第16話(3)連携……?

文字数 3,071文字

「よっしゃ! ウケたぜ、太郎!」

「いや、ここでウケとか要らないんですよ! 玲央奈さん!」

 玲央奈の言葉を太郎は否定する。

「いやはや……いつもながら素晴らしいな、まったく言うことが無い……」

「言うことだらけだと思いますよ、ウルリケさん!」

「ミーは惜しみないクラップを送るよ、タロウ」

「戦闘中ですから、操縦桿から手は離さないで下さいよ、トリクシーさん!」

 残った一機のプロッテは尚も戸惑っていたが、退却行動を再開する。玲央奈が驚く。

「馬鹿な……動じていねえ⁉」

「そりゃそうでしょ!」

「とにかく接近だ、太郎! お前の機体『プリティーラビット』の機動力ならばまだ追い付けるはずだ!」

「ウルリケさん、あまり機体名を大声で言わないで下さい!」

 太郎は文句を言いながら機体をプロッテに近づけさせる。プロッテも退却しつつ、正確な射撃を放つ。その射撃を何とか躱す太郎だったが、相手との距離は離れてしまう。

「ちっ! なにやってんだ、太郎!」

「言い訳は嫌いですが、何度も言っているように僕の機体は索敵メインなんですよ! それを前線に飛び出させる用兵が何をやっているんだって話ですよ!」

「ごちゃごちゃとわけ分かんねえこと言ってんじゃねえ!」

「結構分かりやすく言いましたけど⁉」

「まあいい、トリクシー、二人でやるぞ」

「オッケー!」

 ウルリケとベアトリクスが各々の機体を素早く動かし、海岸沿いでプロッテをはさみうちの状態にする。

「海の中には逃げれまい! 早い者勝ちだ!」

「ラジャー! 行くぞ……⁉」

 飛び掛かろうとした両機の前に射撃の雨が降りかかる。

「ホワット⁉」

「新手か!」

 ウルリケの言ったように、北側の海から空を飛ぶ黒い戦艦が見えた。タエン帝国の主力航空戦艦、ラワイスタである。そこから二機のプロッテが島に向かって降下してくる。

「な⁉ 戦艦の接近に気が付かんかったんか⁉」

「発信している識別コードは地球圏連合と同じものを使用していたから、こちらの確認が遅れちゃったんだね~」

 隼子の言葉に閃が冷静に答える。

「二機増えた位でビビッてんじゃねーよ!」

「良いことを言うね、レオナ!」

 玲央奈とベアトリクスが迎撃に動く。ウルリケが制止しようとする。

「ま、待て、二人とも! 戦況を見て……まあ、良いか、面倒だ!」

「ウ、ウルリケさんまで⁉」

 ウルリケも敵機に向かって突っ込む。三機とも悪くない動きだったが、後から駆け付けた二機のプロッテはそれよりも優れた動きを見せ、残っていたプロッテとともに、三機一体で見事なコンビネーションを取り、玲央奈たちを翻弄する。

