第28話(1)昼の大阪にて

文字数 2,341文字

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「ギャオオ!」

 トカゲが二足歩行しているかのような巨大怪獣が大阪の道を進む。建物や道路などが無残にも破壊されていく。

「ミサイル、撃ち方用意……撃てぇ!」

「!」

 防衛軍の放った大量のミサイルが巨大怪獣にことごとく当たるものの、怪獣はビクともせず、市街地の中心部へと歩を進める。

「くっ、効かないか……応援はどうなっている!」

「現在関西方面各地で怪獣が出現! 各部隊はその迎撃に追われています! 大阪エリアに限定しても同様です!」

「! まるで示し合わせたかのようだな……」

 部下の報告に上官が顔をしかめる。

「ここは私たちに任せてもらえるかしら?」

「誰だ⁉」

「通信は海から!」

「海から⁉ あ、あれは⁉」

 上官がモニターを確認すると、桃色の派手なカラーリングの戦艦が映っている。その戦艦から女性の声が響いた。続いて、地上から青色の戦車、ミサイルを積んだ黄色の大型トラック、空中から赤色の戦闘機、海中から緑色の潜水艦が現れ、巨大怪獣に一斉に攻撃を加える。強力な攻撃を立て続けに喰らって巨大怪獣もたまらず体勢を崩す。それを見て、戦闘機のパイロットがすかさず号令する。

「チャンスだよ! 全員フュージョン‼」

あっという間に戦闘機と戦車、大型トラック、小型戦艦、潜水艦が一つの機体に合わさり、色とりどりな巨大ロボットの姿になったのである。

「『フュージョントゥヴィクトリー』、見参‼」

 空中に浮かぶ巨大ロボットが五人の揃った叫び声に合わせてド派手にポーズを決めた。

「エ、FtoVか!」

「そういうこと♪ 現在の状況は?」

「市民の退避は既に完了しております!」

「それは結構……」

 上官からの報告に男性が頷く。女性が呟く声がする。初めの女性とは別である。

「それなら後はあのトカゲちゃんをなんとかするだけね……」

「あれってトカゲなの? 手足の爪は鋭いし、皮膚もごわごわしているし、なんだか全体的に分厚くない? そもそも二足歩行だし……」

 先ほどの女性がその呟きに反応する。

「しゃべっている暇があるなら手を動かせ!」

 号令をした男性が女性たちを怒鳴る。

「……私たちの担当は脚部なんだけど」

「揚げ足を取るな! いいから動かせ!」

「はいはい……」

「はいは一回だ! ……どうだ?」

 怒鳴った男性が眼鏡の男性に尋ねる。

「……データ照合終了。該当するデータはありません」

「へ~新種ってやつ?」

 眼鏡の男性の言葉にのんびりした口調の男性が応える。

「気にはなるが、まずは活動を停止させんとな……防衛軍に告ぐ! 攻撃を開始する!」

 防衛軍のモニターに派手なパイロットスーツを着た五人の男女が映る。

「お、お願いします!」

「日本防衛の要の一角、フュージョントゥヴィクトリー、通称FtoVの戦い……」

「そうか、お前は初めて見るんだったな、その眼にしっかり焼き付けておけ」

 上官が部下に声をかける。

「ギャオオ!」

 巨大怪獣がFtoVに迫る。

「来たな! 喰らえ! ウィンクボンバー!」

 FtoVが片目をウィンクすると、そこからハート型の砲弾が発射され、巨大怪獣の右腕が吹き飛ばされる。

「ビーム兵器ではなくウィンク⁉」

 部下が衝撃を受ける。上官が静かに呟く。モニターにさほど大柄ではないが、ガッシリとした体格の男性が映し出される。

「FtoVのパイロット、『ザ・トルーパーズ』のリーダーで、頭部担当の小金谷和久(こがねやかずひさ)さん、流石の射撃だ……」

「……ライトアームフリック!」

 FtoVが右腕を伸ばすと、所謂デコピンを操り出し、巨大怪獣の左腕を弾き飛ばした。

「デコピン⁉ パンチではなくて⁉」

 部下が驚愕する。上官が感心する。モニターに眼鏡の細身の男性の姿が映し出される。

「右腕部担当、土友孝智(つちともこうち)……データ分析と戦闘を同時にハイレベルでこなす……」

「レフトアームクラッシュ~」

 FtoVが左腕を伸ばし、巨大怪獣の右脚を握り潰した。

「いや、付属しているバスターを使わないのか⁉」

 部下が狼狽する。上官が頷く。モニターに太り気味な男性の姿が映し出される。

「左腕部担当、木片義一(このかたぎいち)……砲撃では市街地に被害が及ぶと予測したのだろう……冷静だ」

「レフトフットサンドイッチ!」

 FtoVが左脚を伸ばし、内腿とふくらはぎの部分で巨大怪獣の左足を挟み潰した。

「ちょっと左腕と攻撃方法が被っている!」

 部下が困惑する。上官が満足気に頷く。モニターにショートボブの女性が映し出される。

「左脚部担当、火東聖(かとうせい)……チームのエース格、戦闘能力は優秀だ……」

「……ライトフットキック!」

 FtoVが右脚を伸ばし、巨大怪獣の頭部を蹴り飛ばした。

「た、単純に蹴った⁉」

 部下が仰天する。上官が手を強く握る。モニターにロングヘアーの女性が映し出される。

「右脚部担当、殿水仁美(とのみずひとみ)……チームのスター、戦闘センス抜群だな……」

「よしっ! 一丁上がり!」

 殿水が声を上げる。

「各部を吹き飛ばしたことを確認……」

 土友が冷静に呟く。

「これで行動不能だね~zzz……」

「いや、寝るな! 木片!」

 小金谷がダミ声を張り上げる。

「いつでもどこでも寝られるってのは羨ましい限りだね~」

 火東が苦笑する。土友が小金谷に問う。

「和さん、各部は直ちに焼却するか?」

「いや、新種なら持ち帰りたいな……」

「了解。防衛軍にも回収作業の支援を依頼する……む⁉」

「どうした?」

「モニターを……」

「! こ、これは……」

 小金谷が驚く。バラバラになった巨大怪獣の各部位がそれぞれ怪獣に変化し、動き始めたからである。殿水が顔をしかめる。

「ど、どういうこと⁉」

「ほほほっ! ここからが本番どすえ! ザ・トルーパーズ!」

「⁉」

 殿水たちが声のした方に視線を向けると、緑色の機体と赤色の機体が立っていた。
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