占める
 貧困層が結託して共産主義が復活してもおかしくない。
 この世界には金持ちより貧困者の数が圧倒的に多いのよ。
 そんな未来まで完全に否定できないでしょ」

横田
「はいでたーw 共産主義者の天丼ネタw世界同時革命論ねw
 でもそれ無理だからww絶対とはさすがに言わないけどさぁw
 90年代の冷戦終結でソ連率いる共産主義陣営はすでに敗北ww
 人類は資本主義以上の優れた経済システムを確立できませんでしたw
 富の均等な分配? 計画生産? 集団農場? んなことできねーよw
 あんたらは共産主義について考える時間が無駄ですw はい論破ww」

橋本君
「そーすかw 横田さんの主張は分かりましたよw 
 そこまで資本主義が好きならどうぞお好きに金儲けをしてください。
 俺からも質問があるんすけど、先生が教員としての
 自覚がなく授業放棄を繰り返してるようですが、生徒に対する
 思いやりがないところは資本主義者であることと関連性がありますか?」

横田
「あーその件ねwはいはいwどうせ聞かれると思ったからすでに
 模範解答を考えてあるわよw あんたらボリシェビキって授業の
 自由参加が規則で認めれてるっしょ? うちのクラスも無駄に
 エリートばかりだから授業に出ない奴が多いしさw
 だったら私も時間の無駄をするよりお金儲けをした方が
 いいかなって思って学校でFXとかやってんのよww」

羽生田
「それは授業放棄する理由になってない。
 貴様は教員として働いているので給料が発生している。
 その対価として英語の授業を行うことは教員として
 最低限の義務だ。その義務から逃れる理由が
 なぜなのかを橋本は問うているのだ」

横田
「いや別に私があれこれ授業なんてやらなくてもさぁw
 勝手に自主学習してくれってみんなには言ってんのよ?
 羽生田君とチェリー君は理系だからうちらの授業を知らないかw
 でもあのビッチどもがさぁw きちんと授業を進めてくれないと
 テストの範囲もわからないし、他の学校の高校生との差がつくと
 怖いのでしっかりと授業を進めてほしいってうるさいのよw」

橋本
「横田さん……w さっきからわざと話をそらしてるような気がw
 そうじゃなくて英語の授業放棄をする本当の理由は、
 ぶっちゃけ、めんどくさいからですか?」

横田
「別に話をそらしてないし、私の主張は変わらないわよw
 ボリシェビキのガキどもは今この瞬間も図書館や自宅で
 自主学習してるでしょ。うちは学習塾を使わない生徒が多いからね。
 あんたらは基本的に学習能力が高いんだから勝手に自分で勉強しろw」

クロエ
「話の論点が完全にずれてる。
 羽生田君も言ってたけど、橋本君の質問内容は、授業放棄をするのは
 あんたが資本主義者だとしても不自然だということでしょ。
 資本主義者だって普段はまじめに働いて賃金を得ているはず。
 社会人としての義務を果たさない理由をなぜ語らないの?
 今はラジオ収録中だから語りたくない理由でもあるの?」

横田
「そうねw ぶっちゃけw ここの学生たちに授業をすること自体が
 気にならないのが本音かなw 実は教員で私と同じこと考えてる
 奴ってそれなりにいるらしいわよw この学園ってソ連じゃんw?
 私らもノルマ製で働いてるじゃん? 仕事のやる気でないのよww」

横田は語った。
主に中央委員のボリシェビキは生徒の立場でありながら教員を指図する権利があり、学園の管理、運営、監督も彼らが行っており、この学園において教師とは存在する価値が限りなく低く、一般生徒はともかく精鋭の学生ボリシェビキに対して学力面での劣等感を感じている教員は、校長以外にもたくさんいる。

最近の若者はスマホでSNSばかりやって学力が落ちていると世間で言われるが、
足利の学園はその真逆であり、高校生の年齢ですでに政治法律経済の専門的知識を
持つものが多く、すでに大学生レベルの勉強をしてる生徒も普通にいる。

横田は3年Aクラスの担任であり、副会長のマリカや中央部次席のエリカも自分のクラスの教え子に入る。他にも中央や諜報に属する生徒が何人かいる。横田の態度に呆れて英語の時間は図書館に避難してしまう男子もいるくらいだ。

「んでさーww 私ら教員も共産主義の指導されてるんじゃんww
 なんか洗脳ぽっくて笑えるレベルだけどさww
 ああいうのされると余計に金融市場で金儲けしたくなるのよねw
 ここだけの話だけどね、私ってFXの他にも原油先物にも手を出してんのw
 他にもコロナ渦はパラジウムやプラチナも取引してたわよww」

