第12話

文字数 461文字

 美味しそうにサンドイッチを頬ばる美沙子を見ながら、周は口火をきった。朋美からの話では、追われていると言えば、美沙子は同席を断らないだろうということだった。
 しかしあっさり予測が外れてしまった以上、相席を頼んだことに他の理由があった方がいいだろう。

(さて、なんと説明しようか……?)

 周は唇をなめた。なんと言うか決める前に話し始めてしまったので、ちょっとした時間稼ぎだ。

 「えーっと。当ててみてください。 1、一人で食事するのがイヤだったから。2、君に一目惚れしたから。追われてると言ったのは、席に座らせて欲しかったから。3…」

 周はどれを選んだとしても、あながち嘘ではないような選択肢を並べようとした。

「あの、なぜ私が注文した物が分かったんですか?」と、美沙子が周の話をさえぎった。

「あー、うん。えーと。」

 周はどぎまぎして口ごもった。なぜ美沙子の注文がわかったのかと言えば、周が外から喫茶店の中をのぞいた時、美沙子がちょうど注文するところだったからだ。窓が少し空いていたので、復唱する店員の甲高い声がもれ聞こえたのだ。
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