12・firstと適合者の遭遇
文字数 1,238文字
『親戚の子からチームに誘われてるんだけど、久隆も一緒に入らない?』
大崎久隆は学校帰り、迎えの車の中で一緒に屋敷に暮らしている霧島咲夜にそう提案された。
『親戚の子?』
旧姓姫川咲夜は実の父を幼い時に事故で喪っており、その後母が再婚し霧島となる。だがその後、離婚をし咲夜は義理の父に引き取られた。
複雑な家庭の為、あまり親戚や家族のことを聞いたことがなかった久隆は、驚いて聞き返したのだ。
『うん。今、大学生で”姫川利久”っていうんだけど』
咲夜の説明に反応したのは同車していた葵だった。
”姫川利久”はそんなに有名人なのかと思っていると、どうやらそうではないようだ。
有名なのは利久の幼馴染みで同級生の方。
その相手とは、久隆も良く知る人物であった。
『大崎海斗さんって知ってる? K学園理事長の長男らしいんだけど』
と、続ける咲夜。
K学園とは久隆たちの通っている学園のことである。
知ってるも何も、その理事長は久隆たの父の従弟。大崎一族の者である。
海斗はたしか、兄の圭一と同級生のはず。
『うん、よく知ってる。兄さんと仲悪いんだよね。向こうが一方的に嫌っている感じではあるけれど』
久隆は管理塔での用が済んだら、咲夜と合流する約束をしていた。
チームに入るかどうか、まだ迷っている段階だが追々決めればいいだろう。
そんなことを思いながら階下に向かうエレベーターの前にたどり着くと、先客がいた。
急ぎではないが、次のエレベーターがいつ来るのかわからない。
そう思った久隆はとっさに、
「待って!」
と先客に声をかけた。
「俺も下に行きたいんだ」
ゆっくりと振り返る、……恐らく少年。
というのも、相手は目深にフードを被っており、どんな容姿なのか判別し辛いからである。
何故か彼は、こちらを見て戸惑っているようだ。
「えっと……」
声を発しない彼に続けて久隆は問いかける。
「乗っても?」
と。
彼はゆっくりと後ずさると頷いた。
無言の二人を乗せたエレベーターはゆっくりと降下していく。
久隆は乗り込むときにチラリと視界に入った、彼の手首のリングがとても気になっている。
恐らくあれはマザーから与えられる、”指定保護認定者 ”用の特殊なものだろう。
──と言うことは、彼がマザーの言っていた”セト”なのだろうか。
だとしたら、Conciliator のメンバーのリーダーであるファーストの自分には彼を守る義務がある。
しかしなんと切り出すべきか?
不審者だと思われては元も子もない。
「ねえ、君がファースト?」
「ッ……」
先に口を開いたのは、相手のほう。
久隆はゆっくりと振り返……ることはできなかった。
いつの間にか傍まで来ていた彼が耳元で囁くように、
「そのままで」
と久隆に告げると一歩下がり、離れる。
「うん。君は、何処まで行くの? 良かったら送るけど」
正面を向いたまま、意識を彼に集中させ久隆は提言する。
だが、
「大丈夫、下に仲間がいるから」
と彼。
その言葉を聞いて、久隆はホッとしたのだった。
大崎久隆は学校帰り、迎えの車の中で一緒に屋敷に暮らしている霧島咲夜にそう提案された。
『親戚の子?』
旧姓姫川咲夜は実の父を幼い時に事故で喪っており、その後母が再婚し霧島となる。だがその後、離婚をし咲夜は義理の父に引き取られた。
複雑な家庭の為、あまり親戚や家族のことを聞いたことがなかった久隆は、驚いて聞き返したのだ。
『うん。今、大学生で”姫川利久”っていうんだけど』
咲夜の説明に反応したのは同車していた葵だった。
”姫川利久”はそんなに有名人なのかと思っていると、どうやらそうではないようだ。
有名なのは利久の幼馴染みで同級生の方。
その相手とは、久隆も良く知る人物であった。
『大崎海斗さんって知ってる? K学園理事長の長男らしいんだけど』
と、続ける咲夜。
K学園とは久隆たちの通っている学園のことである。
知ってるも何も、その理事長は久隆たの父の従弟。大崎一族の者である。
海斗はたしか、兄の圭一と同級生のはず。
『うん、よく知ってる。兄さんと仲悪いんだよね。向こうが一方的に嫌っている感じではあるけれど』
久隆は管理塔での用が済んだら、咲夜と合流する約束をしていた。
チームに入るかどうか、まだ迷っている段階だが追々決めればいいだろう。
そんなことを思いながら階下に向かうエレベーターの前にたどり着くと、先客がいた。
急ぎではないが、次のエレベーターがいつ来るのかわからない。
そう思った久隆はとっさに、
「待って!」
と先客に声をかけた。
「俺も下に行きたいんだ」
ゆっくりと振り返る、……恐らく少年。
というのも、相手は目深にフードを被っており、どんな容姿なのか判別し辛いからである。
何故か彼は、こちらを見て戸惑っているようだ。
「えっと……」
声を発しない彼に続けて久隆は問いかける。
「乗っても?」
と。
彼はゆっくりと後ずさると頷いた。
無言の二人を乗せたエレベーターはゆっくりと降下していく。
久隆は乗り込むときにチラリと視界に入った、彼の手首のリングがとても気になっている。
恐らくあれはマザーから与えられる、”
──と言うことは、彼がマザーの言っていた”セト”なのだろうか。
だとしたら、
しかしなんと切り出すべきか?
不審者だと思われては元も子もない。
「ねえ、君がファースト?」
「ッ……」
先に口を開いたのは、相手のほう。
久隆はゆっくりと振り返……ることはできなかった。
いつの間にか傍まで来ていた彼が耳元で囁くように、
「そのままで」
と久隆に告げると一歩下がり、離れる。
「うん。君は、何処まで行くの? 良かったら送るけど」
正面を向いたまま、意識を彼に集中させ久隆は提言する。
だが、
「大丈夫、下に仲間がいるから」
と彼。
その言葉を聞いて、久隆はホッとしたのだった。
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