第4話

文字数 938文字

裏路地に着いたら、案の定いた。そいつ1人が換気口に座っている。どうやらトリップ前の様子だ。とんじっまてたら話になんねぇからな。そいつの名前は早川杏、女だ。

「あ、先生じゃん。昼間にここに来るの珍しくね?」

俺は粋がった馬鹿どもよりは、おつむがマシに出来ているから先生と呼ばれてる。

「ああ。実は頼みがあってな。早川にしかできないことだ」

「え、なになに」

どっかの本で、「あなたにしかできない」的なこと言うと頼み事が成功しやすいって書いてあった。

「取り巻きの男どもをある場所に、連れて行ってほしいんだ。そこに俺の仲間が囚われてて、助けだしたいんだ」

「ふーん・・・いいよ。条件付きで」

「当たり前だ。なにが欲しい?」

「物はべつにいらない。今日一日2きりで、遊ぶのに付き合ってよ」

こいつ何言ってんだ。そんなことになんで俺が、貴重な時間を捨てなきゃならねぇんだ。

「すまない。すぐにでも助けに行かないと仲間が、死んじまうかもしれないんだ。遊びに行くぐらい、これが終わったらいくらでも行ってやる。だから頼む。協力してくれ。」

「いや。いまじゃなきゃだめ。だから断る」

この女面倒くせぇ!クソ、どうすりゃいい?他のラリった奴らは、早川と比べたら関係性が薄すぎる。その上、ガリガリだ。だったらこの女を、どうにかするしかねぇ。マジでどうする?暴力で脅しても、早川の取り巻きにリンチされるだけだ。だとすると、えーっと。・・・あ!そうだ!

「なぁ、お前の名前なんだっけ」

「はぁ?杏だけど」

「苗字は?」

「・・・早川」

「なぁ、お前の早川って苗字偽名なんだろ」

「・・・」

俺が早川を偽名だと尋問したのはこいつが俺に初めて名を名乗ったとき、杏と先に言って少し詰まって早川と言ったからだ。まぁ、つまりほとんどはったりだ。相手の反応を見る限り、いい線いってるんだろう。

「どこまで知ってる?」

「さあな。ご想像にお任せするよ」

これが脅しになればいいが。

「・・・わかったわ。すぐにでも取り巻きの奴らを送る。じゃあねー」

「え?おい!待て」



早川は小走りですぐに去った。あいつに場所を伝えてないんだが、行っちまった。すでに場所を知ってるのか?それともただ単に逃げたのか?言えるのは、早川はあてになんないってことだ。となると。・・・どうする?
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