13。確認
文字数 1,532文字
13。確認
ここは……どこだろう…?
私は……どうしてここにいるのだろう?
“そろそろ、こっちに来なくちゃね…”
静かに目蓋が開く。
天井が写し出される。そうだ…天井は白い穴空きボードだったわ。教室の後ろの壁もそうだったな~。備え付けのロッカーはひとりにひとつあったっけ。
「おい。気がついたか?」
ゆっくりと声のした方へ顔を向ける。
「彰生 …」
かすれた声が耳に届く。
うわ…私の声、カスカス…。
彰生、安心したのか、深く息を吐く。
「…はあ、よかった…」
ギーッという音とカシャンという音が、彰生の声の後を追ってくる。イスに体重をのっけたようだ。
天井との距離感や、彰生との距離感がちょっとずつ鮮明になってくる。どうやら、私は何かの上に横になっている。
「ここって……」
「おう。保健室。どうしたらいいか分かんなかったから、とにかく横になれるとこに来てみた…」
そっか…ここって保健室だ……。
ちょっと教室とは広さが違うから、感覚が狂う。とはいえ……
「私…倒れた…?」
「うん…。頭打ったかもしれないから、目、覚まさないし、ほんとどーしようかと……」
……ん?
今、頭の中にざざーって何かが映し出されて、けれど、妙に霧がかかっていて……なんだろう?みたことあるような、知っているような……。覚えがあるんだけどな……。歯がゆい……。
「一静……?やっぱどっか変なのか?」
ぼーっと考え込んでいる私を見て、不安になった彰生がもう一度近づいてきた。
「……うん。大丈夫なんだけどさ、今、頭の中で、何かがチラチラしてて……」
「は…?なんだそりゃ…」
「きっとさ、私が知ってるんだろうけど……モヤがかかってて……」
「……お前、やっぱ頭打ったんじゃないの?」
「…………彰生って、失礼な子だったっけ」
私は上体を起こすと、彰生の方を向いた。
「彰生、私……確認したいことできたんだけど」
「おい」
「何?」
体を起こした私に、焦ったような視線を向ける彰生。
「いや…急に起きたらダメだろ……」
思わず言葉を失う。
「な、なんだよ。急に起きるから…しんどいのか…?」
あれ……意外と…
「彰生って……優しかったっけ?」
「はあ?」
何言ってんだ?!とぶつぶつ言いながら、椅子から立ち上がると、窓から校庭の方を見る。
「まあ……窓も開けるとこねえし、ここから校庭に出られるはずの出口も開かないから、一静が確認したいこと、なんだか知らないけど確認できるんじゃないか?」
「……うん。ありがと…」
保健室には、あまりお世話になった記憶はないのに、私は妙な感覚をもっている。ここで、このベットに横になったことがあるような…。けど、そのくらいのことはあるよね。お転婆だった私が、保健室を利用することなんて、きっとざらにあったはずだし…。
「気のせい…」
「ん?何」
「うううん。じゃあさ、掲示板のとこ、確認しに行きたいんだけど」
「掲示板?ああ…児童の作品展示の?」
「うん。気になることあって…」
「いいけど…内容聞いて、俺が確認してこようか?」
なんだか、小学生の頃の彰生と違うな…。
「ありがと。でも、自分で確認したいの」
大人になったんだから当然か。小学生の頃からだと約10年も前の人物像だもんね。
「……わかった。じゃあ行く?」
「え……ひとりで行けるけど……」
「お前ねえ……。さっき倒れただろ?原因もわかんねえし、どこ打ってるかわかんねえし、ひとりはないわ」
「……そう?ありがと」
「おう」
ベットからゆっくりと降りる。顔をあげると、心配そうな彰生がいた。
「…………大丈夫ですけど」
「ごめん……」
フワッと感じる懐かしさ、空気感、もやっとした霧の中にある“知っている”という漠然とした確信。
……何だか、私はこの感覚を知っていた。
ここは……どこだろう…?
