7月26日。オープンスクール直前。公開ラジオ収録

文字数 15,087文字

この学園では伝統行事としてオープンスクール(高校見学会)が
毎年7月の末に開催される。表向きは平和な学園を装いつつも
一部の幹部候補生にだけは各委員部の仕事内容の詳細を説明するというもの。

この見学会において本来の規則では禁忌とされる
生徒の親(父兄)が学園を訪れることができる。
父兄に対して共産主義勢力の育成機関であることを巧妙に隠蔽する
必要があるため学園側は細心の注意を払う必要があるが。

「各委員部が大変に優秀なため予定より早く準備が終わってしまったな」

マリカがスケジュール表に赤い丸を付けながら言う。
今年は例年と違って諜報広報と中央が大の仲良しになったために
本来なら大仕事のはずの学園見学会(オープンスクール)が
準備期間残り2日を残して終わっていまい、あとは開催を待つのみとなった。

「諜報広報部が精力的に動いてくれたのが大きいわね。
 あの子たちは前回の入学式の準備の時もそうだったけど、
 指示通り完璧に動いてくれるから優秀すぎて怖いくらいよ」

サヤカがカラー印刷されたパンフレットの束を見ながら茶を飲む。
現在会長の執務室にてマリカとサヤカがお茶の時間をしているのだ。

「副会長。私から提案があるんだけど、中央や諜報と
 いっそう親睦を深めるためにも前夜祭でもやろうかしらね」

「実は私も同じことを考えていた。
 何か良い案はないかと思って諜報広報の委員たちと相談していたのだが、
 この際、コントはどうかなと思ってな。大講堂でコントを披露するのだ」

「ぶほっ……お茶吹いちゃったじゃない。
 コントってお笑いのことよね!?
 ボリシェビキに笑いのセンスがある人なんているの?」

「サヤカ。あなただよ」

「はい?」

「あなたとモチオがやるのだ」


そして時は過ぎ。学園開放会、前夜祭(親睦会とも呼ぶ)の当日。

総勢200名が収容できる学園の大講堂(映像、音響設備など完備)
に、全ボリシェビキのメンバーが集められた。といっても日本語の会話が
理解できない保安部の委員の一部は参加を拒否した。
それはマリカにとって事前に予測済みなので一般生徒からも参加を募集したところ、
一般生徒だけで50名も参加者がいたので講堂はほぼ満員となった。

この50名は現在は一般生徒だが、生徒会の活動に興味のある1年生
なので将来のボリシェビキ候補だ。彼らは過激派に属する雨宮派ではなく、
純粋に共産主義の思想に興味があり資本主義に疑問を持つ勉強熱心な生徒だった。
サヤカのファンクラブの女子生徒も含まれている。

マリカがマイクをもって壇上に立つ。

「名誉あるボリシェビキ諸君。今日は私の企画した催しに参加してくれてありがとう。
 諸君らも知っての通り、今日は親睦会の名目で前夜祭を開くことにした。
 日中はこの講堂で公開ラジオ収録を披露し、
 夕方以降は食堂でパーティを開催する予定である。
 堅苦しい挨拶をするつもりはないので さっそくラジオ収録を始めよう」

マリカが去った後、壇上には2名の男女がやって来て用意された椅子に座る。
生徒会長の近藤サヤカ、中央委員部代表の山本モチオである。
ふたりが恋人同士であることは周知されているが、なにゆえこの二名なのか。
しかもラジオとは。

サヤカが困惑を隠しきれずにマイクを握る。

「みなさ~ん。こんにちは。暑い中学校に来てもらってありがとうございます。
 温度は大丈夫でしょうか。暑い人はいませんか? 
 暑かったらもう少しエアコンを下げましょうか。たぶんラジオ収録が
 長引くと思うので途中で水分はしっかりとってくださいね。
 途中でトイレに行きたい人は自由に行ってくださって結構ですよ」

「サヤカ緊張しすぎだろ。声が震えてるぞ」

「そりゃ震えるわよ。私ラジオ収録なんて初めてだもん」

「俺も初めてだ。つーかなんでラジオなんだ?
 ラジオ放送は諜報の人らの仕事なんじゃねえのか」

「副会長にやれって言われたのよ」

「なんでだよ」

「私もわかんないよわ。本人に訊きなさい」

「おーい。マリカさん。ん……? 前置きが長い。早く進めろ?」

「副会長は裏方からプラカードでこっちに指示を出してるのね。
 なになに……? こちらの指示内容をいちいち口にしなくていい?
 観客の方を向け? はいはい。怒られちゃったわね」

クスクス……と聴衆が笑い始める。

「おいサヤカ。笑われてんぞw」
「たぶんあんたが笑われてんのよw」
「それより早くしろよw。渡された台本を読むんだってよw」

「わーってるってw えっと……これは学園ボリシェビキの特別企画の
 ラジオ番組として収録されるものですが、のちにアプリのストリーミング
 配信で一般生徒も聴けるようになります……? やばいわねこれ。
 下手なことしゃべったら一生笑いものにされるじゃない」

