第8話 悪役令嬢、チーム追放、聖女追放・・・もの

文字数 2,549文字

 悪役令嬢ものと言えば、「乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまって」が代表と言えます。そもそもそのような乙女ゲームは存在しない、転生で子供時代をしっかり過ごしながらも貴族として知識不足だったり、養子である義弟が婚約者の王子と張り合ったり、百合な親友とか、ツッコミどころはいっぱいあるものの、面白いということは別においても、本来ならどうしようもない女性、悪役令嬢としてしか表現できないという設定であること、ゲームでのバッドエンドの理由が嫉妬の挙句の王子への暗殺未遂であり、学園での弾劾やとてつもない陰謀とかではなくむりがないものであり、ヒロインはあくまでゲーム設定とおりの優しく、賢く、明るい・・・女性のままである、婚約破棄はでてこない・・・という設定になっています。
 それが次々に生まれてくる悪役令嬢ものでは、「悪役令嬢」となっているのに、どうして彼女が悪役令嬢?という素晴らしい女性、知らぬの婚約者ばかりなりであったり、本来?のヒロインがかなり悪女になったり、中にはモンスター化するものさえでてきました。
 そもそも、よく言われるように、多くの悪役令嬢ものでは、悪役令嬢の婚約破棄からスタートしますが、どうして彼女の婚約者が簡単に婚約破棄をするのか?家同士、王子と高位の貴族ならば国政レベルの話になり、おいそれと婚約破棄などできるものではありませんし、高位の女性が学園で弾劾などありえません。それに、結婚してから好きな女を愛人にすればいいだけですし、貴族社会では歴史を見ればよくあることです。かえって、「真の愛を見つけた」という王子様は純情な、善良すぎる人ではないかと同情したくなります。まあ、どうしようもないダメ男ということにされていますが。かなり無理筋が目立ってきているように思われます。
 婚約破棄を望むのに、かえって婚約者は本来のヒロインを放っておいて、溺愛してくるというのもありますが、庶民感覚とかで心をつかむ場合も多く、ちょっとな~と思います。
 聖女追放ものになると、現実の場合なら聖女といっても、超人的な聖なる力を行使するわけではないので、「真の聖女だ。」「偽聖女だ。」とかを言い立てることはできるでしょう。実際に聖なる力が存在する世界で、それを行使できる、している聖女を「偽聖女」として追放し、その能力のない女性を「真の聖女だ」として迎えいれる者がいるでしょうか?そんな流れに乗るほど、浅はかな女性がいるでしょうか?
 勇者やエリートチームからの追放ものも、追放の理由が、これもよく指摘されるところですが、納得できるものがない。「防御力はいらない」とか理由があげられますが、あればあった方がいいじゃない、なんで追放までするの?報酬の分け前が減るから?結局一番は、寝取り、横恋慕等男女関係が、まあ納得できる?それに、勇者がどうして庶民の女にとか問題ありすぎ。
 中には、理不尽な理由で追放して、一旦落ちるチームが再生、成り上がるというのもでてきましたが、流石に理不尽に追放した面々が、素晴らしくなって、実は素晴らしくて、成り上がっていくというのはどうもね・・・と思ってしまいます。
 悪徳令嬢、そうは書かれずとも、阿保馬鹿王太子の代わりに国政を実質的に切り盛りしていた、誰もが認める才女などという設定もあります。でも、これって越権行為、国家としては危険なことです。
 女性だからというのではなく、国王あるいは王太子は、その身分から、その国政の役割が義務付けられるわけであって、妃であっても、それは許されません。王妃が国政に関与して国が乱れた、あるいは関与せざるを得ない状態、国政が乱れている状態、でやむを得ず関与したという事例は歴史上枚挙できないくらいあります。摂政として認められている場合を除いて、家族であっても、妻であっても、制度を無視して、国政に関与してはならないのです。
 まして、婚約者が良い事であったとしても、王太子の印を勝手に文書に押印することは、大逆罪になるべきことです。

 というわけで、この種の話は私だと、こうなってしまいます。

① 婚約を破棄した元婚約者のおかげで国が国政が円滑にいっていたことを知った王太子だけど、時既に遅く、元婚約者と今夫の隣国の国王と元婚約者の父である元宰相にざまあされるように、民衆に処刑される。
②①の設定の小説またはゲーム?(そんなのあるか?)の王太子に転生あるいは死に戻りした主人公は、やり直しを決意。自堕落な生活ではなく、一生懸命自分を磨き、良い国の建設に向って努力する一方、婚約者を大切にする。
③父国王が国政を放り出したため、自分が国政をとらなければならなくなる。近臣たち、この日のため選抜し、育成してきた面々とともに、議会、官僚達とも強力して国政を進めようとする。
④そこに、自分も主人公とともに、国政を担おうとして、分担して文書を、案件を裁決して、国王印を押そうと、執務室に入ってこようとする婚約者。
⑤それはさせられないと拒む主人公。泣いて抗議する婚約者と憤慨する宰相である彼女の父親。国の制度上と・・・という主人公の考えに誰もが賛成。その時にいたって、小説あるいは前世のあれは何だったのか?と気が付く。
⑥彼の目には、善政をする宰相と聡明で正義感、義務感の強い、優しい、自分を思っている婚約者の姿が別の者に見える様になった。調べれば調べるほど、彼女は野心家の、国を乗っ取る悪女としか考えられなくなった。
⑦最終的に、国を守るため彼女との婚約は破棄。彼女は隣国の国王と結婚、宰相は辞職。そして、国内では反乱、隣国からの侵攻が始まる。
⑧苦しい戦いが続いたが、反乱は鎮圧、隣国の侵攻は撃退。元婚約者の父、彼女の今夫の隣国国王は退位、幽閉。元婚約者は子供と引き離され、修道院に幽閉。
⑨苦悩する主人公に、側近で、幼馴染で、ずっとそば近く仕えていた女性、一応貴族(魔法がある世界ならハーフエルフ)が後ろから優しく抱きしめ、「陛下のご苦悩は私が一番知っております。あの方を忘れておられないのはわかっています・・・でも、私は陛下をお慕いしている自分をもう抑えられないのです。」と涙ながらに告白。優しく抱きしめかえす主人公。そして、二人は・・・。
 
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