第8話

文字数 1,161文字

と、私が河田さんに勝てるなどとはさすがに言い過ぎだが、相手が勘違いしているのは明白だ。その勘違いとは、手枷に画面が表示されているのだが、それは右手左手同様であるがそれぞれが連動していると思っている点だ。



実際にはそれぞれを鎖で操作できる。私が地面についた左手からそう感じたのだろう。いや、でもそれはあまりにも思考が極端じゃないかな。



仮に、画面が連動していて相手の数字を見ることが出来たとしても、わざわざ勝利への確信を宣言するほどではない。というか、そもそも宣言する必要はなんだろう。私を揺さぶるため?単にあまり考えてない?

とにかく、ゲームをする他ない。河田さんが、私の思い通りの思い違いをしている場合私が数字を選択するのを左手から見届けない限り、選択しないだろう。



私は左の画面で、2に照準をあわせながら右の画面で3を選択して左の画面を、河田さんに見えない角度にした。



「保土ヶ谷様が選択し終えました」

キャップ男が少し慣れてきたのか、口調と敬称が変わった。すぐに慣れたなあ。これで、私の考えがあっていれば河田さんは私が選んだ数字が、2だと勘違いしているはず。



そうだとすると、河田さんは3を選択する。そして被りでゲームマスターが、3マス進み相手が混乱し自分が心理的に優位な状態につける。全て私の思い違いだったとしても、左手はブラフになるだろう。

「河田様が選択し終えました」

問題はここからだ。このゲームに勝利するには相手の行動を読む必要がある。そのためには、相手の性格を知ることが重要でそのためには――――

「それでは、数字の発表を行います。保土ヶ谷様3、河田様1」

「え」

河田様1?え?

「発表結果により、保土ヶ谷様が3、河田様が1マス進んでいただきます」

「・・・」

河田さんが勝利を確信したような笑みを浮かべていた。そこに、勝ちに対する興奮はなくこの世に対する諦観が含まれているような気がした。



 隻腕の男はゲーム会場の上の階、監視用のモニターが備えられた部屋にいた。



ここには、自分の他に1人の男がおりゲームの運営を手伝っている。僕は金で雇われたが、こいつの動機は何だろうか。

しばらく見ていると、突然モニターの男の表情が歪み苦しんでいるようになり、顔が青く腫れだして、脱力した。



「そうゆうことね」

よく見ると、その男から縄が伸びていた。首をつられて窒息したようだ。恐らく処刑の予行練習に使われたのだろう。



ただ疑問なのは、男が何故甘んじて処刑を受け入れたのかだ。脅されたのか、率先して受け入れたのか。それもゲームマスターを脅し問えば解るだろう。



また、別のモニターには2人の男女が映っていた。女は保土ヶ谷だ。どうやら、何かゲームをしているようだ。



勝とうが負けようが、保土ヶ谷は殺されるだろう。それを阻止するには正義が必要だ。さあ、どうなるかな。

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