「サヤカが下手なことしゃべったら会長首になるんじゃねえのかww?」

「こわっ。私もう帰りたくなってきたわw」

「お前がヘマしたとしても俺がフォローしてやるから安心しろよ!!
 俺の命にかけてもお前を守ってやるぜ!!」

「さすがモチオww かっこいいw 言うことだけはイケメンじゃないw」

「おおっと俺様は顔立ちも超イケメンだからよろしくなww」

「ちょwwwあんたの顔のどこがイケメンなのよwww」

「ああwww? うちの学園始まって以来の美男子だろうがwww」

「自意識高いwwしかも根拠がないwww」

「根拠ならあるぞwww
 この前なwww友達の太盛と一緒に廊下を歩いていたら
 すれ違った下級生の女子が足を止めて俺の背中をじっと見てたwww
 これってまじやばくね? 俺のイケメンオーラに下級生が振り向いてんだぜ」

「アホかww女子はあんたじゃなくて太盛君を見てたに決まってるでしょww」

「そんなバナナwww女子が熱い視線を送ってたのは俺様じゃねえのかよwww」

「そもそもあんたが太盛君と同じレベルの美形だと思ってるところが
 最高に笑えるわww鏡見なさいよwwモチオが学校でなんて 
 あだ名で呼ばれてるか知ってんのwww?」

「菅総理大臣の長男のあれだろwwwよーく知ってるよww
 あの長男、ハリウッドスター並みのワイルドなイケメンだったじゃねえかww
 例の写真を見た瞬間に惚れそうになったぜwww」

↓参考画像のURL
https://note.com/matsui_hideyuki/n/n01ed89d7f80c

「あのくそ野郎がハリウッドスターってwwwどこがよwww
 文春に掲載された例の写真ww黒線で目隠しをしてても
 全身から漂うチャラ男オーラが隠しきれてないって評判だったじゃないww」

「今時の男は堅苦しい銀行員みたいな感じよりチャい方が良くねえかwww
 これからの日本ではあんな感じのファッションが主流になるからww
 わりとまじでww」

「主流にwwwなるわけないでしょwww
 日本中にあんなのがあふれたらこの国終わるわwww」

「おまえよぉwwさっきから公衆の面前で俺様の容姿をディスりすぎだろww
 俺の彼女なんだから少しは遠慮しろよww傷つくだろうがwww」

「ごめんごめんwww愛してるわよモチオww」

「誠意がみじんも感じられねえなwww」

観客の一角から、手を叩いて爆笑してる人たちがいる。
今回は招待性のため部ごとに座席が決まっているのでそちらは諜報部だった。
諜報部は広報も含めて60名を超える大所帯だが、
男子も女子も関係なく大きな声で笑っている。

「サカカwwまた笑われてんぞww」
「あんたが笑われてんのよwwww」
「やべえww副会長がこっちをにらんでるww
 序盤から話が脱線しすぎだ。いい加減にしろだとさwwww」

「説教される前に早く進めましょうwww」
「そうだなwwいい加減にしろって言われたんで、良い加減にしようぜwww」
「ちなみにその言葉の本当の用法は適当にしろって意味らしいわよw」
「会長の豆知識、あざーっすwww」

サヤカが台本に目を通す。ホチキスで止めた20ページくらいの
冊子になっていた。最初のページはあいさつ文。
次からが本題のようなのでページをめくる。
ラジオの定番の読者からのお便りコーナーの進行表が書かれている。

サヤカがメガネのずれを指で直しながら読みあげる。
春以降は美容室に通ってなかったので長い前髪がうっとおしそうだ。

「ねえ、これってラジオネームから読み上げるのよね?」

「まずは読者の名前、投稿内容を読んでいく。
 それに対して感想を言いつつ質問に答えていくんだよ」

「さすがモチオ。詳しいわね」

「そうかぁ? こんなの誰でも知ってんじゃねえの」

「私普段からラジオなんて聴かないもん」

「まあ今時の学生ならラジオ聴かない奴がいてもおかしくないかもな」

「モチオは何のラジオを聴いてるの?」

「俺か? 俺はもっぱら声優ラジオだな。
 音泉って名前のネット配信サイトがあるんだが」

「おんせん? なによそれ。温泉でラジオが聞けるの?」

「温泉じゃねえよ!! おんせん、って名前のラジオ専用アプリなんだよ」

「う、うるさいわね。ちょっと勘違いしちゃったのよ」

「サヤカww天然すぎだろwww今の話の流れで
 どうやったら温泉でラジオを聴くって発想に至るんだよww」

「くっ……今の日本ならそういう設備があってもおかしくないわww」

「んなもん、ねーよwww」

また生徒たちから笑いが巻き起こる。今度は保安部や中央部の人も笑っていた。

「また笑われてんな。サヤカがな」
「今回は認めるわ」
「おまえ、もうしゃべんない方がいいんじゃねーか?」
「しゃべらないでどうやってラジオ番組を回すのよ」

「なんだったら俺一人で進行してもいいんだぜ?」
「ぜったい遠慮するわ。今から挽回すればいいだけでしょ。私は前向きなのよ」
「さすが会長だなww名前だけはなww」
「うっさいwwそれより副会長がにらんでるwww」
「地味にこえーなおいww副会長様はラジオ番組の監督だなwww」

