第1話 前日譚

文字数 936文字

前日譚っていい響きですね。
なんかでかいことをやった人の、それまでの生い立ちや計画、積み重ねた努力みたいな大層なものを誇らしげに、そしてドラマティックに伝えるって感じで…

まぁ、ただ単に僕が前日譚という言葉を使ってみたかっただけなので、実際は日記本編に入る前の流れを振り返るだけの内容です。

2021年の夏頃、ローカルテレビ局の子会社で僕は働いていました。
ローカルながらテレビ番組を作るディレクターってやつで、取材や台本書き、映像の編集とかする仕事をしぶとく10年ほどやっていました。

普段は地域の取材ばっかりなんですが、ある日上司(ハゲ)に呼び出されてこんなことを聞かれました。

「お前パスポート持ってる?」

「え?」

「漁船に乗って欲しかとさ。」

「あー…」

一瞬で色々理解しました。
過去にも漁船の密着ロケとして、漁師に同行して取材するという仕事を他のディレクターがやっていたからです。

そうかー。
次は俺の出番かー。
独り身だし、こういう話ふり易いんだろーなー。
とか思いつつ行き先と日数を聞いてみると…

「遠洋巻き網の漁船で1カ月くらい。場所はミクロネシアとかやったかな。」

「みくろ…、ってか海外ですか。だからパスポートなんすね。」

「そうそう、行けん?」

まさかの海外。もともと歴史的にも海外との交流が多い地域だったので、地方局とはいえたまーに海外での取材を行うときがあります。
でもまさか自身初の海外取材が漁船に乗ってとはね。

「カメラマンは誰っすか?」

「Tだよ。Tもお前が乗るならって。」

船に乗るのはディレクターとカメラマンの2人。
Tは俺と同世代のカメラマンで、入社した時期も近いからかよく一緒に仕事する相棒的な存在(あっちがどう思ってるかは知らないですが。)。
まぁお互い気を使うことをあんまりないってところは楽なんだろう。

「まぁ、乗れって言われれば乗ります。」

「そうか。じゃあ乗れ。」

「わかりました。」

こうして俺の初めての海外出張が決まったわけです。
そっからパスポート取ったり、漁船の会社と打ち合わせしたりいろいろ準備しているうちに、出航の日を迎えました。

赤道直下の漁船で過ごした日々を、当時書いた日記で振り返っていきます。

できるだけ毎日更新しますので、暇つぶしに読んでいただけると幸いです。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み