「ちぃっ!」

「くっ! カタログスペック上ならば遅れを取るはずが無いというのに!」

「ホワイ⁉」

「それは相手が連携を取っているからですよ!」

 太郎が三人に声をかける。

「連……」

「携……」

「ん~?」

 三人とも首を傾げる。太郎が驚きの声を上げる。

「なんで揃いも揃って連携を知らないんですか⁉ それでよく軍人になれましたね⁉」

「まあ、自分で自分の才能が怖いぜ」

「貴様の場合は本能だろう、知能が著しく低いからな」

「あんだと~?」

「言い争いを始めないで下さい!」

「ミーは良く脳筋って言われたね~」

「照れ臭そうに言わないで下さい! それは馬鹿にされているんですよ! !」

 三機が奇異兵隊に本格的な攻撃を仕掛けてくる。ウルリケが舌打ちする。

「ちっ、空中戦を織り交ぜられるとこちらが不利だ……」

「汚ねえーぞ! 降りてきて戦えってんだ!」

「そういうわけにはいかないでしょう!」

「ビッグなツリーでもあれば、それを伝って、飛び掛かれるんだけどね~」

「どんな大樹ですか! で、でも、本当にどうすれば……」

「俺たちに任せろ!」

「⁉」

 太郎が声のした方向にモニターを切り替えると、そこにはそれぞれ赤、白、緑のカラーリングをした機体が三機映っている。

「あ、貴方たちは……⁉」

「そう、俺たちは……」

「『トリオ・デ・イナウディト』の皆さん!」

「お、おう……」

 通信に割って入った隼子によって、先に名前を言われてしまい、長身で痩せ型の中年男性は顔をしかめる。隼子はそれに構わず話を続ける。

「何故こんな所に?」

「……俺たちの勤めている会社『博多アウローラ』がお前らの会社と業務提携を結んだからな、その関係でこうして出向してきたわけだ」

「い、いつの間に……」

「まさしく電光石火だったよ、ほとんど買収に近い契約内容だが……お前らの会社ってそんなに資金があったのか?」

「ちょっと太いスポンサーがついたものでね」

 閃が苦笑気味に応じる。

「? まあいい、ここは俺たちの地元だ、これ以上の勝手は許さん!」

「相手は空を飛んでいますよ、大丈夫ですか⁉ 三機とも飛行機能はありませんよね?」

「やりようはいくらでもある!」

 男が隼子の言葉に力強く答える。

「は、はあ……」

「愛!」

「はいよ!」

モニターに小柄でふくよかな女性が映り、緑の機体が前に進み出て、肩部を突き出す。すると、右手から白い煙が勢いよく噴き出す。空を舞っていた三機のプロッテは突如として煙に包まれ、当惑しているのが機体の動きからも伝わってくる。

「緑の機体、イナウディト・ヴェルデはジャミング戦法を得意としている機体! 搭乗するのは梅上愛(うめがみあい)さん!」

 隼子が興奮気味に解説する。

「続いては俺だ!」

 モニターに再び長身で痩せ型の中年男性が映る。赤色の機体が肩部からミサイルを三発発射させる。プロッテもそれを感知し、なんとか回避する。太郎が叫ぶ。

「か、躱された⁉」

「まだだ!」

「⁉」

 ミサイルは方向を変え、それぞれ三機の背部に命中した。太郎が驚く。

「ホ、ホーミングミサイル⁉」

「そういうことだ!」

「赤色の機体、イナウディト・ロッソは火力の高さが売りの機体! パイロットを務めるはトリオのリーダーでもある松下克長(まつしたかつなが)さん!」

 隼子が熱狂的に解説を続ける。ミサイルの直撃を喰らい、背部のバーニアを損傷した三機のプロッテは地上に落下する。三機とも近い位置に固まるように落ちた。

「狙い通りだ! 大門、仕上げは任せたぞ!」

「任された!」

 モニターに筋肉質な男が映る。白色の機体が勢いよく突っ込み、右手に持ったブレードで次々と斬り付ける。プロッテ三機は片方の脚部を切断され、機体のバランスを崩してその場に倒れる。太郎が感嘆する。

「す、凄い、一瞬で無力化させた……」

「白色の機体、イナウディト・ビアンコは接近戦特化機体! 操縦は竹中大門(たけなかだいもん)さん!」

「隼子、荒ぶっているな……」

 我を忘れて解説を続ける隼子を大洋はモニター越しに醒めた目で見つめる。

「ラワイスタが撤退していくね」

「追いかけるか?」

「いや、命令は出ていないし、この戦力ではあの規模の戦艦を落とすのはなかなか大変だ、追い払えただけでも良しとしよう」

 大洋の問いに閃は冷静に答える。一方、海岸に並んだトリオ・デ・イナウディトを太郎がこれでもかとばかりに称賛する声が聞こえてくる。

「凄いです! 御三方の見事な戦いぶり! 真のチームワークとは何かを教えてもらったような気がします!」

「な、なんだか照れるわね……」

「はっはっは! なかなか見所のある少年じゃないか! なあ、リーダー!」

「そうだな。良かったらサインをしてあげよう」

「い、良いんですか⁉」

「ああ、ただ、悪いが写真等は会社を通してくれるかい……⁉」

「な、なんや⁉ この反応は⁉」

 突如、海中から巨大なトカゲのような怪獣が現れて、トリオ・デ・イナウディトを勢いよく弾き飛ばす。無防備だった三機は派手に転がる。

「「「き、聞いてないぞ~⁉」」」
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