壇上のど真ん中にいるサヤカとモチオの前に用意されている小さな箱がある。
その中には、読者からのお便り(手紙)が入っている。
箱の中に手を突っ込み、無作為に取った手紙の内容を読み上げるのだ。

「えーっと、なになに。
 らじおねーむ【今すぐ中央委員になりたいです】さんからのお便りです」

「ちょっと待てやwwwおまえのラジオネイムの発音なんだがwww
 だいぶ日本人英語すぎやしねえかww」

「はぁ~~~www!! 意味不明なんだけどww 
 私の英語の発音はネイティブに引けを取らないはずww」

「そう思うならあとでこの収録の録音を聴き直してみなさいww」

「はいはいwwどうせ私は英語は苦手ですよww
 それよりこの人の投稿名に衝撃を受けたわww」

「いますぐ中央委員になりたいってマジすかwww
 むしろ全力でオナシャーッスwwって感じだよなwww」

「なりたい、じゃなくて早くなってくださいよwww
 特別枠で推薦したいほど殊勝な生徒キタコレwww
 この手紙書いた人ってこの会場にいるのかなww」

「いるんじゃねーのww
 これってボリシェビキになりたい生徒が書いた手紙なんだろww」

「あww今副会長がうなづいたww
 この投稿者さん、この会場にいるらしいわよwww」

「マジかよwwいったい誰なんだww」

「らじおねいむ、今すぐ中央委員になりたいさん、
 いるなら手を挙げてくれますか~~~www!!」

「サヤカの英語の発音で腹筋がwww」

「私の英語ネタはもういいわよwww」

すでに会場中で笑いと拍手が起きておりコント会場そのものだ。
生徒会長に指名されたのだから普通は緊張するところだが、
この会場の雰囲気ではそんなこともなく、
まもなくして会場の中にいる女子の一人が手を挙げた。

「私は……で……から……にて……」
「すまんwww席が遠すぎて声が聞こえねえwww」
「今マイク渡すからちょっと待っててねwww」

サヤカが係の人に指示してその子にマイクを渡してあげた。

「会長の近藤サヤカ様。中央部代表の山本モチオ様。
 初めまして。私は1年生の原口ほのかと申します。
 今日はこうして発言の機会を与えていただけたことを感謝申し上げます」

「年下の女子に様付で呼ばれちまったいwww」
「まだあの子しゃべってるでしょうがww黙りなさいww」

「せっかくの機会ですのでお手紙に書いた内容をそのまま読み上げます。
 私は春に中央部の入部試験を受けたのですが、残念ながら
 不合格になってしまいました。生徒会長のサヤカ先輩は1年生の時から
 中央部に所属するのみならず、普段の勉強においても
 学年トップクラスの学力を維持してきたと伺っています。
 そこで今日はサヤカ先輩の勉強方法を教えていただけますか。
 お願いします」

サヤカは少し考えてから…

「努力……かしらね」
「答えになってねえぞ」
「努力以外になにがあるってのよ」
「あの子はお前の日頃の勉強方法が知りたいんじゃねえの?」

「勉強方法って言われてもね……。
 学校で使う教科書の予習と復習以外に何かすることあるの?」

「効率よく点を取る方法とかねーのか?」
「私はテスト範囲は幅広く網羅するタイプ。ひたすら時間をかけて丸暗記ね」
「サヤカらしい地味だが確実な戦略だな」
「私はヤマカン張るの嫌いだもの」
「おまえは賭け事とか大嫌いだもんな」
「うん。そこは父親譲り」

「それよりさっきの投稿で気になったことがあるんだが」
「また私をバカにするんじゃないでしょうね」
「サヤカの学力が学年トップクラスって言ってたけどマジなん?」
「んー、そうね。学力はそんなに悪い方じゃないと思うわよ」

「会長の今はともかく、2年生だった去年までは何位だったんだ?
 学年で100番くらいか?」

「なんで100番なのよ!! そんなに下じゃないわよ!!」
「冗談っすwwwそんなに低かったら会長になれないもんなww」
「ったくww そうねぇ。最高で学年2位かな。あとは3位が多かった」
「最高で学年で2位!? まじかよスゲー!!」
「そんなにすごい?」
「すごすぎだろ!! おまえって頭良かったんだなwww」

