第9話

文字数 1,112文字

ゲームで河田さんが1を選択したときから、何十分か経ちゲームは終盤に差し掛かっていた。河田さんは事あるごとに、ゲームが接戦になるような数字を選択していて不気味だった。結果、私が8マス河田さんが7マスとなった。



「俺は2を選んだ」

「河田様が選択し終えました」

なにを言ってるんだろう、河田さんは。何が目的でどうしたいのかが解らない。・・・万が一相手が3で私が3を選んだとしても、ゲームマスターはまだ6マスと余裕がある。



ここは3を選ぼうかな?本当に素直に3を選んでもいいのか。かといって、ほかにいい案があるわけじゃない。3にしよう。

「保土ヶ谷様が選択し終えました」

結局、勝つことで生が保証されてるわけじゃないけど。どうしようか。まあ、それは勝ってからの話だが。



「それでは数字の発表を行います。保土ヶ谷様3、河田様2。発表結果により、保土ヶ谷様が10マスに達したので保土ヶ谷様の勝利となります。河田様は処刑場まで、移動してもらいます」



勝った。しかし、正当防衛にしろ私は人を殺したことになる。あまりいい気分じゃない。かといって、自分が死ぬのはごめんだから同情することに、意味はないだろう。前をむいて生きたほうがいい。この後生きていればの話だが。



前の扉から2人の男が出てきて、河田さんの鎖を外し、扉の向こうへ連れ去っていった。やっぱり何かおかしい。河田さんは連れられるとき、なんの抵抗もしなかったし表情も穏やかだった。しばらくすると扉が開き、目だし帽の男がでてきて私の背後に立った。そしてモニターが切り替わり、数分後河田さんの顔が映された。



「これから、河田様の処刑を開始します」

その声と同時に、私の頭を無理矢理モニター方向に目だし帽の男が固定した。私を不快にさせるために、死ぬ瞬間を見せつけるらしい。さすがに、平静さを失ってきた。さっきまではゲームに集中していたから大丈夫だった。



が、今はもう終えていることと自分が実質殺すことになる人の死を見させられることが、私の鼓動をうるさくしている。緊張状態に近い。よく、緊張したら興奮だと思えと言うが、さすがに人の死に立ち会う瞬間に自分が興奮しているとは思いたくない。



河田さんの顔の上に縄が見える。首吊りで処刑されるのだろう。すると突然河田さんの顔が歪み、もだえ苦しむようになり、青く腫れ固まった。そして、目を見ると左右で光の色が違うことに気づいた。私は人の死を見たこと以上に、別の事に動揺していた。



ゲームの運営に協力していた男の1人が消えた。河田の処刑の準備をしにいったのか、保土ヶ谷を開放また殺しにいったのか。とにかく、最強の隻腕こと僕も動き出す必要がありそうだ。正義もうまくいっていればいいが。
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