1・繋がる世界
文字数 1,210文字
ものすごい音がし、世界が強烈な光に包まれたと思ったら世界は暗転した。闇になれない目を凝らすも、何も見えないままだ。
時間にして数秒。しかしその時間はとてつもなく長く感じた。
他のユーザーも状況は同じ。
パニックになった者たちの悲鳴や怒号がそこかしこから聞こえる。
傍にいた恋人の咲夜が、
「久隆、大丈夫?」
と声を潜めて問う。
久隆は声のする方に手を伸ばした。
五感でしっかりと感じることのできるバーチャルリアリティーゲーム、A world with utopia underground。通称【AG】。
彼に触れ、ドキリとする。なんだか感触がいつもよりもリアルに感じたからだ。
暗闇はすぐにいつも通りの明るさへと戻る。
安堵のため息をつく久隆に、
「サーバーがダウンしたのかな」
と呟くように言う咲夜。
彼は長期プレーヤーであり、常にランキング上位に名前を連ねるほどの有名プレイヤーであった。この世界のことに詳しいのは当然とも言える。
「いつものテロップが表示されないね」
いつも通りの【AG】ならばすぐにお知らせのテロップが流れるはずなのだ。
まだ初心者と変わらない久隆は、黙って咲夜の言葉を聞いていた。こういう時は、『騒がない、慌てない、冷静に』である。
「バグっているのかもしれないし、一度ログアウトしてみようか」
古参の言うことは素直に聞け。
そう思った久隆は彼に従いログアウトしようとした。
「あ、あれ? メニューが出ない」
他のウインドウは通常通り開くことが出来るのに、外界へ繋がるメニューのみが表示されない。
「これは待機ということなのかな?」
明らかに何かがオカシイ。それを明確に言葉にすることはできないが。
「ねえ! あれ見て」
不意に背後から上がった声に、久隆と咲夜は反応した。
「管理棟から煙が出てる」
この世界の中心に聳え立つのが管理棟。
初めてこのゲームの世界に足を踏み入れた時、お世話になる場所。そしてその後は色んな手続きをするのに足蹴く通う場所でもある。
あの管理棟のてっぺんには、この世界を統べるマザーがいると言われていた。
「ログアウトもできないし、管理棟へ行ってみようか? 煙が昇っているのも気になるし」
テキパキと次の行動を決めていく咲夜。
久隆はただ彼に従うしかなかった。
彼が荷物の中から二人乗りの『ウイングボード』という移動用の乗り物を取り出す。
「よかった、使えそうだ」
ログアウトのメニューが出ない。
もしかしたら道具が使えない可能性もあった。
状況が逆ならどんなにか良かったろう。
嘆いても仕方がないと思った久隆は言われるままに彼の後ろへ乗り込む。
「中央のマップにいて良かった。他の場所なら、状況を把握するまでに時間がかかったし、パニックになっていたかもしれないね」
饒舌なのは久隆を気遣ってのことなのだろう。
不安を見せれば彼が困る。
そう思った久隆は極めて明るく相槌を打ったのだった。
時間にして数秒。しかしその時間はとてつもなく長く感じた。
他のユーザーも状況は同じ。
パニックになった者たちの悲鳴や怒号がそこかしこから聞こえる。
傍にいた恋人の咲夜が、
「久隆、大丈夫?」
と声を潜めて問う。
久隆は声のする方に手を伸ばした。
五感でしっかりと感じることのできるバーチャルリアリティーゲーム、A world with utopia underground。通称【AG】。
彼に触れ、ドキリとする。なんだか感触がいつもよりもリアルに感じたからだ。
暗闇はすぐにいつも通りの明るさへと戻る。
安堵のため息をつく久隆に、
「サーバーがダウンしたのかな」
と呟くように言う咲夜。
彼は長期プレーヤーであり、常にランキング上位に名前を連ねるほどの有名プレイヤーであった。この世界のことに詳しいのは当然とも言える。
「いつものテロップが表示されないね」
いつも通りの【AG】ならばすぐにお知らせのテロップが流れるはずなのだ。
まだ初心者と変わらない久隆は、黙って咲夜の言葉を聞いていた。こういう時は、『騒がない、慌てない、冷静に』である。
「バグっているのかもしれないし、一度ログアウトしてみようか」
古参の言うことは素直に聞け。
そう思った久隆は彼に従いログアウトしようとした。
「あ、あれ? メニューが出ない」
他のウインドウは通常通り開くことが出来るのに、外界へ繋がるメニューのみが表示されない。
「これは待機ということなのかな?」
明らかに何かがオカシイ。それを明確に言葉にすることはできないが。
「ねえ! あれ見て」
不意に背後から上がった声に、久隆と咲夜は反応した。
「管理棟から煙が出てる」
この世界の中心に聳え立つのが管理棟。
初めてこのゲームの世界に足を踏み入れた時、お世話になる場所。そしてその後は色んな手続きをするのに足蹴く通う場所でもある。
あの管理棟のてっぺんには、この世界を統べるマザーがいると言われていた。
「ログアウトもできないし、管理棟へ行ってみようか? 煙が昇っているのも気になるし」
テキパキと次の行動を決めていく咲夜。
久隆はただ彼に従うしかなかった。
彼が荷物の中から二人乗りの『ウイングボード』という移動用の乗り物を取り出す。
「よかった、使えそうだ」
ログアウトのメニューが出ない。
もしかしたら道具が使えない可能性もあった。
状況が逆ならどんなにか良かったろう。
嘆いても仕方がないと思った久隆は言われるままに彼の後ろへ乗り込む。
「中央のマップにいて良かった。他の場所なら、状況を把握するまでに時間がかかったし、パニックになっていたかもしれないね」
饒舌なのは久隆を気遣ってのことなのだろう。
不安を見せれば彼が困る。
そう思った久隆は極めて明るく相槌を打ったのだった。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)
(ログインが必要です)