「でも井上さんには一度も勝ったことないのよ」
「なるほどwwそれでサヤカはマリカさんに学力コンプがあったのかww」
「私なんて井上副会長に比べたらただの馬鹿よ」
「そりゃいくらなんでも自己評価低すぎだwww。
 うちは国立大に進学する人がゴロゴロいる高校だぞ。おまえも十分頭良いよww」

すると、会場の聴衆から声が上がる
「どうして彼氏のモチオさんが彼女の学力を知らなかったんですか~」と
男子の声だ。方向は、諜報部だった。笑顔でこちらに手を振っている。

「イキのいい同志よwwさっそく質問に答えるぜww
 俺の彼女さ、虚栄心がなさ過ぎて自分の功績を一切口にしない
 変わった癖があるんだよwwテストで満点を取ったとしても
 当たり前にしか思ってないもんなww学年2位の話も本当に今知ったんだw
 あとこいつ、孤児院へのボランティア活動で市に表彰されてるらしいぞww」

「恥ずかしいからやめてwwそんなのいちいち自慢することでもないでしょww」

「俺が学年2位だったら態度でくなる自信あるwww」

「すでに態度でかすぎの癖にwwww」

「サーセンwwww」

今度はファンクラブの2年生から「サヤカ先輩、謙虚で素敵~♡」と歓声が上がる。

「サヤカの数少ない支持者が手を振ってくれてんぞww
 お前も手を振り返してやらねえとなww」

「まるで私の支持者がサヤカファンクラブしかいないみたいな
 言い方してんじゃないわよww地味にむかつくわねwww」

「すまんww言いすぎたww怒るなよwww」

「怒ってないわよwwさっさと次の投稿に行くわよwww」

今度はモチオが、大量のメールがつまった箱に手を入れる。

「おっし。次は俺が手紙を読み上げるぜ。
 ラジオネーム……なんだこれ。英語か?
 Tomoharu aida これって……」

「組織部のトモハル君じゃないwww」

「名前をローマ字にしただけの本名じゃねえかwww
 ラジオネームになってねえよwww」

「身近な人からの投稿だと笑えるわねww で、内容はww?」

「なになに……えー……僕は組織委員部に所属しており、
 日頃校内を駆け回る伝令の仕事を代表のナツキ殿に任されています。
 毎日が充実している僕ですが、実は悩みがあります。
 他部署のボリシェビキの仲間が、僕の所属部署をよく間違えるのです。
 中央の人からは諜報委員だと言われ、逆に諜報からは中央委員と言われます。
 そのたびに間違いを訂正しているのですが、なかなか僕が組織部である
 ことを認識してもらえません。どうしたらいいですか?」

会場の一角にいるトモハルが壇上へ手を振っている。
サヤカも笑顔で手を振り返している。

「……これって悩みと言えるのか?」
「本人がそう言ってるんだからそうなんでしょ」
「めんどくせーな……」
「ちゃんと考えなさいよ」
「でもこれってさ、もう解決してねえか」
「今モチオが手紙の内容を読み上げちゃったからね。
 これでトモハル君の正しい所属先が全ボリシェビキに周知されました」

「そういうわけで終わりにするか」
「そうね」

あっさり終ってしまったので失笑が漏れる。
トモハルは顔を真っ赤にして恥ずかしがっていた。

サヤカ会長がノリノリで箱に手を入れる。

「らじおね~む、中央委員のデュピィさんからのお便りです。
 って、これクロエじゃない!!」

「デュピィって呼ぶと新鮮だなwwデュピィおまえ俺と同じ部だろうがww
 それに去年まではサヤカと一緒に働いてたくせに、
 なんでわざわざ手紙なんて書くんだよwww」

クロエは自分から席を立ち、みんなの注目を浴びていた。
係の人にお願いしてマイクを持ってきてもらおう。

「こんにちは、ボリシェビキのみんな~~☆
 私があの有名な中央委員部のクロエさんでーすwww
 今日も暑い日が続いて大変だけど、みんな元気かな~~~♡」

花が咲くような笑顔でみんなに手を振るクロエ。
会場中の所属の違う男子たちから歓声が上がる。
クロエは女子のファンも大勢いるので超絶な人気だった。

「あそこにいる女wwなんか目立ってんぞwww」
「ラジオDJの私たちより目立ってるのは気のせいかしらww」

「たぶん気のせいでーすww」

「そうかいwwクロエちゃんよwwさっそくおめーの投稿内容を教えてくれやww」

「うんwwwこれは私じゃなくて学内の女子の間で
 噂になってることなんですけれどwww」

「おうwwジャニーズ系の俺に関する恋の噂だろww」
「んなわけないっしょwwwモッチー、マジウけるwwww」
「今こいつ自分がジャニーズ系とか言ってたわねwww腹が痛いwww」

