第10話

文字数 1,363文字

ビリーに話した作戦だが、とくに何の捻りもないものだ。内容は俺の持ってるモデルガンを、実銃だと思い込ませる。そのために、ビリーに死体役をやってもらう。必要なものは血糊、水、水風船、モデルガン、演技力だ。



流れは、ビリーの背中に水に溶かした血糊が入った水風船を固定、たまたま遭遇した空き巣をビリーが演じ俺がモデルガンを向け、ビリーがちょい仰向けぐらいになる。そこで俺が発砲し、それと同時にビリーが背中の水風船を押し潰す。それらをゲームの運営者に見せつける。



完璧。ホーキングにもこの作戦の失敗に説得力を持たせることは不可能だ。一通り準備を整えた俺たちは、流れを確認しながら隻腕が言ってた監禁現場前に着いた。場所は普通の住宅街の中。建物も普通の一軒家だ。幸い、この町自体人通りが少ないのもあって周りに人はいない。



「いいか、鍵は俺の仲間が開けてある。まず俺が先に入って、お前が俺の後ろについていく。俺たちがグルだってことがばれないように、ある程度離れて俺を襲う感じでついてこい。何事も無ければ保土ヶ谷を連れて退散。敵に遭遇したら、演技の開始だ。あと、背中は不自然に膨らんでるから見えないようにしとけよ」

「わーってる。さっさとしようぜ」

「そうだな」

そういって2人で、扉近づいた時

「おい、待てよ。お前らに言ってんだ。ヤク中、ペテン師」



そう言い出したのは、早川のデブ取り巻きを連れたその中の1人の男だった。そいつ含め、4人いる。あの交渉のとき、早川は逃げたわけじゃなかったみたいだ。・・・怪しい。何故この場所がわかった?



「おーお前ら、助けにきたのかよ。やっぱ持つべきものは仲間だな」

脳内スポンジこと、ビリーが言った。

「警戒しとけ。作戦をこの場で実行する羽目になるかもな」

小声で俺がビリーに言った。ビリーは怪訝な表情をしたが、一応納得したようだ。

「はは。そうビビんなって。俺たちは別に問答無用で、お前らを殺しに来たわけじゃない。頼み事があってきたんだ」

「ここから立ち去れ、だろ」

俺が言ってやった。

「そうだ。そうすれば何もしない。立ち去らなきゃ、わかってるよな?」

「ああ。そうだな・・・」



あのクソ女、何のつもりか妨害してきやがった。俺が気に入らねぇのか、保土ヶ谷攫った奴とグルなのかしらねぇが。とにかく、やるしかねぇな。俺はモデルガンを取り出した。



「「!」」

両者それぞれ違った驚きだ。俺はビリーに銃口を向けた。

「おい、ビリー。そこに倒れろ」

「・・・ああ」



取り巻きの奴らは、何が何だかわからない様子だ。その間抜け面をもっと酷くしてやるよ。

俺は無言で音と薬莢だけ銃の、引き金を引いた。ガチな銃声と同時に、ビリーの背中から一気に赤いものが流れだした。よし、演技は完璧だ。これはもうモデルガンじゃねぇ実銃だぜ。



「とまあ、このように使えないカスの死体が示している通り、これは銃だ。お前らに3つの選択肢をやるよ。ここで死ぬか、逃げ切るか、ビッチみたく訴えるか、なぁ?どうする?」



死んでると思い込ませたビリーも、さすがの演技だ。とりあえず、こいつらが消えたらどうする?まぁ俺ともなれば、ほんの少しの工夫で全てどうにでもなるがな。



「・・・」

「どうした?ビビりすぎてうごけねぇか?」

「いや。演技は結構だが、そのモデルガンしまっとけよ。独り言が多いぜ?」

・・・やっべ。

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