18。合流③
文字数 1,989文字
「とにかく、ここから移動しよう」
彰生 の声でその場にいたみんながハッと我に返った。
「そ、そうだな…。とにかく東の方に行くか」
耀 が言葉を足した。それだけのことだけど、妙な安心感があった。
そういえば、小学校時代もそうだったな。彰生、透一郎 、耀 が口火を切って、賛同して、行動に移す。何だか安定してたな……あの頃のようだ…。
「ちょっと!方角で言わないでよ!結局どっちなのよ!」
「萌慧 さん、大丈夫です!僕がちゃんと引っ張っていきます!」
ぎゅっと萌慧の手を握る快 くん。
「え、う、うん。分かった」
なんだ……萌慧、まんざらでもないじゃない。
私は少しほっとしていた。
こんな状況なのに私はなんでほっとしたのだろうか。さっきから感情に安定性がない。緊張してる?恐れてる?
「俺が後ろから行く。耀、先頭、任せられるか?」
彰生、出入り口にいって走ってきた方向を見つつ、問う。
「わかった。俺が先に行くよ」
耀は、これから行こうとする右側の廊下をチラリと見て、もう一度、彰生に向き返る。
「音楽室方面か」
「そうだな、そうしよう」
「よし」
耀の後を快くん、萌慧、私と続く。何だか包み込まれるように響く重低音のせいなのか、走ることができない。重みがかかっているわけではないが、急いだ動きが出来ない。移動している間も、…音だと思うのだけれど、zzzzzz といったモノが大きくなるわけでも、小さくなるわけでもなく響いていた。
「どっから聞こえてくるんだろう……」
私は急いで前に進みながら、後ろをチラリと見た。
「そうだな……後ろからだとは思うけど、よくわからないな……」
彰生も周囲に視線を配りながら答える。不思議だ……こんなに低く鳴り響いているのに、彰生の言葉は聞き取れるし、私の言葉も届いている。これだけの威圧感ある振動なら会話は聞こえそうにないのに…。
あ…
順当に進み、踊り場に到着した時、私の視線は一点に釘付けになる。このまま進むと音楽室へ続く渡り廊下へ。けれど、左上に視線を持っていくと、学校特有の広めの階段が上へと続いている。さっきは行かなかった……
「……2階…」
ずずずずずぅぅぅぅ…………
スイッチが切れたように、突然、音が止んだ。
一気に静寂が辺りを包み込む…。
「うっわ……気持ち悪……」
萌慧が呟く。
「え!僕のことそんなに嫌だったんですか?!」
「ち、違うわよ!急に静かになったから耳が変な感覚なの!」
「なんだ…、脅かさないでくださいよ」
「……快 、この状況下でなかなかのボケかましてくるわね……」
「それほどでもって、別にとぼけてないですからね!」
2人の脱力する会話が終わったところで、耀が口を開く。
「今のうちに落ち着けそうなとこに移動しようぜ」
「だな。音楽室でよくないか?」
辺りの様子に気を配りながら彰生が答えた。久しぶりに会ったとしても、やっぱり気が合うんだろうな。会話がスムーズだし、お互いを信頼してるんだろうな…って空気感がある。小学生の時は、そんな言葉も意味も知らなかった。だけど、今はきっと互いを信じているから迷いがないんだと分かる。
「じゃあ、当初の予定どおり行ってみよう。もしかしたら、そこから校庭に出られるかもだしな」
「え、そうなんですか?」
快が会話にはいってきた。“出られる”というワードに反応したんだろう。
「この先にある音楽室に行くには渡り廊下を通らなくちゃ行けないんだけど、そこは渡り廊下だから……」
近くにいた私が答える。
「そうか、壁がないってことか……」
「そういうこと」
よくここから飼育小屋にエサをあげに行ったな。上履きをここに脱いでいくもんだから、事務の人に怒られたっけ。
確かにそれでいうと、出られるかもしれない。
ちょっと名残惜しいけど……
「じゃあ、迷ってないで行きましょう!」
快の元気な声が響く。瞬間、辺りがふわりと揺らいだ気がした。
え……
思わずみんなの挙動を見たが、何の変化もない……。え……ユラッとしなかった?今、空間がユラッて……したよ……?
「……一静 ?どうした?」
「…なんでも…ない」
彰生が気にかけてくれたが、言えない。私だけが感じた違和感?え、さっきほんとに頭を打ったのかしら?時間差で変化が現れるっていうし……。
こっ…… こっ…… こっ……
今度は足音が響く。私たちのものじゃない。だって、ひとつだけの足音。複数人な感じじゃない。
突然の異音に皆が再び止まる。
どこででも聞くような靴音……。靴音って……、誰か他にいる?可能性としてはあり得るのか。だって萌慧たちも違うルートで来てたみたいだし……。だとしたら、知他にもこの校舎に関わる人がいる?それならいいけど……
どうしてそれが自分たちに優位な関係者だと言える…?