羽生田
「貴金属先物のトレードか。貴様は実に投機が好きだな。
 一般的な女性はどちらかというと株のデイトレを好むものだが」

横田
「デイトレもやったことあるわよww
 でも株じゃ刺激が足らなくてつまんなくてさw
 つーかメガネ君も資産運用課なら金儲けしてるじゃんw
 あんたらも本音では金儲けしたいって思ってんでしょ?」

羽生田
「その謝った認識は、我々に対するとんでもない侮辱だぞ。
 まず我々は投機などしない。諜報部に割り当てられたわずかな
 資産を守りながら確実に増やすために万全の態勢を敷いて運用している」

説明すると本が書けてしまうので小説では省略するが、
https://jp.reuters.com/article/idUSKBN2WL0HY/
この記事にあるような資産運用を羽生田らは行っている。
(日本生命の資産運用部の投資戦略についての記事)

債券運用の基礎(世界最大の債券運用ファンドを持つピムコ)
https://japan.pimco.com/ja-jp/marketintelligence/bond-basics/what-role-do-bonds-play-in-a-portfolio

要約すると
・株の売却益ではなく国債のクーポン(利息)をメインの収益に考える。
・毎年のリターンは少ないが資産の減少リスクを最小限に抑える。
・有事に資金を引き出せるように資産額の変動を調整しておく。

横田
「はぁwwwなにこれww 先進国の国債や社債ばかり買い付けてw
 しかも為替ヘッジを適度につけたりして資産額を守るww
 今って日本と外国の間で2年債利回りの差額が大きいから
 米ドルのヘッジコスト高くないw? ユーロとか豪ドルもそうよねww
 全体的に株式を全然持ってないじゃんwwこんなの運用しても退屈よw」

羽生田
「だから資産を守るために運用していると言っただろうが。
 我々は日本の生保大手を参考にして運用計画を立てている」

横田
「ねえねえ。あんたらの資産額っていくらw?」

羽生田
「そんなに大した額ではないが、
 東証の昨日の終値の時価で9億円ほどだ」

横田「はぁwwwwww!?」
クロエ「うそ……そんなに持ってるの……?」

羽生田
「これでも減った方だぞ。コロナ前の低金利時代は11億ほどあった。
 しかし22年からFRBの急速な利上げや米国の不動産担保証券の
 価値が下がり続けたので一部を売りに出して調整している。
 それでも過去30年の運用で年平均5%程度の運用益利回りは
 出しているがな」

横田「ちょいまちww今5パーが平均って言ったわねw
今の時価が9億で5パーってことは、税金を考えなければ
年間4,500万くらいの運用収益があるってことにならないww?」

羽生田
「収益は年によっても変わるが、おおむねその認識で良いだろう」

横田「良いだろうじゃねえよw 
てめえらガキの癖に金稼ぎすぎて資本主義者全開じゃねえかよww
あんたのこと今日から鬼畜メガネって呼ぶかんねww」

羽生田
「誤解のないように言っておくが、我々資産運用課は伝統的に
 利益の9割を自治体やNPO法人などに寄付している」

クロエ「寄付してるの!? すごいね!!」
横田「はぁぁぁぁぁ!? それマジで言ってんの!?
赤の他人に金あげちゃうなんてもったいねえwww」

橋本「今はラジオ放送なんで資産運用課が寄付している団体の名前まではさすがに
公表できませんが、おおざっぱに言うと貧困撲滅のための食糧支援のNPO法人、
商工会議所、環境保護団体、観光協会、孤児院、老人ホームなどの施設になります」

クロエ「すごい……資産運用課の人たち、本当に立派だよ」

羽生田「むしろ横田はなぜ我々を資本主義者と呼んだのか。
大変な侮辱であり今すぐ撤回してもらいたい。我々誇りと
名誉ある諜報委員部は、たとえ多額の資金を管理していても
それを私欲で使うことはない。仮に私欲に走る人間が
いたら内部で直ちに摘発して収容所行きだ」

橋本「歴代の先輩方で金を横領する人もいるにはいたんですけどねw
うちら、スパイ課と警察課がいるんでwすぐに逮捕されて
基本は銃殺刑っすねwwちなみに重罪なんで拷問もセットっすww」

羽生田「学園の財産を横領する人間など生きている価値はない。
銃殺でも甘いくらいだぞ」

クロエ「そうだったのね。私も中央の人間だから資産運用課が
学園の予算を稼ぐために頑張ってることは何となく知ってたけど、
高校生なのにそんなすごい金額を扱ってることまでは知らなかったよ」

