第12話

文字数 768文字

「嬢ちゃんじゃない方の君。戦う意思がないんだったら、生存権は保証するよ」
その瞬間、私を拘束していた男が離れて右手にナイフを取り出した。両者の男の間隔は約3メートル。

体形は平均だがナイフを装備した男と、やや体格はいいものの瘦せ型で片腕の男。片腕の男が不利に見えるが、どうするのだろうか。私は見ていることしかできない・・・いや、この状況はむしろ私が何かすべきなのかな?足だったら使え―――

「ああ、そうそう。嬢ちゃん。君は見てるだけでいいよ。生きたい場合に限った忠告だが」
え、どうしてわかっ――

「それで、ナイフ片手のお前は俺を殺す気でいるみたいだが、研がれた鉄の板じゃ、俺との戦闘能力差は埋められないね。実に愚かだ。その前に己の思考を研ぎ澄ましたらどうだ?」
もちろんその言葉は、挑発として受け取られナイフの男は片腕の男ににじり寄りだした。

「おっと。さっきのはただの挑発じゃないんだけどな。要するに思い出せってこと。俺たち会ったこと、あるだろ?」

片腕の男が早口で、まくし立てる。この人は何をしたいんだ?苦し紛れの時間稼ぎ?ナイフの男は止まる気配がない。

「そのとき、俺に思ったこと、あるだろ?それが答えだ」
ついに2人の距離は、ナイフのみの射程範囲になった。そして片腕の男にナイフが振りかざされた。
「おお、怖い怖い」
そういいながら彼は振られたナイフを持った腕の手首を、的確に掴みその持った腕を簡単に反対へ折り曲げた。
「ぐっ・・・」
ナイフの男は何故か声を堪えた。その次にナイフは地面に落ちた。すると片腕の男は、ナイフの男の耳元で何か言った。
「!」

ナイフの男は驚いた様子で固まった次の瞬間、屈みナイフを拾い私の方に退散した。
そして私を左腕でヘッドロックした。

「ああ、見損なったよ。最初出会ったとき俺を、元軍人だと見破ったのはよかったんだけどな。河田?」
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