第3話 2021年11 月 14 日(日)乗船 2 日目

文字数 1,022文字

船で一夜を過ごすというのは人生初めての体験でした。

何事においても初体験というのはドキドキワクワクするものですが、大概期待は裏切られるものです。
初めてのキャビアはめちゃくちゃ美味いわけでもないし、初めての北海道の時計台もあまり感動しないし、初めてのセック s(以下略)

寝るスペースですが、カプセルホテルのような(といっても行ったことはないですが)狭めの寝床で、Tが上、Hが下という二段ベットです。

一応脚は伸ばして眠ることができます。寝返りも問題ありません。
ただ常に船のエンジン音がゴーっといっています。

Tはそれが気になりすぎて眠れなかったそうですが、Hは割と良く眠れました。
「どこでも寝られる」というのは大切なんですね。

ただ船員さん曰く、船を降りた際にエンジン音がしないと静かすぎて逆に眠れなくなるんだとか。
慣れってすごいですね。

そんなこんなで 2 日目を迎えました。
ついに長い航海へと出発の日です。
昨日は船内にまばらだった船員も全員集合です。
出港だよ!船員集合!って感じです。だっふんだ

出港の朝はみんなで食料の積み込み作業です。
港には軽トラックに載った米や肉、果物などなど航海中に船員が食べる食料がたくさん集まって来ました。米だけで約 500 キログラム。

私の父に換算すると6人分くらいの量です。

さておき、そんな大量の食材をみんなでバケツリレーのように運び、巨大な冷温保管庫に詰め込んでいきます。

取り仕切るのは船の司厨長、コックさんです。
この船の最年長でもある凄腕のコックさんだそうで、船員さんからの評判もすこぶる高いんです。

船員さんにとって食事はとても大切な時間です。
普段なかなか変わらない景色の中で、毎日のご飯は実に変化に富んでいて、1 番楽しみな時間だと答える人も多いです。
コックさんはその日の状況や船員さんの希望に合うように献立を考えるそうです、これからの食事が私も楽しみです。

食料の積み込みも終わり、9 時 45 分。
甲板に船員が集まり乾杯をします。
いよいよ出港です。
タラップが外され、大きな汽笛が響きます。

慌ただしく働く船員さんとゆっくり動き出す船。
陸からは社船を管理する人たち、枕崎市の人たち、昨晩船員が楽しんだ飲み屋のママたちが手を振ります。
漁港がある町のママたちはここまでがお仕事なのです。

ゆっくりと船が町を離れていきます。
見送るFさんもだんだん小さくなっていきます。

漁場に着くまではおよそ 1 週間。
ただ海が広がっています。
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