横田「ちょっと待ってww私気になったんだけどw
あんたら9割が寄付って言ったわよね?
だったら残りの1割に該当する450万はどうしてんのよww?」

羽生田「実際は利益に課税されるので税引後では
そんなには残らん。せいぜい200万程度だ。
残りは我が部の管理費用に使う。
と言っても消耗品の購入や茶菓子などの買い付けだ。
大した金額ではないので残りは再投資に回してさらに資産を増やす」

橋本「具体的には俺らが毎年使ってるのは10万程度っすw
主に部のみんなで茶を楽しむためのお菓子を買うのに
力を入れてる感じっすね。スーパーや薬局の特売を狙って買ってます。
あとポイ活もしてるしクーポン券も使って節約してますよw」

横田
「金持ちの癖にwwクーポン券ですってww
 金があるのに心は貧乏人アピールかww
 ボリシェビキの奴らの考えることが理解できないんだけどw」

羽生田
「そうか。では俺が自民党の連中のように
 200万を横領し、自由に使うと仮定してみよう。
 ……ふむ。特に買いたいものなどないな。
 俺は学生で親に扶養されている身だ。別に生活費に
 困ってないし、たとえ金を横領したとしても
 全額を貯金して終わりになる可能性が高い」

横田
「横領したのに貯金wwそれって仮定になってませんしww
 日本語も少しおかしくありませんかぁwwwあひぁひゃっww!!」

クロエ
「今の羽生田君の話のどこがおかしいのか知りたいわ。
 私だって200万のお金があるとしたらまずは貯金を考えるよ。
 そりゃ若いんだし欲しいものもたくさんあるけどさ、
 まずは万が一の時に備えて貯めていおかないと」

横田「絶対嘘よwwクロエちゃんみたいに派手好きな女は
ブランド物のお洋服やバッグとか買い漁るに決まってるww」

クロエ「だから欲しいものはあるけど、200万もの大金を
一度に使う方法が思いつかないって言ってんの!!
さすがに1円も使わないってことはないよ。 
私は親の仕送りで生活しながらユーチューブチャンネルの
運営をしてるし、どうしても化粧品や機材にお金かかるのよ」

横田「人なんて金を握らせれば性格変わっちゃうのよww
あんたらみたいな学生諸君ではわからないでしょうけどねw
クロエちゃんって美人だけどビッチっぽい見た目してるわよねww
大人になったら男にお金貢がせたりするんでしょうねwww」

橋本「おいてめえ。それ以上クロエさんをバカにするとぶっ殺すぞ」

一同「……???」

橋本「あ、いえ。なんでもないっすw」

横田「いやいやwwなんでもないわけないっしょww
今あんた、私に暴言吐いたわねww
ラジオ番組中なのに、ぶっ殺すとか言ってたわよねwww」

橋本「すみませんwつい本音がw 
ただの独り言ってことにしてくださいw」

羽生田「なるほど。ただの独り言か」
クロエ「独り言なら仕方ないわね」

横田「独り言で済ますんじゃないわよwww
チェリーwあんた何が言いたいのw 
あんたって実はクロエちゃんのファンだっりするのw?」

橋本「はい。そうですけど」

横田「あらそうwwそこは認めるのね」

橋本「俺は自分が1年生の時からクロエさんのことが好きでした」
クロエ「え……?」
横田「おーっとwwまさかの告白たーいむ!?」

羽生田「そんなに驚くほどのことでもないと思うがな。うちの部で隠れクロエファンは以前から多かった。今年から中央部との軋轢も解消されたので堂々とクロエファンを名乗る人が増えてきている。うちの橋本もたまたまその中の一人だっただけの話だろう。ちなみに俺もたまにではあるがクロエさんのチャンネルを見ているぞ。英語の勉強をするためにな」

クロエ「英語の勉強をするために?」

羽生田
「そうか。本人の君は知らないよな。うちの部では英語が苦手な人が多いのでクロエさんのお菓子紹介動画を視聴する人が多いんだ。クロエさんは日本のお菓子を買ってきて食べた感想を全世界向けに動画で紹介するわけだが、動画中で話す言語は基本的に英語だ。多少はフランス語のなまりがあるようだが、俺の耳にはほとんどわからん。声が高くてゆっくり話してくれるのでわかりやすいという印象しかない」

クロエ「へえ~。私の動画で英語の勉強をしてくれる人もいるんだ!!」

橋本
「うちの女子でクロエさんの化粧動画を楽しみにしてる人も多いですよねw
 ほら外国語課の人らは普通に英語がわかっちゃうから。
 クロエさんの発音はすごく上手で英国人とほとんど変わらないって評判ですよ」

