第9話 議会、人の平等、ギルド等々。

文字数 2,337文字

 異世界ものにしろファンタジー系小説・漫画の社会は、ヨーロッパの中世か近世初期くらいの社会設定となっています。
 しかし、実際のヨーロッパの、この時代と比べると決定的に異なっているものがあります。
 議会が存在しないことです。
 「そうだ、売国しよう」のアニメでは、都市の議会がでてきますが、単に意見を述べあう、討論会でしかありません。そのこともはつきり言っています。当然都市の議会は、市民の有力者から選ばれた議員が、都市の政治を論じ、決定する場であり、市長というよりも、都市の最高権力者を決定もします。都市には軍隊もあります。「そうだ、売国しよう」では、非武装の商人達しかいませんでした。
 「ゲート」(小説)では、日本・自衛隊との接触の中、ローマ的な元老院が出てきますし、ローマの史実から取ったような発言もでていますが、他では国王は絶対的権力を持ちね大臣とか、将軍、神官が補佐するだけです。ちなみに、ヨーロッパの絶対王政は、それほど専制的権力というか、体制は持ち合わせていませんでした。あの太陽王ルイ14世ですら、死ぬ間際まで公開食事を行っていました。
 しかも、官僚機構すら出てこない、国王又は皇帝一人の完全絶対王政。
 日本の戦国時代は結構、殿様の権力は弱かったし、信長や秀吉でも合議をした上で決定していることが資料には出ていますし、江戸時代は、幕府は老中・若年寄、大名なら家老たちの合議体があります。 
 また、宗教観では、どうもキリスト教的宗教世界で、主人公が
「神様は心の中にいます。」
と言って、結構みんなが納得してしまうことが結構あります。かなり異端だ、無神論者だと民衆から反発を受けかねないことを兵器でしている・・・。
 また、平民と貴族が峻別され、前者が一方的に収奪するとか、後者が前者を完全に見下しているとかとなっている場合がかなりあります。革命軍が、国王を選ぶためとかしか主張がなかったり、いい政治をすれば人がついて来る、勝つと単純に進んだり、善政を施す側は身分制を打破する側と単純にしたりと・・・。人は平等だ、と宣言すると、まるで初めて真理があきらかになったというような展開になったり・・・、人間が全て平等だという主張は、ワット・タイラーの乱でジョンポールが、いや、古代中国諸子百家の時代は宋氏が既に主張していますが、それでも民主主義社会への道は・・・。中世社会で革命的な思想とかではなくても、民衆から善政と慕われる君主、領主は、洋の東西を問わずいっぱいいます。
 その一方、絶対的君主の下なら、国民は一律平等、貴族などの階級はなくなって・・・という考えもあるような気がします。何のかんのといっても、フランスの絶対王政は市民の方を見ていましたが、貴族階級を廃止はしませんでした。新旧階級、階層、勢力、団体をバランスを取ることで君臨していた、というのが最近の考え方です。しいて言うなら、「国民の全てが監獄に入っていて、看守が一人で監視、支配、世話をしている」と評されたプロイセンのフリードリッヒ2世などがもってきてもいいかもしれませんが、彼のプロイセン国家は封建貴族がかなりの特権を持って残ったままでしたし、彼はそれを廃止しようとさえしませんでした、国王は国民の公僕である、と言いながら。
 また、「ギルド」、「冒険者ギルド」としてでてくるのが、やたら現代っぽくて、本来のギルドとはかけ離れていすぎますね。
 まあ、突っ込みどころはいっぱいあります。問題視するのも、いかがなものかもしれません。複雑になってしまって、つまらなくなってしまいますから・・・。でも、社会や正義に対する認識レベルが低いというか、甘すぎるというかが気になるのです。

 悪役令嬢ものとリンクして、こういう展開を考えてしまいます。
 ①婚約者である王太子は進歩派だが、微温的改革をせざるを得ず、新旧勢力の狭間で苦悩。悪役令嬢の父親は保守派の巨頭。辺境大公又は隣国の王子は保守派、どちらかというと気さくな性格でも専制主義のトップ。王太子を寝取る?女性は、市民派。という設定。
 ②ざまあして、元婚約者を処刑、寝取った女に凄惨な死、だが、その女の最後の言葉に疑問を持ったところで気を失って、婚約破棄の3年前に帰ってしまい。その言葉が気になって見ていると、進歩主義者の婚約者の苦悩を知り協力し愛を深め結婚へ、女を監視するため身近に置くと彼女の真の姿に気づき親友に、保守派の父を説得し、保守派で外国勢力と結んで反乱を起こすor保守派の不満を利用して侵攻する隣国を3人で協力して撃退して、国民議会設立の方向に・・・。
 ③ざまあして本来の秩序に戻し明るい未来を夫とともに信じていたところ、国民の一斉蜂起、前国王夫妻(元婚約者と寝取り女)の意志を継ごうと。広がる波に挑むも連戦連敗、頼みの自分達のために立ち上がった農民達は実は夫の辺境大公又は隣国国王の配下の偽装農民・工作員に扇動されたもので瞬く間に正体が暴露されて、内部から崩壊。全てが崩壊し、冷たくなった夫・・・絶望の中、保守反動の側であって、左右の対立に苦悩していた元婚約者のことを理解せず、進歩派の女と語り合ってうちに愛が生まれてもおかしくない、自分との婚約破棄は保守反動と絶縁しても、社会改革を進めるためだったと気づく。寝酒に毒を盛られていて、そのまま目を覚まさず・・・。が婚約破棄の3年前に生き息戻り。婚約者、王太子の助けになろう、寄り添おうと決意、そのように行動。そして、寝取り女と出会うが、彼女は真摯で、純粋で、聡明な、国を憂える改革主義者であることが分かり親友に。彼女は、その立場を守り続ける。そして、「絶対別れません。」と手を握り合う婚約者二人の物語に。

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