「愛は心にかいた落書き」と歌ってくれたNSP
文字数 750文字
ニュー・サディスティック・ピンク。
このグループ名、耳にした記憶あるだろうか?きっと、呼び方を「NSP」と言い変えれば、ピンときてくれる人は一際増えてくれることだろう。
NSPは、いわゆる「叙情フォーク」というカテゴリーを確立し、フォーク・ファンのみならず、根強く広い支持層の愛聴者が存在するように感じられる。私は、古くの友人がこのグループのファンであることの影響で、彼らの音楽が少しずつ耳に馴染んでくれるようになったという、本流のファンからはやや外れたファンであると言える。
その友人、10代の頃に引きこもりの暮らしを経験したことを、私に打ち明けてくれたことがあった。そして、その時によく聴いていたのが、NSPであったという。
社会との交流、交信を拒絶し、一人部屋の中で耳を傾けていた彼らの音楽。そこに、どのような共感の姿があったのかな?と、今も彼らの音楽を耳にするたびに、その友人のことが頭を過ってしまう。
つい先日、休日ドライブに出かけた。ドライブのテーマは、「馴染みのない風景と、馴染みのない音楽と」。そこで選んだ音楽が、NSPだった。
とても好きな楽曲に、「さようなら」という作品がある。ドライブではこの曲を、何度リピートしてしまったことか。
♪ 愛は心にかいた落書きさ
歌詞の中に、この印象深いフレーズがある。故人であるソングライターの天野滋さん、きっとこの部分を強く歌いあげたかっただろうと、今日は不思議にそれが腑に落ちるように伝わってきてくれた。
恋愛を「落書き」と言ってしまえる心模様。若さゆえなのか、それとも男ゆえなのか。そんな青さが、とても眩しく感じられてならない。
今、NSPは、私にこう教えてくれる。
成熟していくことだけが、人が目指すべき生きる先の姿ではないんだよと。