ミウのマンションにて。ミウと夢美が眠るまで話をした

文字数 2,415文字

嵐(カコの怒声)が去った後の23時過ぎ。
ミウは自分の部屋に夢美用の布団を床に敷いてあげた。
ミウのベッドの隣で夢美が寝る形になる。

パジャマ姿の先輩後輩は明かりを消してそれぞれの寝床に横になった。
しかし夢美は眠気などなくミウと話したがる。

「ミウさまはいつもこの時間に寝るのですか?」
「いつもはもっと早いよ。夜の10時には寝てる」
「高校生にしてはずいぶん早いですね」
「私は体力がないからたくさん寝ないと駄目なタイプなんだ」
「朝は何時に起きるのですか?」
「6時前かな」
「早いですね」
「目覚ましかけなくても自然と目が覚めちゃうんだよね。
 朝はママがご飯を作ってれるまで近所を散歩したり本を読んだりしてる」

「さすがミウさま。優雅な朝の時間の過ごし方ですわ」
「私はイングランド育ちだから普通の日本人より朝方なのかもしれないね。
 朝ごはんもしっかり食べるようにママに躾けられてるんだ」

「そうなのですか。それでは夢美が修学旅行生のようにだらだらと
 話を続けてしまったらミウさまに迷惑をかけてしまいますね」

「今日は好きなだけ話していいよ。私も全然眠くないし」
「先ほどのご両親の言い争いのせいですか」
「言い争いって言えるのかな。ママが一方的にヒスってただけでしょ」
「ミウさまのお母様、夕食時とは別人のように思えましたわ」
「人間なんて家では誰でもあんなもんだよ。人には見せられない本性を持ってる」

「ミウさまのお父様は、かっこよくて素敵な人でしたね。
 お話のし方も洗練されていて、仕事のできる男の人って感じでしたわ」

「パパに会ったことのある子はみんなそう言うんだよね。
 あの人は私が小さい頃にいろいろとやらかしてくれたから
 自慢の父親とは言えないんだよね」

「浮気ですか」

「くわしいことは……ごめん。誰にも言いたくない。
 このことは太盛君にも話してないの。ただ、小さい頃からパパっ子だった
 私が、父の愛情が一番欲しかった時期にあの人は家族のことを
 ないがしろにして私とママをたくさん傷付けたの。
 だから私はパパのこと嫌いだった」

「でも今は心から嫌ってはいないんでしょう?」

「パパが私のことを愛してくれてるのはよくわかるからね。
 私も来月の誕生で18歳になるから親の子に対する
 愛情ってのはすごく感じるようになった。
 栃木で一番学費の高い学園に通わせてくれるのもパパのおかげだよ」

「少しだけ、あの人に似てませんか」

「なにが。もしかして太盛君がうちのパパに似てるって言いたいの?」

「すごい。よくわかりましたね」

「愛情が深くて過去の罪を懺悔すること、他にもいろいろあるけど、
 根っこの部分でパパと太盛君は似てると思うよ」

「ミウさまはお父様のこと、好きですか?」

「うん。好きだよ。愛してる」

「それでしたらお父様をオープンスクールにお呼びしてはいかがですか。
 大好きな太盛様をお父様にお見せするチャンスでもありますよ」

「夢美ちゃんは私の古傷をいい感じに削ってくれるね。
 私のパパは私の学校関係の行事に一切顔を出したことがないの。
 私が小さい頃からずっとそうだったから、パパが私の学校を
 見に来るなんてなんて想像もできないな」

「ごめんなさい。私はそんなつもりでは……」

「悪気がないのはわかってるからいいよ。私が自分で勝手に
 傷ついてるだけ。でも……そうだね。今年で最後の学園生活に
 なるだけだし、一度くらいはパパを招待してもいいかな」

「お父様のお仕事の都合は大丈夫でしょうか」

「なんか三日くらいはこっちにいるって言ってたね。
 オープンスクールの日程が27日だったと思うから少し先になっちゃうけど、
 私がどうしてもって頼めば会社を休んできてくれると思う」

「それでしたら……ぜひ」

「うん。ありがとう。明日パパにメールを送ってみるよ。 
 きっと喜んでくれると思う。
 私の高校のこともずっと気になってるみたいだったから」

「よかったですね。ミウさま」

「はは。なんか今日はおかしな日だね。本当は私があなたの
 生活指導をするために自宅に招待したのに、
 私の家庭のことをあなたに相談したみたいになってて、
 私ったら年上の威厳が全然ないね」

「そんなことありませんわ。
 ミウさまは、いつだって誰よりも素敵です。
 夢美はミウさまのことを心から尊敬しておりますわ」

「だからそういうのいいって。私を褒める言葉はもう聞き飽きたよ。
 私は夢美ちゃんのお父さんの話も聞いてみたいなぁ」

「……」

「夢美ちゃん? 寝ちゃったの?」

「いいえ。私は……私の父の話よりもミウさまをもっと近くで感じたい……」

「ちょ、ちょっと何してるの!!」

「ミウさま……夢美はもう我慢できないんです」

「あなた……!! 前からそんな感じはしてたけど、
 私をそういう目で見てたの!!」

「夢美は、ミウさまと一つになりたいのです」

「ちょwwやめてよwwくすぐったいww
 私の体に触らないで!! 私のベッドに上がってこないでよ!!」

「あーん♡ 困ったミウさまのお顔も美しくて夢美の頭が溶けてしまいそう」

「ぎゃー!! 誰か助けてぇ。夢美に犯されるぅ!!」

「はぁはぁ……ミウさま♡」

「くっ……こいつ、すごい力だ。1年生のくせに。
 こうなったら、仕方ない!!」

「ぐほっ!!」

ミウは、2年生の時にアナスタシアから教わった護身術を披露した。
相手の腕を向かって逆方向に捻り上げ、空いた手で相手のお腹を殴るのだ。

まさか本気で抵抗されると思ってなかった夢美はミウの腹パンを
まともに受けてしまい、気を失った。ミウは自分でも気づいていないが
女子にしてはかなり腕力がある方だ。見た目は細身だが、
格闘技の経験のある父親譲りの体つきなのだ。

「まさか同じ女に犯されそうになるとは思わなかった……。
 夢美ちゃんの生活指導係は今日限りで降ろさせてもらおう」

ミウは念のため夢美の両手を手錠で縛ってから寝ることにした。
この手錠は、本来は規則違反なのだが諜報部から拝借したものだ。
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