第95話 二人
文字数 488文字
塔の中で、外の物音は閉ざされ、キリス・ギーの話す声も聞こえない。静かだ。キリス・ギーは、石になってしまったのだろうか。
ハーレイは、ユティに話しかけた。ゆく時が来たのだ。
「ユティ、おいで。いっしょにいよう」
「わかったわ」
二人は、ならんで立っていた。
ハーレイは、頭をたれた。
今までのことを考えて、急にさびしくなった。
「ハーレイ、泣いてるの?」
「ううん」
「こわいの?」
「いや。ここに、いつまでもいたいんだ。知らないところへいくのが、いやなのさ」
「そう。でも、みんな、まってるわ」
「うん。そうだね」
ユティは、ハーレイの手をとった。
「わたし、みんな知ってるのよ。あなたが来る前の人も。みんないい人だったわ。ラーベスは、フロルをつんでくれたし、リダンは、おひげがすてきだった。でも、ハーレイ、あなたといっしょでよかった……」
ユティは、ハーレイの手をとった。ハーレイは、マントで彼女をつつんだ。
ハラルドの塔が、ふるえ出した。
塔は、地上を離れた。光をふきながら、空をあがっていく。
それは、遠く、ゼルにも伝わった。
彼は、塔が小さくなって、空にすいこまれていくのを、見た。
ハーレイは、ユティに話しかけた。ゆく時が来たのだ。
「ユティ、おいで。いっしょにいよう」
「わかったわ」
二人は、ならんで立っていた。
ハーレイは、頭をたれた。
今までのことを考えて、急にさびしくなった。
「ハーレイ、泣いてるの?」
「ううん」
「こわいの?」
「いや。ここに、いつまでもいたいんだ。知らないところへいくのが、いやなのさ」
「そう。でも、みんな、まってるわ」
「うん。そうだね」
ユティは、ハーレイの手をとった。
「わたし、みんな知ってるのよ。あなたが来る前の人も。みんないい人だったわ。ラーベスは、フロルをつんでくれたし、リダンは、おひげがすてきだった。でも、ハーレイ、あなたといっしょでよかった……」
ユティは、ハーレイの手をとった。ハーレイは、マントで彼女をつつんだ。
ハラルドの塔が、ふるえ出した。
塔は、地上を離れた。光をふきながら、空をあがっていく。
それは、遠く、ゼルにも伝わった。
彼は、塔が小さくなって、空にすいこまれていくのを、見た。