第17話

文字数 351文字

 何でもうまくいく気がしたんです。誰にも内緒のおまじない。二人だけの秘密が、私達をいつまでも結んでいてくれる気がして)

 弔問客は長い行列を作っている。美沙子の小さな体はやがてお辞儀をしたまま、動かなくなった。パタパタと涙がこぼれて、床を濡らした。

(周さん、お願いです。もう一回だけ、暖かい手でいつものように……どうか呪文をかけて)

 震える手でそっと胸元を抑えた。周の手紙がかさかさと小さな音をたてた。美沙子にだけ分かる合図のように。

(レマト、レマト……ルテシイア)

 美沙子はこころの中でつぶやいた。
 そして震える手で握りしめていた白いハンカチで、人目に付かないようにそっと涙を拭って頭をあげた。

(もしも呪文が効かなかったら、あなたをきっと悲しませてしまうから……)

                  了



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