第1話

文字数 1,660文字

『迷探偵・・・~戦慄の楽譜~』   

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本作品はかつて私が敬愛する五人の作家先生に友情ご出演を頂き、独断と偏見で創作し平成29年のとあるサイトの企画に参加させて頂いたニアミスパクリカオスコメディです。
大切な想い出としてここに置かせて頂きますことをお許しください。


*この物語はフィクションで、登場する人物、団体、名称等は架空であり、実在のものとは
一切関係がありません。


・・・・・・・・おことわり・・・・・・・
出演者のセリフに先の五人の作家先生ご本人の私的コメントやセリフをコピペさせて頂いた箇所が幾つかあります。作品から拝借したものには注釈を添えさせて頂いています。



*********プロローグ**********


美しい少女がひとり、枕を濡らしていた。

「ああ、お父様……どうして、私を置いて、いってしまわれたの?」
彼女は胸のネックレストップを握り締めた。
しらうおのような指の隙間から200カラットのダイアモンドが煌めき、降り注ぐ涙に虹色の光が反射する。

コンコン
重厚な扉が開かれ、黒のドレスに身を包んだ婦人がスイートルームに入って来た。
「姫。また、泣いていたのですか?この2日間、お父様のことは忘れなさいと言ったでしょう」
「いいえ、お母様。私、お父様のことを忘れるなんて、片時だって……」
姫は細い肩を震わせた。
「さあ、そろそろ、パーティーの時間ですよ。メアリーを呼びましょう」

遠くで雷が鳴った。


******************




ここあは、運転席真下のオープンデッキに立ち、目を固く瞑った。
なぜ、目を瞑ったのか。
この列車は時速800kmで走行中のため、目を開けたら潰れてしまうからだ。事実、風は石つぶてのように頬を殴り続け、顎は緩み、呼吸もままならない。
これ以上、ここに留まれば、涙で滲んだマスカラが隈取りのごとき紋様と化すに違いない。
景色を見ることが出来ないオープンデッキ。一体、何のためにあるのだろう?

「嘘こけ。オープンデッキは進行方向逆の方しか入れないんだぞ」

……仕方がない。
ここあは、風圧に堪えながら手探りで先頭の展望車に逃げ込み、ようやく目を開けた。
天井まで続く大窓のパノラマ風景がドピューンと遥か後方へ流れ去る。これはほら、あの虫の殻みたいなソリに飛び乗り仰向けで氷の道をシューーッと滑走するオリンピックのあの競技をやっている気分ではないか?

「ひゃっほー!イェーイ!」
言葉にならない歓声を上げる。

「あの競技って何?言葉にならないなら、黙ってろよ」

「うるさい、一鍵(いっきい)。私は、ぶっ飛んだコメディを書くのよ」
ここあが反論する。
「ぶっ飛ぶ方向が違うんじゃね?ただの滅茶苦茶じゃんか」
一鍵(いっきい)がつっこむ。
「う……」
「語彙が貧弱。風景描写が出来ないなら、スル―したらいいんだよ。それでも、小説家?」
「違う、探偵よ。自分の解決した事件を小説にする……」
「つまり、一つも書いたこと無い?」
「失礼ね。たまに下らないコント書いてるわ」
「売れない小説家ってことか」
「生意気ね。探偵だって言ってるじゃん」
「なんで、探偵?」
「妖怪人間ベム見たでしょ?探偵とは矛盾を隠すのに格好なアイテムなの。何が何でも書くからっ」*1)
「大丈夫。姉貴なら書けるよ」
一鍵(いっきい)は煽て上手でもあった。
「ホント?こう言うのメタフィクションって言うんだって。前、書いた時、教えて貰った」
「前にも書いたの?二番煎じじゃん」
「ええい、黙れ黙れ。この乗車券が目に入らぬか。恐れ多くも1人1泊27万円の宿泊券であるぞ。頭が高い。控えおろぉー」
「ははぁー。僕が悪うございました、姉上様」
「パーティーの時間だわ。私の正体、絶対ばらさないでよ」
「わかってるけど、なんで、姉貴は名字無いの?」
「妖怪だから」
「妖怪って名字無いの?」
「べムに名字あった?」    
「え?」
「ベラは?ベロは?」
「……無い」
「ほらね」

*1)2011/10/22~12/24『妖怪人間ベム』日本テレビ.(2017/3/27アクセス)

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