同い年のキャロライン

文字数 624文字



 いつの日か、書店内にいた時のこと。
 店内B.G.M.から、久しぶりに耳にするサウンドが流し出されてきた。
 それは、ザ・ビーチ・ボーイズ『キャロライン・ノー』。
 繊細に繊細を重ねられた、なんて美しいメロディラインなのだろう。こんな曲を不意に突きつけられてしまうなんて、たまったものじゃない。いくつもの時を越えても、与えてくれる感動の質は何ら色褪せるものはない。
 この作品が収められてあるのは、60年代のロック黄金期を代表する名盤として名高い『ペット・サウンズ』であり、本作は最終曲にラインナップされている。僕がこのアルバムをよく聴き入っていたのは、自分が最も低迷していた時期であった。一つ一つの曲を聴きこんでしまえば、おのずと苦しかった想いがオーバーラップしてきてしまう。
 しかし、この『キャロライン・ノー』だけは、そんな想いが重なってくることはない。流れる一音一音の旋律のラインは、きっとこれからも己の美意識を刺激し続けてくれるだろう。
 改めてこの作品のデータを改めて調べあげてみた。そして、嬉しい発見を一つ見つけ出すことができた。
 『キャロライン・ノー』は、当初、ザ・ビーチ・ボーイズではなく、作者であるブライアン・ウィルソンのソロ名義でシングルカットされたという。これは、今までまったく知らないことだった。そのレコードの発売日は、1966年3月7日だ。
 永遠の名作『キャロライン・ノー』は、私が生まれるほんの4日前に発売された作品なのである。
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