モチオ
「おめーら笑いすぎだからwww
 わかんねえだろ? 学園中を探せば俺への秘めた恋心を
 抱く初心な女子がいるかもしれねえじゃねえかwww」

「そうだよねwwwモッチーはいつかジャニーズ事務所に
 スカウトされるために東京の大学に行くんだもんねww」

「なにそれwwwこのバカwwそんなこと言ってたのww」

「うんwwなんかうちにはクロエみたいなネットアイドルもいるから
 俺も負けてらんねえとか対抗意識を燃やしててww
 サヤカは今年から会長だから知らないよねwww」

「モチwwオwwwあんたwwwジャニーズに入りたかったのww
 チャラ男の癖に芸能界をなめんじゃないわよwww」

「う、うるせーwww俺にだって夢を見る権利はあるだろww」

「笑いすぎて腹筋がやばいww会場のみんなも笑いすぎて
 おかしくなってるわよww ほらあそこ見て。
 あそこの端の席で笑い転げてるの、諜報の宮下さんじゃないのwww」

「おーい。宮下ちゃんwww転んでスカートが捲れちまって
 パンツ見えてるぞwwって聞いてねえやwww」

「ねえねえ。それよりふたりともwww
 さっきから観客の女子に文句言われてるよwww
 今はジャニーズじゃなくてスマイルアップに社名変更www
 所属事務所はスタートアップに変わったんだよwww」

「あ、そうだったわねwww社名変更のことは
 ニュースで聞いてたのに忘れてたわww」

「クロエは芸能関係は詳しいなww
 ジャニーズじゃなくてファック・アップだな。しっかり覚えたぜ!!」

クロエ「ちょっと待ってwwwFuck up って何wwww」
モチオ「男同士でケツ穴の処女をささげあってる集団だからFuck upでいいだろww」
サヤカ「ケツ穴の処女ってwww鉄の処女の言い間違えじゃなくてwww」
クロエ「ちゃんとスマイルアップって言わないとファンの子たちに怒られるよww」
サヤカ「この男は初めから女子からの支持率ゼロ%だから問題ないわねwww」
モチオ「サヤカwwてめえwww言いすぎだwww」

クロエ「とろでモチオ君www事務所名のスタートアップはちゃんと覚えたwww?」
モチオ「スマイリィ・アナル・ファッカーズであってるかwww」
クロエ「微笑みアナル掘り集団wwww一単語もあってなくて笑うwwww」

サヤカ「ちゃんと覚えなさいよバカたれwwスタートアップよwww」
モチオ「スタート トゥ ファック マイアスwww!!」
サヤカ「どういう意味よそれwwwwww」
クロエ「今の英語はwww【さあ俺のケツを犯そうぜ】って意味だよwwww」
サヤカ「ちょっとwwwwwwこれ公開収録www」
モチオ「そうだったwwwこのラジオ録音されてるの忘れてたwwww」
クロエ「ふたりともww今日で生徒会首になるの決定wwww」

諜報部では、あの堅物の高木までお腹を押さえて大笑いしていた。
諜報の男子からは「中央部のギャグセンスすげえww」とか
「プロの芸人越えてるだろこれww」「俺ら明日から中央に転属するわ!!」
との声が。おとなしい子が揃う広報部から拍手まで起きている。

クロエが涙をハンカチで拭きながら、
「あー笑ったwwwねえねえww真面目な話、旧ジャニーズを
 ディスった件をフォローしないとやばいんじゃないww?
 ボリシェビキ女子で男性アイドル好きな子、結構多いんだよwww」

サヤカ
「だそうよwwチャラ男ww中央委員を首になる前に
 今ここで謝罪しておきなさいよwww」

モチオ
「おい俺の呼び方www」

サヤカ
「この会場にいるジャニーズファンの皆さんww
 僕なんかが生まれてきてすいませんって言うのよww」

モチオ
「ちょい待てやwww社名がスマイルアップに変わったなら
 ジャニーズファンとかジャニオタって言い方はしねーと思うんだがww」

サヤカ「じゃあスマオタ? でもそれじゃSMAPのファンみたいねw」

モチオ
「どうせ信仰の対象が華麗なるケツ掘り野郎どもなんだww
 ケツオタでいいだろwwwもしくは穴掘りファンクラブだwwww」

サヤカ
「ちょwwwケツオタってwwwwくそワロタwwww
 あと華麗なるケツ掘り野郎どもってひどすぎるwww」

モチオ「ヘイ ナイス ガイズ ノウ……ゲイズww
 ショウミー アップ ユア ファッキン アスホールww haa??
 ヨウノウマイファッキンネイム? マイネイムイズ ジャニーキタザワ!!」

サヤカ
「あんたの英語、いつ聞いても完璧な米国英語の発音よねwww
 その辺にいるクソみたいな米国人の若者と変わらないじゃないwww
 何言ってるのかわからないけどwww」

