第50話 決断

文字数 506文字

 ネムは、落ち着かない。
 王宮での待遇はいいのだが、クロフス王が、肝心の救援のことになると、まったく耳を貸さない。
 
 シベリン王子も、王を責めた。
「王よ。助けを出しましょう。我々だけ、無傷でいるつもりですか」
「人は出せない」
「でも。これは、人間全体の問題ですよ。もし、ダールが大陸の人を滅ぼしたら、この島だけ残してくれると思いますか?」
 クロフス王は、だまった。
 シベリン王子は、しばらく考えて、言った。
「私が行ってもいいのです」
 クロフス王は、ゆっくりと王子の顔を見つめた。
 ネムとミスアが呼ばれた。
 王の間に入ると、すでに王と王子が待っていた。
 ネムはあいさつもせず、言い出した。
「私たちは、もう待てない。クロフス、あなたは王だ。この時に、一緒に戦ってはくれないのか?」
「そうだ。しかしネムよ。シベリンを私の代理として、この島の部隊を送ろう」
「まて、クロフス。王子に、万一のことがあれば……」
「いや、いいんだ。私は、君たちと共に生きたつもりだ。しかし、私は島を捨てて行けぬ。それは、王の使命だ。そこで、我らの友好の証しとして、王子を君に従わせよう」
「ありがとう、クロフス」
 こうして、アトロス島は動き出した。
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