Last Christmasが流れてきた頃

文字数 649文字



 二十歳前後の頃、懇意にするガールフレンドがいた。
 彼女は当時学生で、週に何日かは街の小さな雑貨店でバイトは入っていた。をによく遊びに通っていたのが思い出される。
 ある日のこと。彼女の雑貨店の中にいた時、当時大流行していたWham!の「Last Christmas」が、店内BGMで流れてきた。
 その時、彼女はすかさずこう言った。
『この曲、大好き!』
 そうか、この曲が好きなのか。ではいつか、一緒にカラオケ行った時、ビックリさせてやろう!と思い立った私。密かに、この曲の歌の練習を重ねてしまっていたのである。
 当時の私は、そんな発想にたどり着くことくらいがせいぜい。「仲の良いガールフレンド」の先に、進展していくためへの発想、着想の着地など、一切寄せ付けることができない、イケてないボーイズそのものだった。
 でも今思えば、そんな真っ青な自分であったことが満更でもなくなってきた。佐野元春さんの歌じゃないが、傷の手当てもしないまま、都会の通りを歩いていたような自分が、愛おしくも感じられる。
 話が脱線してしまった。
 さて、そのカラオケの儀なのだが、実は、約30年が経過した今もまだ実現していない。
そして、悲しいことに、今もしっかりこの歌は熱唱できる。
毎年12月になると、この頃のことを想い出しては、センチメンタルな心の傷のほろ苦さがプレイバックしてしまう。
 あのガールフレンド。今頃、何してるかな?
 幸せな日々を、おくっているものだろうか。

 幸せな日々・・・か。
 どうか、そうあってほしい。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み