クロエ
「穴掘りファンクラブで腹筋が痛いww
 それじゃアイドル好きじゃなくてBL好きの女子を指す言葉になってるwwww
 私もBL好きだけどwww」

モチオ「おまえwwwwBL好きだったのかwww」

クロエ「そうだよwwww」

モチオ「あっさり認めてんじゃねーwww」

サヤカ「クロエwwwこれ公開録音だからwww
そういうことは黙っておいたほうがいいわよwww」

クロエ「ところで、さっきのモッチーの英語の訳をさせてよwww」
サヤカ「なんて言ってたのwww」
クロエ「へいイかしたあんちゃんwwじゃなかったホモどもwww
てめえらの汚ねえケツの穴を見せやがれwwww
俺のクソみたいな名前を教えてやろうww俺はジャニーキタザワだ!!」

サヤカ「モwwwチwwwwオwwwww」
モチオ「俺の英語力の高さに全ボリシェビキがひれ伏すぜwww」
クロエ「私でもこんな汚い英語すぐには思いつかないよww天才だwww」

会場が爆笑の渦に包まれる中、しびれを切らした井上マリカ
副会長がずけずけと壇上に登場し、マイクを握る。

「あーあー、同志諸君。話が脱線しすぎてこのままでは予定通りに
 番組が進まないので副会長の私が代わりに司会をする。
 3年生の黒江さん。早く自分の書いた手紙の投稿内容を読み上げなさい。
 壇上に上がることを特別に許可するのでこちらに来なさい」

クロエは席を移動する最中もみんなに大注目を浴び、歩きながら話を続ける。

「はーい♡ 私の投稿内容は、ずばりサヤカに関する恋愛の噂です☆
 今女子の間でホットな話題になってるのは、サヤカ会長が
 ずばりショタコンなのではないかという疑惑で~~す!!」

会場がにわかにざわつく。
さっきまでの爆笑の雰囲気とは違い少し緊張感を帯びている。
当のサヤカは茫然としてマイクを持っていた。

「……??」
「いや。お前だよお前。お前にショタコン疑惑がかけられてんだよ」
「ショタコン……?」
「あん?」
「ショタコンって何?」
「……それはギャグで言ってるのか?」

「だからショタコンの意味が分からないのよ。前に井上さんにも
 そんなこと言われたことあるけどスルーしたわ。スマホゲームの名前?」

「……おいおい。サヤカは今すぐにでも会長辞任した方がいいかもな」
「なんでよ!!」
「いやマジな話な、今時の女子高生がなんでショタコンの意味を知らねえんだよ。
 おまえさっきラジオアプリの音泉も温泉と勘違いしてたよな。
 アニメのことも全然知らねえしよ。お前の生まれ故郷はアマゾンの奥地なのか?」

「ぐぬぬっ……私は生まれも育ちも足利市よ。それより早く意味を教えなさいよ」
「今すぐ自分のスマホで調べてみろ」
「どれどれ」
「……わかったか?」
「うん」

サヤカは息を大きく吸った。

「私は小学生の男の子に手を出したことなんてないわ!!」

「あたり前だよ馬鹿!! 手を出してたら即首だ!!
 そうじゃなくて学内のことだってクロエが言ってたろ!!」

「学内?」
「そうだ。思い当たるふしはないのかよ」
「うちの高校に小学生はいないわよ?」
「小学生から離れろよ!! そうじゃなくて学内の男だよ!!」

「太盛君……?」
「なんで太盛の名前が真っ先に思い浮かぶんだ……?」
「なんとなく言ってみただけで他意はないわ!!」
「うそつけ。お前陰では太盛のことかっこいいと思ってんだろうが」

「そりゃあんたと比べたら太盛君は2枚目だしハンサムだからねww
 彼の顔見てたら目の保養になるわwww」

「こいつ、また俺の顔のことをwww太盛はエリカの彼氏だってこと
 知ってて言ってんのかwwあとでエリカに怒らても知らねーぞww」

「ごめんごめんwwwもうめんどくさいからクロエに直接訊きますよ!!」

クロエも爆笑しながら
「サヤカたちwwまた話が脱線しすぎでワロリエンヌww
 副会長が怒ってるみたいだからそろそろ自重したほうがいいよwww
 ショタといったらブライアン君のことに決まってるでしょ!!」

「……? ブライアン君は15歳で高校生よ?」
「おまえは本物の馬鹿なのかwww!! あいつはお前より年下だろ!!」
「え? だってショタコンの定義って小学生に手を出す女性なんじゃないの?」

「その謎の小学生縛りはいつまで続くんだwww3年の女子が1年生を
 恋愛対象としてみることもショタの定義に入るってことだろうがwww」

「そうなのかしら。最近の若者の言葉は難しいのね」
「最近の若者wwwおまえも若者じゃねーんですかいwww」
「つまり、私がブライアン君のことを恋愛対象としてみてると?」
「そういうことだよwwここまで来るのが長かったww」

