12。引き寄せられてる…?
文字数 1,774文字
「これは、どういう状況……だ?」
思わず、呟く。
今、いるのはどうやら木造校舎の中のようだ。俺、どうしてこんなところにいるんだ?
目の前には来賓しか通らない玄関がある。
「これって、小学校のおんぼろ校舎じゃんか……」
え、俺、いつここに来たっけ……?
確か、俺はアトリエで、今回、売れ残った彰生 の絵画を見つめていた…はずだ。これを描いてくれと言ってきた相手も気に入らなかったが、何を思わずさらりと描いて見せた彰生にも腹が立っていた。絵が好きなわけでもない人に、彰生の描いた絵を売るのは苦痛だった。今でもそれは変わらない。それでも、初めは良かったのだ。彰生の絵を知ってもらいたい、知ってもらえれば彼のすごさが分かると、彼の絵の素晴らしさが分かると、その思いがあった。でも、俺たちは世間を甘く見ていた。若くて世間知らずで、その界隈では知られている業界人の息子の絵をうまく利用しようとする大人は驚くほど多かった。どこからそんな情報を掴んでくるのだろう?と人間不信になった。
彼の実力は間違いないものだったのに、今回の軽率な行動が、評価を貶めてしまっていた。気付いたときには、彰生の様子が変わってしまった後だった。
彼は、目的を見失っているようだった。俺も、いろんな事柄に絶望しかけていた。俺は、どうしてこんなにも頑張ろうとしていたのだろう?なんのために……?
気付くとアトリエにいた。ここにはなんとなくでも俺の“意思”があった。けれど、次に気付くと……ここにいた。これは……マジで分からん。
「なんだ……夢でも見てるのかな…」
立ったまま寝てんのか?あまりのストレスに倒れたのか?俺ってそんな玉か?
ん?
物音がしたような気がして振り返る。
「……」
耳を澄ませてみるが、何も聞こえない。
気のせいか……?
ー ゴト……ッ……
「いや、聞こえたな……」
入り口を背にして、廊下へと進む。右側から聞こえたような気がする。
確かこの先は……
「多目的ホールと調理室へ続く渡り廊下があったはず……」
右側に進むと、すぐに事務室があった。廊下から窓越しにチラッと見る。ガラスが透明なので、中の様子が分かる。職員用の机とイスが2セット、向い合わせで置かれている。コピー機も1台ある。輪転機もある。その他、カッティングボードやコピー用紙も置かれている。けれど、人はいない。
「そんな遠くなかったと思うけどな……」
さらに進んで、その隣の部屋は校長室だ。校長室は磨りガラスで中は見えない。
ここか……?
校長室の扉に手を掛けて、一気に扉を開ける。
すると、校長の大きな机とイスがあり、その前に、来客時に接待するであろうソファのセットが置かれていた。そしてそのソファには人が座っていた。
「誰だ…?」
それまで人がいる感じはなかったので、突然の
明らかに緊張した空気感が漂う。これは近付くと逃げ出すかも……。というのも後ろ姿のみなので言いきれないが、まあ、8割がた相手は女性のようであるからだ。最近ではあまり見なくなった金髪に、軽いウェーブがかかったロングの髪型。なんか……馴染みがあるような……
「返事してくれると…ありがたいけど…」
「……えっ、その感じ……」
え……この声……
俺の中に小さい頃に聞いたいろんな声がフィードバックする。この雰囲気のせいかもしれないが、その声にしか思えなくなっていた。でも、そんなことってあるのか?今まで思い出しもしなかったのに……
相手が振り返る。きっと、普通に振り返っただろうに、俺にはスローモーションのように感じた。その人物の瞳は引き込まれるような青い色だった。
「瑠 ……歌 なのか?」
「透 ?…透一郎 ?」
「お前…一段と相手に勘違いさせる外見になったな……」
「透一郎こそ……ハッキリ綺麗だって言いなさいよ」
幼馴染みとの感動の再会とは……まあ、ならないのが、俺たちの関係性だな。
相手が瑠歌だと分かったら余計に緊張感が薄れる。入室をすると、彼女の前方にまわる。
「驚きはしたけど、知ってるやつで良かったわ。お前どーやってここに……」
前から瑠歌を見て、動きが止まる。
腹が…膨らんでるように見えるが……
「おま…え、え?」
「何よ。妊婦ってそんな珍しいの?」
ここで俺の思考もフリーズした。
思わず、呟く。
今、いるのはどうやら木造校舎の中のようだ。俺、どうしてこんなところにいるんだ?
