ドルフィンという存在

文字数 734文字



 横浜・根岸にあるレストラン「ドルフィン」。
 ここは、今から47年前に発売された荒井由実(現:松任谷由実)のセカンドアルバム『ミスリム』に収録された楽曲「海を見ていた午後」で、<静かなレストラン>と歌われた店。47年の歳月を越えて、現在も多くのファンが其々の想いを追いかけながら訪れる場所だ。
 この店は、賑やかな繁華街の喧騒から程よい距離を持った高台に立地する。店内の大きなガラス窓から眺められる目前の風景は、洗練された現代的な住宅地が広がる。その先には、工業地帯の湾岸風景が広がり、もちろん晴れた日には美しい空と、デッキ席には心地よい海風が渡って来てくれる。いわゆる横浜らしい異国な情緒の雰囲気はそこに無く、普段着のナチュラルな横浜の街の姿を感じられる場所と言えるのかも知れない。
 ユーミンが通っていた、先代の古い洋館の佇まいであったドルフィンから見えた風景と、現在との比較は僕にはできないのだが、きっとその時代も喧騒から距離を置いた安心感が其処には存在していたのだと想像できる。
 私が初めてこの店を訪れたのは、およそ20年ほど前のこと。それ以降、横浜を訪れると、自然とこの店に足を延ばしてみたいと思うようになってしまった。そして、これまでは必ず親しい友人を伴って訪れる場所となっていた。友人との共有時間を楽しむ場所として、この店で過ごす時間は極上の価値を持っている。
 でも、いつかひとりでこの店に歩みを進めていく自分の姿を思い浮かべてもいる。その心境に達した自分は、確かな自分への自信を獲得している時であるとイマジネーションしているのだ。
 この心の感覚、少しでも解ってもらえたら嬉しい。
 ドルフィンは、私にとってささやかな内なる目標となってくれるレストランである。
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