第4話 消えた祠

文字数 1,394文字

 退院後、斎藤嵐は、行きつけのスナック蛇夢(じゃむ)で、風間平和と飲んでいた。

 「あら、嵐ちゃん、平和ちゃん、いらっしゃい。嵐ちゃん、大変だったわね。もう、大丈夫なの?」

 出かけてたママが帰ってきた。

 「ほんとだよ。酷い目にあったよ。達也ママのお見舞い嬉しかったよ。ありがとね。」

 「あーら、嬉しいこと言ってくれるじゃない?こんなのが行って、迷惑じゃなかったかしら。」

 「看護師さんたち、オネエの本物見た!って騒いでたけど、退屈だったから、ちょうど良かった。」

 「なら、良かった。これ、退院祝いね。急に来るっていうから、こんなもので、ごめんね。」

 「わぁ、花は好きだから、嬉しいいよ、ママ。ありがとう。」

 「ねえ、嵐ちゃん、なんか嫌なもの、貰ってきた?」

 「えっ、ママ、どういう事?」

 「なんか憑いてるわよ。」

 「うそだあー。もしかして病院から?」

 「入院中は、たくさんいるから紛れてて分からなかったけど。でも病院のって、独特の匂いというか、なんか違うのよ。だから、そういう匂いは感じないわね。その前からのじゃないかな?災難起こったばっかりなのにね。気をつけた方がいいわよ。」

 「ママ、もしかしたら…あの祠かもしれない。」

 「祠がどうしたのよ?」

 「旅先でね、古びた祠みかけて、変な事お願いしちゃって。平凡な人生ってつまらな過ぎるから刺激が欲しいって、お願いしちゃった。そしたら、その帰り道から色々とついてない事ばかり起きて。それが、だんだんエスカレートして骨折。命があっただけでも、運が良かったのかな。」

 「あらま、それかもよ。憑いてるのは、女性ね。うーん、でもなんか、動物的な。」

 「動物って、キツネか狸?」

 「ちょっと違うかな。なんかこう、生々しい感じ」

 「なんだよ、それ、気持ち悪いな。そんなの全く感じなかったよ。それで、元に戻してって言おうと思って、その祠を探したんだけど、どこにも無かったんだ。それに、おかしいんだ、一緒に参拝したはずのこいつも、そんなの知らないっていうし、ネットで調べても、何にも出てこなくて。」

 「そうだよ、そんなとこ行ってないじゃん。嵐、本当に大丈夫か?」

 「じゃ、あの時、自分はいったいどこにいたんだ。」

 「何度も言うけど、普通に大きな神社に参拝をして、お土産屋さんとか、ずっと一緒にいただろ。祠なんて無かったし。」

 「土産屋は覚えているよ、そのあと、山道に逸れてく道に入ったら、道沿いに古びた祠があって、平和がこういう小さい祠の方が神秘的でいいって言ったんだろ。」

 「だから、そんな事言ってないし、山道にも行ってない。」

 「あら、あら、もう、喧嘩しないの。そういえばね、あなたと同じ事言ってた子がいたわね。ちょっと変わった女の子なんだけど、祠にある事をお願いして、また行こうとしたら、その祠がもう無かったって。あの子も色々あるからね。何かお願いでもしたのかしらね。」

 「ほんと?やっぱり自分は間違ってないよ。だって、祠を検索してたら、お悩みサイトで、祠を知りませんかって質問してた人がいた。同じ経験してる人もいたんだよ。もしかして、達也ママが言ってるその子かも。」

 「そうねえ、その子に今度聞いといてあげる。」

 「ママ、お願いします!」
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

斎藤嵐 

平凡な人生に、物足りず、ある祠のに、何か起きてほしいとお願いをしたところ、災難続きとなる。

無くなっていた祠を追って行くうちに、迷い込んだ過去で、様々人々と出会い、今の自分を知る。

櫻井 彩乃

不幸な人生を送り、人を恨みながら生きている。

ある祠に参拝をしたあと、その祠が無くなった。斎藤嵐とともに、過去に迷い込んでしまう。

見たことのある風景。記憶とは違う真実を知る。

達也ママ

スマック「蛇夢(じゃむ)」のママ。

嵐と彩乃を繋げた良き理解者。

守護霊や、霊が見える。

風間 平和(へいわ)

斎藤嵐の友人。

野崎 雅登 事件記者


5年前の爆発事故で、娘を失い、最近の爆発事故をの関連を追う。

櫻井彩乃と知り合っており、この事故での身元不明で入院している女性との関わりを調べている。

橋本 瑛士 刑事

野崎の友人

野崎とともに、爆発事故の身元不明の女性の身元調査をする。

身元不明の女性

爆発事故で、意識不明で、入院している。

櫻井 彩乃の母である可能性があったが、彩乃の母は15年前に火災で亡くなっていた。

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み