「だれ……?」
姿が見えたとき、彰生が呟いた。
「透 …一郎 …?おま、なん……」
「わあ…俺も色々聞きたいけど……まずは、瑠歌 知らない?」
「そ、そうだな…。とにかく東の方に行くか」
そういえば、小学校時代もそうだったな。彰生、
「ちょっと!方角で言わないでよ!結局どっちなのよ!」
「
ぎゅっと萌慧の手を握る
「え、う、うん。分かった」
なんだ……萌慧、まんざらでもないじゃない。
私は少しほっとしていた。
こんな状況なのに私はなんでほっとしたのだろうか。さっきから感情に安定性がない。緊張してる?恐れてる?
「俺が後ろから行く。耀、先頭、任せられるか?」
彰生、出入り口にいって走ってきた方向を見つつ、問う。
「わかった。俺が先に行くよ」
耀は、これから行こうとする右側の廊下をチラリと見て、もう一度、彰生に向き返る。
「音楽室方面か」
「そうだな、そうしよう」
「よし」
耀の後を快くん、萌慧、私と続く。何だか包み込まれるように響く重低音のせいなのか、走ることができない。重みがかかっているわけではないが、急いだ動きが出来ない。移動している間も、…音だと思うのだけれど、zzzzzz といったモノが大きくなるわけでも、小さくなるわけでもなく響いていた。
「どっから聞こえてくるんだろう……」
私は急いで前に進みながら、後ろをチラリと見た。
「そうだな……後ろからだとは思うけど、よくわからないな……」
彰生も周囲に視線を配りながら答える。不思議だ……こんなに低く鳴り響いているのに、彰生の言葉は聞き取れるし、私の言葉も届いている。これだけの威圧感ある振動なら会話は聞こえそうにないのに…。
あ…
順当に進み、踊り場に到着した時、私の視線は一点に釘付けになる。このまま進むと音楽室へ続く渡り廊下へ。けれど、左上に視線を持っていくと、学校特有の広めの階段が上へと続いている。さっきは行かなかった……
「……2階…」
ずずずずずぅぅぅぅ…………
スイッチが切れたように、突然、音が止んだ。
一気に静寂が辺りを包み込む…。
「うっわ……気持ち悪……」
萌慧が呟く。
「え!僕のことそんなに嫌だったんですか?!」
「ち、違うわよ!急に静かになったから耳が変な感覚なの!」
「なんだ…、脅かさないでくださいよ」
「……
「それほどでもって、別にとぼけてないですからね!」
2人の脱力する会話が終わったところで、耀が口を開く。
「今のうちに落ち着けそうなとこに移動しようぜ」
「だな。音楽室でよくないか?」
辺りの様子に気を配りながら彰生が答えた。久しぶりに会ったとしても、やっぱり気が合うんだろうな。会話がスムーズだし、お互いを信頼してるんだろうな…って空気感がある。小学生の時は、そんな言葉も意味も知らなかった。だけど、今はきっと互いを信じているから迷いがないんだと分かる。
「じゃあ、当初の予定どおり行ってみよう。もしかしたら、そこから校庭に出られるかもだしな」
「え、そうなんですか?」
快が会話にはいってきた。“出られる”というワードに反応したんだろう。
「この先にある音楽室に行くには渡り廊下を通らなくちゃ行けないんだけど、そこは渡り廊下だから……」
近くにいた私が答える。
「そうか、壁がないってことか……」
「そういうこと」
よくここから飼育小屋にエサをあげに行ったな。上履きをここに脱いでいくもんだから、事務の人に怒られたっけ。
確かにそれでいうと、出られるかもしれない。
ちょっと名残惜しいけど……
「じゃあ、迷ってないで行きましょう!」
快の元気な声が響く。瞬間、辺りがふわりと揺らいだ気がした。
え……
思わずみんなの挙動を見たが、何の変化もない……。え……ユラッとしなかった?今、空間がユラッて……したよ……?
「……
「…なんでも…ない」
彰生が気にかけてくれたが、言えない。私だけが感じた違和感?え、さっきほんとに頭を打ったのかしら?時間差で変化が現れるっていうし……。
こっ…… こっ…… こっ……
今度は足音が響く。私たちのものじゃない。だって、ひとつだけの足音。複数人な感じじゃない。
突然の異音に皆が再び止まる。
どこででも聞くような靴音……。靴音って……、誰か他にいる?可能性としてはあり得るのか。だって萌慧たちも違うルートで来てたみたいだし……。だとしたら、知他にもこの校舎に関わる人がいる?それならいいけど……
どうしてそれが自分たちに優位な関係者だと言える…?
「だれ……?」
姿が見えたとき、彰生が呟いた。
「
「わあ…俺も色々聞きたいけど……まずは、
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