「ないないwwそんなの、あるわけないでしょwww
 何でそんなバカみたいなうわさが流れてるのよクロエwww」

「ブライアン君がねww会長のことをサヤカって呼び捨てにしてるし
 敬語も使わないところとかww怪しいってさwww」

「彼は誰に対しても敬語使わないでしょうがww
 私以外の生徒会役員のことも平気で呼び捨てにしてるわよwwww」

「彼と仕事してるときに、可愛いなって思ったことありませんかwww」

「そりゃ年下の子だから全くないとは言わないわよww
 ブリテン島出身の人だから顔立ちもきれいだしねwww」

「ぶっちゃけモチオ君とどっちが好きですかwww」

「なにこれ誘導尋問wwww? 
 私、急に具合悪くなったから保健室行っていいですかwww」

「ダメでーすwww
 なおこれは事前に女子にアンケートを取ったうえで
 一番人気のあった質問ですww」

「つまり女子の総意と言っても過言ではないわねwww」

「そうだよwwwあと私も個人的に気になってるwww」

「おい待たんかいwwwおまえらwwww
 こいつの彼氏の俺が今ここにいるのに
 とんでもねえ質問してんじゃねえぞwwww」

「モッチー、今いいとこだから黙っていなさいねwww
 もし邪魔するならマイクの電源切ってあげようかwww」

「クロエきさまwwwおいサヤカww
 早く絶世のイケメンの俺のことだけを愛してると宣言しろwwww」

「あんたが絶世のイケメンだったらどんだけ幸せだったことかww
 ぶっちゃけブライアンのことは可愛い弟みたいに思ってるわよwww
 でもそれ以上の感情はないわね。仕事仲間だしww
 私は彼氏のモチオがいるから他の男に目移りすることはないわ」

「へ~~~wwwそうなんだwwww質問に答えてくれてありがとねサヤカww」
「よかったぜwww彼が実は私の浮気相手ですとか言われなくてwww」
「その方が私は面白かったんだけどねww」
「クロエww俺をどんだけいじったら気が済むんだお前はwww」
「だって面白いんだもんww」
「お前のユーチューブチャンネルの登録解除すっぞwww」
「それはやめてwww」

観客が、またざわついた。
何事かとサヤカらもそちらに注目する。なんと中央委員幹部の筆頭、
代表自席の橘エリカが挙手していた。係の人がマイクを渡す。

「マイク渡してくれてありがとう。さて。みなさん。ごきげんよう。
 中央委員の橘エリカです。私はお手紙は投稿してませんが、
 今ここで気になったことがあるのでサヤカ会長に
 聞いてみようと思っておりますわ!!」

モチ「サヤカwwwたぶん怒られるぞwww」
サヤ「なんでよww」
クロ「さっきサヤカが太盛君がどうのこうの言ってたからじゃないのwww」
モチ「てゆーか手紙投稿してない人からも質問って受け付けるのかよww」
サヤ「自由ねこのラジオww」
クロ「エリカが話し始めたからふたりとも静かにwww」

「まず最初に言っておきたいのですが、サヤカ会長が先ほど
 私の太盛さまのことをハンサムだと言ってくれたことは
 誇らしく思うのでそのことで怒ってはいません」

「命拾いしたなサヤカwww」
「うっさいww」
「だから黙ってよ二人ともwww」

「実は前から思っていたのですが、サヤカって意外と面食い?
 男子のことを顔で選んでいる傾向にあるような気がします。
 例のブライアン君も見ての通りの美男子です。
 私の旦那である太盛さまを目の保養にしているとも言ってましたね。
 彼氏のモチオ君がイケメンというワードにこだわる理由も、
 そのあたりからきてるのではないかと思いまして」

モチオ
「そうそうwww俺が言いたいのは、まさにそれなんだよww
 こいつがすく顔の話ばっかりするから俺は傷ついてんだよww
 エリカさすがだなwwwそれと、どうでもいいが、
 さりげなく太盛を私の旦那とか言ってるなww
 組織部の許可もなく彼氏から昇格させてんじゃねえwww」

