第8話
文字数 453文字
声が出なかった。心臓がドクドクと音を立て、洋服の上からでも鼓動が分かってしまうのではないかと思った。
「ななな、何でしょうか!」
声がかすれてしまったが、美沙子は精一杯、頑張った。即座に席を立って、喫茶店を出て行かなかっただけでも、美沙子にしてみれば上出来だ。
まだクラブハウスサンドイッチもアイスティーも、初めてのピスタチオのタルトも来ていない。これではレビューも書けない。美沙子が店員に助けを求めようと視線をさまよわせた時、その男の人が言った。
「クラブハウスサンドイッチと紅茶とピスタチオのタルト、ご馳走しますからここに座らせてもらえませんか? ちょっと追われているんです」
「ダ、ダメです。他の席に行ってください」
男の人も驚いた顔をしていたけど、美沙子も自分でびっくりしていた。考える前に言葉が飛び出していたのだ。
「ははっ」とその男の人は笑った。
そしてさっと席を立った。美沙子は、これまた意外なことに少し残念な気持ちになった。きっと、男の人の笑顔が感じがよくて、とても悪い人には見えなかったからだ。
「ななな、何でしょうか!」
声がかすれてしまったが、美沙子は精一杯、頑張った。即座に席を立って、喫茶店を出て行かなかっただけでも、美沙子にしてみれば上出来だ。
まだクラブハウスサンドイッチもアイスティーも、初めてのピスタチオのタルトも来ていない。これではレビューも書けない。美沙子が店員に助けを求めようと視線をさまよわせた時、その男の人が言った。
「クラブハウスサンドイッチと紅茶とピスタチオのタルト、ご馳走しますからここに座らせてもらえませんか? ちょっと追われているんです」
「ダ、ダメです。他の席に行ってください」
男の人も驚いた顔をしていたけど、美沙子も自分でびっくりしていた。考える前に言葉が飛び出していたのだ。
「ははっ」とその男の人は笑った。
そしてさっと席を立った。美沙子は、これまた意外なことに少し残念な気持ちになった。きっと、男の人の笑顔が感じがよくて、とても悪い人には見えなかったからだ。