目の前には来賓しか通らない玄関がある。
「これって、小学校のおんぼろ校舎じゃんか……」
え、俺、いつここに来たっけ……?
確か、俺はアトリエで、今回、売れ残った
彼の実力は間違いないものだったのに、今回の軽率な行動が、評価を貶めてしまっていた。気付いたときには、彰生の様子が変わってしまった後だった。
彼は、目的を見失っているようだった。俺も、いろんな事柄に絶望しかけていた。俺は、どうしてこんなにも頑張ろうとしていたのだろう?なんのために……?
気付くとアトリエにいた。ここにはなんとなくでも俺の“意思”があった。けれど、次に気付くと……ここにいた。これは……マジで分からん。
「なんだ……夢でも見てるのかな…」
立ったまま寝てんのか?あまりのストレスに倒れたのか?俺ってそんな玉か?
ん?
物音がしたような気がして振り返る。
「……」
耳を澄ませてみるが、何も聞こえない。
気のせいか……?
ー ゴト……ッ……
「いや、聞こえたな……」
入り口を背にして、廊下へと進む。右側から聞こえたような気がする。
確かこの先は……
「多目的ホールと調理室へ続く渡り廊下があったはず……」
右側に進むと、すぐに事務室があった。廊下から窓越しにチラッと見る。ガラスが透明なので、中の様子が分かる。職員用の机とイスが2セット、向い合わせで置かれている。コピー機も1台ある。輪転機もある。その他、カッティングボードやコピー用紙も置かれている。けれど、人はいない。
「そんな遠くなかったと思うけどな……」
さらに進んで、その隣の部屋は校長室だ。校長室は磨りガラスで中は見えない。
ここか……?
校長室の扉に手を掛けて、一気に扉を開ける。
すると、校長の大きな机とイスがあり、その前に、来客時に接待するであろうソファのセットが置かれていた。そしてそのソファには人が座っていた。
「誰だ…?」
それまで人がいる感じはなかったので、突然の
人感
に、警戒よりほっとした感情がわく。相手は違ったようだが…。明らかに緊張した空気感が漂う。これは近付くと逃げ出すかも……。というのも後ろ姿のみなので言いきれないが、まあ、8割がた相手は女性のようであるからだ。最近ではあまり見なくなった金髪に、軽いウェーブがかかったロングの髪型。なんか……馴染みがあるような……
「返事してくれると…ありがたいけど…」
「……えっ、その感じ……」
え……この声……
俺の中に小さい頃に聞いたいろんな声がフィードバックする。この雰囲気のせいかもしれないが、その声にしか思えなくなっていた。でも、そんなことってあるのか?今まで思い出しもしなかったのに……
相手が振り返る。きっと、普通に振り返っただろうに、俺にはスローモーションのように感じた。その人物の瞳は引き込まれるような青い色だった。
「
「
「お前…一段と相手に勘違いさせる外見になったな……」
「透一郎こそ……ハッキリ綺麗だって言いなさいよ」
幼馴染みとの感動の再会とは……まあ、ならないのが、俺たちの関係性だな。
相手が瑠歌だと分かったら余計に緊張感が薄れる。入室をすると、彼女の前方にまわる。
「驚きはしたけど、知ってるやつで良かったわ。お前どーやってここに……」
前から瑠歌を見て、動きが止まる。
腹が…膨らんでるように見えるが……
「おま…え、え?」
「何よ。妊婦ってそんな珍しいの?」
ここで俺の思考もフリーズした。
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