クロエ
「エリカの口調、真面目過ぎてまるで審議してるみたいじゃないww
 あとサヤカが面食いなんて今更すぎる話題だと思うけどwww」

サヤカ
「この質問wwどう答えたとしても私の支持率下がりそうで怖いんですけどww
 なんて答えたらいいのよwww」

モチオ
「私は男好きのショタコンですって言えば支持率マックスだwww」

サヤカ
「支持者の過半数を直ちに失いそうな模範解答をありがとうwww」

マリカ
「いいから早く質問に答えろ馬鹿ども!!」

モチオ
「うはwwww副会長に怒られたwwwアくしろよ会長www」

サヤカ
「じゃあ真面目に答えるわよwww
 ぶっちゃけ6年近く同じ男と付き合ってんのよww
 よその男がうらやましく思うのも無理ない話でしょうがwww」

モチオ
「おまえやっぱり太盛のこと好きなんじゃねーかww
 ちっくしょwwまじ腹立つしプライドが傷つくわwww結局男は顔かよww」

サヤカ
「あれは去年の秋、文化祭の準備中だったわね。
 彼を一目見た時から、うわっ、エリカの彼氏イケメン過ぎて
 うらやましい。エリカ死ねって思ったわww」

モチオ「エリカに死ねって思ったのかよwww最低だなお前www」

サヤカ「悪かったわね。ただの女の嫉妬よww
でもそれ以上にうらやましいと思ったことが他にもあんのよww」

モチオ「まだあるのかww聞くたくもないが言ってみろwww」

サヤカ「太盛君の性格の良さよwww」

モチオ「なにぃww顔だけでなく性格までwww
サヤカに俺の性格まで否定されたらもう別れるしかなくなるぞ……」

サヤカ
「いいから最後まで聞きなさいよバカwww
 エリカがよく私に自慢してくることがあってね、けっこう腹立つことがあんのよww
 太盛君はね、エリカの誕生日とか記念日のたびにプレゼントをくれたり、
 エリカがおしゃれした時に可愛いねって言ってくれたりするのよ!!」

モチオ「可愛いねwwだとwwwそれって何か特別なことなのかwww」

クロエ「当たり前じゃんwwモッチーは女心に鈍感すぎるよwww」

モチオ「そうなのかよww学年一の美人のクロエが言うと説得力あるなwww」

サヤカ「ほらそれよwwクロエのことはすぐ褒めるじゃないwww」

モチオ「美人って言ったことかww? クロエは誰がどう見ても美女だろうがww
3年になってさらに美しさに磨きがかかってすげえと思うぞww
いつかハリウッドからスカウトが来るのはこいつのことだよwww」

クロエ「私を褒めてどうすんだよ、バカモッチーww!! 
 サヤカが言いたいことをちっとも理解してないじゃんww」

モチオ「え……? サーセンww俺何か間違えたこと言ったんすかwww」

クロエ
「うんっww今日っていうか、今までにたぶん1000回くらい間違てるww」

モチオ「1000回ってマジかよww多すぎだろwww
 俺、バカすぎるから死んだ方がいいレベルじゃねえかwww」

クロエ「うんwww君、死んだ方がいいよwww」

モチオ「お前今日は容赦ねえなwwwwつまりどういうことだってばよwww?」

サヤカ
「なら直接言ってあげるww 私はあんたの彼女なんだから、
 もっと女の子らしく扱いなさいよ!!」

モチオ「……???」

クロエ「この顔wwwぜったい伝わってないよww」
サヤカ「あんたのマヌケ面。皆に見られてるわよwww」
モチオ「っせえwww好きでこんな顔してるわけじゃねえからなwww」

マリカ
「この状態じゃ収録が終わるのに夜までかかりそうなので私が結論を言おう。
 山本モチオ君。サヤカは君に容姿を褒めてもらったりしたいわけだよ」

モチオ
「……?? 可愛いって言えばいいんすか?」

マリカ
「わざとらしく伝えても逆効果だ。堀君がやってるようにさりげなく褒めるのだ。
 それとサヤカが椅子に座る前に椅子を後ろに引いてあげたり、道路を
 歩くときは君が車道側を歩いたりとな。女性らしく扱うとはそういうことだ」

モチオ「ホストみたいなことを俺にやれってことすかwww」

マリカ「そうだ。自分の愛する女性なら愛情をこめて接してやれ」

クロエ
「モッチーって他の女子のことは綺麗だとか言ってすぐ褒めるじゃん。
 エリカが入部した時も美人の令嬢が来たとか言って喜んでいたのに
 サヤカには全然そんなこと言わないんだもん」

モチオ
「いやだってサヤカとはすでに付き合ってるんだぜww
 今更こいつに可愛いとか言う必要あんのかww
 いちいち言わなくても伝わってるんじゃねえのかと」

マリカ「伝わるわけないだろう」

クロエ
「モッチー、女の子には口にしないと伝わらないことってあるんだよ」

モチオ
「ってことは、俺は知らず知らずのうちに彼女のサヤカを傷つけていた?」

マリカ
「そういうことだ。サヤカが堀君などイケメンの男子につい目が
 いってしまうのも、彼らの容姿だけじゃなく女性への気配り
 ができる優しい男性への憧れが原因なのだろう」

モチオ「まじすか。男は顔だけじゃなかったのか……」

モチオは「あー、俺は何してたんだろうな……」と頭を抱えた後、
黙って座っているサヤカの元へ。

「サヤカ。なんつーかさ、今までお前を不安にさせちまってすまなかった。
 俺、今回は自分の鈍感さをまじめに自己批判させてもらうわ。
 俺は今までも、そしてこれからもサヤカのことが好きだからよ」

「モチオ……」

「俺はサヤカだけを愛すると誓うからよ、 
 これからも俺とずっと一緒にいてほしい」

「モチオ……。ありがとう。私も愛しているわ」

抱き合う男女。サヤカとモチオ。感動のフィナーレ。
クロエが拍手をすると、それに続いて会場中から大拍手が。
こうして3時間にも及んだ公開ラジオ収録は終わるのだった。
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