クロエ「えへへ。なんか照れるなぁ。私は英語は7歳の時か
英国の放送を聞いて勉強してたからそれなりに自信はあるよ」

橋本「クロエさんってすごい人材ですよね。日本語と韓国語を
含めた7か国語が話せて、しかも日本語は読み書きまでこなせるレベル。
うちの外国課の人でもここまで優秀な人はいないっすよ」

羽生田「中央委員の長い歴史においても、外国人の方で中央部が勤まった例は今までにないそうだ。普通の日本人でも複雑な法律などの専門用語を覚えないといけないのに、
それをフランス人の女子がやっているのだ。逆のことを俺にやれと言われても
絶対に不可能だろう。クロエさんは頭の出来が我々とは違うのだ」

クロエ「そんなことないってw 前にも言ったけど橋本君はプログラミングが
得意でこのラジオのアプリまで作ってくれてるし、羽生田君は資産運用課の
責任者なわけですごい専門知識を持ってるよ。私とは分野が違うってことだよw」

羽生田「いやいや、そちらこそ……」
クロエ「だから、そんなことないって……」

そんな感じで中央と諜報の筆頭の三年生同士で遠慮合戦を繰り広げていると
横田が面白くないので口をはさんでくる。

横田
「おーいガキどもwwあんたらのお世辞の言い合いはくだらないから
 その辺にしましょうねw これラジオだからさww
 番組的にはさっきのチェリーの告白を取り上げるべきでしょが!!」

クロエ「あ……」

橋本「すみません。クロエさん。俺なんかがクロエさんのこと
好きなんて気持ち悪いですよね。さっきの発言は撤回します」

クロエ「え……何が? 全然そんなことないよ!!
むしろうれしかったと言うか……はっ……!?」

羽生田「まさかな。この反応は……」
横田「脈ありww」

クロエ「しまったwwこれラジオなんだったww」
横田「クロエさ~~んw? あんた年下好きだったの?」
クロエ「年下だからってわけじゃないよw
私はそう簡単に男の人を好きになるわけじゃないしww」

羽生田「しかし脈があったとは驚きだ。ここだけの話なのだがな、橋本の奴、このラジオの開催が決まった時、クロエさんがDJをやることを知ってから自分が裏方をぜひやりたいと申し出てな。同志副会長閣下に認めれたのだ。あの時の喜びようは小学生の男子のようだったぞw」

クロエ「そ、そうなの……?」

橋本「はい。全部事実です。
羽生田先輩に改めて言われると恥ずかしいっすけどねw」

クロエ「へえ……そんなに私のことを……」

横田「おーっとwwかぽー成立すんのこれwww?
中央と諜報で付き合うなんて学園始まって以来の大恋愛!?」

羽生田「別に彼氏彼女の関係を目指す必要もなかろう。
クロエさんはアイドルなので恋人を作るのが難しい立場なこともある。
クロエさん。君が嫌でないのなら、これからもうちの橋本と
仲良くしてあげてほしい。もちろん友達ということで構わん」

クロエ「それはもう。こちらこそお願いしますって感じだよ!!
橋本君は細かいことにも気が利くし、すごく優しい子で気に入ってるよ」

羽生田「ふ……それはよかった。ありがとうな。クロエさん」

そう言い、羽生田はにっこりと微笑む。
普段の強面とのギャップが激しい。

横田「鬼畜メガネって笑うとそれなりにイケメンなのねww」
羽生田「別に自分の顔の作りなど興味はない」
横田「わたしさぁ、あんたの顔、結構好みなのよねw」
羽生田「そうか」
横田「そうかってww他に何かリアクションはないのww」

羽生田「貴様が男を口説くときは金目当てと相場が決まっている
横田は人を好きになったことはあるのか?」

横田「それは私の過去のコイバナが聴きたいってこと?
いいけど話すと5時間くらいかかるけどいいww?」

羽生田はめんどそうなので無視したのだが、クロエの方を
見るととんでもないことが起きていた。クロエと橋本が
互いにじっと見つめあったまま微動だにしないのだ。
二人とも夏とは関係なく顔が赤くて顔がにやけている。

(ほう。これは……)

羽生田は、彼が1年生の時からいろいろと世話をしてあげた可愛い後輩のために
席を外すことにした。ラジオ収録は適当な決まり文句をつけて終わりということにし、横田と一緒に気を使って廊下に出る。廊下にいる警備の保安委員部の人にも帰るように指示を出した。それから誰もいなくなった放送室で、クロエと橋本君が何を語り合っていたのかは誰も知らない。
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