第28話(3)通天閣で投げてみた&打ってみた結果

文字数 2,224文字

「な、なに⁉」

「ロボットが二機と……ドラゴン⁉」

 殿水と火東が驚く。

「ど、どういうことなの⁉」

「ドラゴンに対して、ロボットは虎というか、豹のような……しなやかなフォルムをしているわね。二足歩行で人型ではあるようだけど……」

「静かに……! 通信が入ってくる!」

 土友が注意する。若い女性二人の声が聞こえてくる。

「……ひょ、ひょっとして、ここは通天閣やないですか⁉」

「……ひょっとしなくてもそうやね」

「どういうことなん⁉ 戻ってきてしもたんですか⁉」

「私たちの知っている日本とはまた別の可能性もある。慌てず騒がず現状確認や」

「冷静ですね!」

「なんてたってJDやからね、JKとは違うのよ」

「なんかマウント取ってへん⁉」

「気のせいよ」

「気のせいですか」

「……」

「……どうします、和さん?」

 土友が小金谷に尋ねる。

「日本語は通じるようだ。あのロボット二機とコンタクトを取ってみろ」

「了解……そこのロボット二機! 黒と白のロボットの搭乗者! 聞こえているか⁉」

「え? ウチらのこと? だ、誰?」

「こちらはザ・トルーパーズだ」

「ザ・トルーパーズ⁉ ごっつ有名人やん!」

「こちらのことを知っているのか?」

「そら知ってますよ……あ、モニターの調子が戻ってきたな……おおっ、FtoVや!」

 黒いロボットの搭乗者がFtoVを確認する。

「……どうやら私たちの知っている日本のようやね」

 白いロボットの搭乗者が呟く。

「あらよっと!」

 ロボット二機が通天閣に着地する。土友が問う。

「君たちは何者だ?」

「いや、ごく普通の女子大生と女子高生です」

「ごく普通の女の子がそんなロボットには乗らない」

「さすがは土友孝智さん、冷静やな……」

「名前は?」

「ええっと……」

 二人がFtoVと通信を繋ぐ。黒いポニーテールの女の子と、白髪のミディアムボブで眼鏡をかけた女の子がモニターに映る。ポニーテールの子が口を開く。

「ウチは四天王寺鈴鹿(してんのうじすずか)言います。高二です」

「私は生國芙蓉(いくくにふよう)です。大学一回生です……本来なら」

「本来なら?」

「ええ、この通天閣で起きた落雷事故をきっかけに異世界に転移してしまったもので……」

「……確かに半年前に落雷事故が起こっているな。君たち二人が行方不明になっている」

 土友が手際よく確認する。

「ほう、半年ですか。向こうとは時間の経過はそんなに違わんようやな……」

「向こうとは……ひょっとして『パッローナ』という世界か?」

 土友の質問に芙蓉が首を傾げる。

「? いえ、違います。私たちが転移したのは『トッキーサ』という世界です」

「そうか……その機体はなんだ?」

「これは『ファクトランダ―』という機種で、トッキ―サでの魔法技術によって製造された機体です。私の乗っている白い機体が『バブー』……」

「ウチが乗っているこの黒いのが『ゼファー』です」

「そうか、魔法技術ということは魔法が使えるのか?」

「ご明察。剣などの他に魔法を駆使して戦います」

「戦うとは……例えばあのドラゴンたちとか?」

「ええ、そうです。向こうでは転移者は魔法の才覚に優れているようで、ほとんど有無を言わさず、ファクトランダ―の搭乗者にされました」

「た、大変ね……」

「まあ、ご飯とか食べさせてもらったり、色々とお世話してもろたんで……そのお礼代わりみたいなもんですよ」

 殿水の言葉に鈴鹿が応える。

「約半年間、私たちはトッキ―サの平和を取り戻すために戦っていました……」

「そうか……しかし、落雷事故に遭遇したのは他にも沢山いただろうに……君らだけが転移するとはついていないな」

「向こうの大賢者さまによると、落雷の際、特殊な行動を取っていたからではないかと……」

「特殊な行動?」

「ええ、ちょうどその時、通天閣打法が実際に出来るのか試していて……」

「は?」

「ウチは通天閣投法ってホンマに出来るんかなって……」

「はあ?」

「通天閣を挟んで、そういう特殊な行動をしていた二人が転移したというわけです」

「……それは特殊というか奇特だな」

「そんなに褒められると照れます……」

「へへっ……」

 芙蓉が後頭部を抑え、鈴鹿が鼻の頭をこする。

「全然褒めてないぞ」

「とにかく、さっきあの雷神ちゃんが腹立ち紛れに適当に放った雷撃がきっかけで、この世界に戻ってきちゃったってわけね……」

「そのようですね」

「リーダー……」

 殿水が小金谷に指示を仰ぐ。

「……さらに詳しい事情は後で聞こう。とりあえず我々の保護下に入ってもらおうか」

「ええ、それで構いません」

「シャア!」

「あ、ドラゴン、すっかり忘れとったわ……」

「連中もパニック状態から落ち着きを取り戻したみたいやね」

「っていうことは芙蓉さん……」

「うん、鈴鹿ちゃん……」

 鈴鹿と芙蓉は互いの機体を見合わせる。ドラゴンたちがそこに迫る。

「シャアア!」

「当然、さっきの続きとなるやろねえ……」

「難儀やなあ!」

「危ないわ、その機体は飛べないの⁉」

 火東の問いに芙蓉が落ち着いて答える。

「魔力を必要とするので、そんなに長時間は飛べません」

「むしろ……おおっと⁉」

 ドラゴンたちが更に迫る。

「これは鈴鹿ちゃん……食べられるで」

「そんなん見たら分かります! ⁉」

 鳥と人が合わさったような独特なフォルムをした黒い機体が、迫り来るドラゴンたちをまとめて斬って捨てる。黒い機体から周囲に通信が入る。

「こちら『テネブライ』、美馬隆元(みまたかもと)だ。すまん、遅くなった。斬ってしまったが良かったか?」

「あ、相変わらずの救世主的タイミング!」
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