私は……どうしてここにいるのだろう?
“そろそろ、こっちに来なくちゃね…”
静かに目蓋が開く。
天井が写し出される。そうだ…天井は白い穴空きボードだったわ。教室の後ろの壁もそうだったな~。備え付けのロッカーはひとりにひとつあったっけ。
「おい。気がついたか?」
ゆっくりと声のした方へ顔を向ける。
「
かすれた声が耳に届く。
うわ…私の声、カスカス…。
彰生、安心したのか、深く息を吐く。
「…はあ、よかった…」
ギーッという音とカシャンという音が、彰生の声の後を追ってくる。イスに体重をのっけたようだ。
天井との距離感や、彰生との距離感がちょっとずつ鮮明になってくる。どうやら、私は何かの上に横になっている。
「ここって……」
「おう。保健室。どうしたらいいか分かんなかったから、とにかく横になれるとこに来てみた…」
そっか…ここって保健室だ……。
ちょっと教室とは広さが違うから、感覚が狂う。とはいえ……
「私…倒れた…?」
「うん…。頭打ったかもしれないから、目、覚まさないし、ほんとどーしようかと……」
……ん?
今、頭の中にざざーって何かが映し出されて、けれど、妙に霧がかかっていて……なんだろう?みたことあるような、知っているような……。覚えがあるんだけどな……。歯がゆい……。
「一静……?やっぱどっか変なのか?」
ぼーっと考え込んでいる私を見て、不安になった彰生がもう一度近づいてきた。
「……うん。大丈夫なんだけどさ、今、頭の中で、何かがチラチラしてて……」
「は…?なんだそりゃ…」
「きっとさ、私が知ってるんだろうけど……モヤがかかってて……」
「……お前、やっぱ頭打ったんじゃないの?」
「…………彰生って、失礼な子だったっけ」
私は上体を起こすと、彰生の方を向いた。
「彰生、私……確認したいことできたんだけど」
「おい」
「何?」
体を起こした私に、焦ったような視線を向ける彰生。
「いや…急に起きたらダメだろ……」
思わず言葉を失う。
「な、なんだよ。急に起きるから…しんどいのか…?」
あれ……意外と…
「彰生って……優しかったっけ?」
「はあ?」
何言ってんだ?!とぶつぶつ言いながら、椅子から立ち上がると、窓から校庭の方を見る。
「まあ……窓も開けるとこねえし、ここから校庭に出られるはずの出口も開かないから、一静が確認したいこと、なんだか知らないけど確認できるんじゃないか?」
「……うん。ありがと…」
保健室には、あまりお世話になった記憶はないのに、私は妙な感覚をもっている。ここで、このベットに横になったことがあるような…。けど、そのくらいのことはあるよね。お転婆だった私が、保健室を利用することなんて、きっとざらにあったはずだし…。
「気のせい…」
「ん?何」
「うううん。じゃあさ、掲示板のとこ、確認しに行きたいんだけど」
「掲示板?ああ…児童の作品展示の?」
「うん。気になることあって…」
「いいけど…内容聞いて、俺が確認してこようか?」
なんだか、小学生の頃の彰生と違うな…。
「ありがと。でも、自分で確認したいの」
大人になったんだから当然か。小学生の頃からだと約10年も前の人物像だもんね。
「……わかった。じゃあ行く?」
「え……ひとりで行けるけど……」
「お前ねえ……。さっき倒れただろ?原因もわかんねえし、どこ打ってるかわかんねえし、ひとりはないわ」
「……そう?ありがと」
「おう」
ベットからゆっくりと降りる。顔をあげると、心配そうな彰生がいた。
「…………大丈夫ですけど」
「ごめん……」
フワッと感じる懐かしさ、空気感、もやっとした霧の中にある“知っている”という漠然とした確信。
……何だか、私はこの感覚を知っていた。
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