2・世界の中核
文字数 1,361文字
ウイングボードで進むこと十分 。
普段はこの広さを心地よいと感じていたが、緊急事態の今感じるのは焦りばかり。
「こんなに遠かった?」
と咲夜。
確かに何かがいつもとは違っている。
「ワープ機能は使えないの?」
フィールドには青い円筒の柱がいくつか設置されていた。ワープ用の装置である。
「どうかな」
彼は久隆の問いかけに渋い顔をした。
意識を繋ぎ、電気信号によりリアルに世界を感じることができるAG。
二十年前の事故では植物人間になってしまった者もいるらしい。
「危ないことはしないに越したことはないよ」
咲夜の意見に久隆はもっともだと思った。
あの時事故に巻き込まれた人々の意識は、未だにこの世界にあるのだろうか?
久隆はふと、そんなことを思う。
だとしたらどこに?
AGこと、【A world with utopia underground】とは『地下に理想郷 のある世界』という意。
現在のAGの前作では、いずれ地下世界に行けるようになると謳われていた。だが実際は、その日を待たずして事故が起きる。
後 の公式発表で『システムの暴走が原因』だと書かれていたそうだ。
久隆は現在十八歳。産まれる前の話しである。
噂では当時のユーザーが事件解明のためにプレイしているとも聞く。もしかしたら彼らも管理塔に向かっている可能性はあるだろう。
「見て、久隆」
スタートして二十分ほど経っただろうか?
管理塔が目の前に迫ってくる。
上階を見上げれば、煙があがっているのが見えた。
「飛来物がぶつかった感じだね」
と咲夜。
その言葉に久隆は眉を寄せる。
管理塔が攻撃された。もしくは何らかの事故が起きたというのだろうか?
ゲームの中なのに?
管理塔とはその名の通り、ゲームの世界を管理する場所。
つまりサポートセンターや運営機関のようなものだ。それがゲームの中に設置されていたとして、こんなことあるだろうか?
まさかイベントだとでも?
次から次へと沸き起こる疑問。
入り口までたどり着くと、ウイングボードから降りる二人。
だがこのままでは登れるのは中途まで。
一般ユーザーが中枢へ行くことはできない。
二人は顔を見合わせると、右手首に触れた。
「ん? あれ?」
本来なら、装置が作動するはずだったが何も起きない。
「不具合かな、仕方ない手動で」
二人はガッカリしながら空間を開く。
先日この世界を統べる『マザー』よりConciliator に任命された。手首のベルト型リングに触れれば、正装へと変化する……はずだったが、何も起きなかったのである。このような不具合も想定されているため、装置を使わずに着替えることは可能。
二人はいそいそと物陰へと行き、空間から取り出した衣類に着替え、腕章を嵌めた。
全くカッコつかない。
ワイシャツにスラックス、ネクタイにコート。
これは二人のスタイル。正装はメンバー個々で違っていたが、灰色に近い黒を基調としている。
「そういえば、外部へは連絡できそう?」
と咲夜。
「ダメっぽいね」
久隆は外部との連絡を試みたが、接続することはできなかった。
「嫌な言い方をすれば、僕らは閉じこめられたってわけだ」
咲夜は言って歩き出す。
管理塔入り口に立てば、透明なガラス戸が左右に開く。
久隆もゲンナリした表情をし、彼に続いたのだった。
普段はこの広さを心地よいと感じていたが、緊急事態の今感じるのは焦りばかり。
「こんなに遠かった?」
と咲夜。
確かに何かがいつもとは違っている。
「ワープ機能は使えないの?」
フィールドには青い円筒の柱がいくつか設置されていた。ワープ用の装置である。
「どうかな」
彼は久隆の問いかけに渋い顔をした。
意識を繋ぎ、電気信号によりリアルに世界を感じることができるAG。
二十年前の事故では植物人間になってしまった者もいるらしい。
「危ないことはしないに越したことはないよ」
咲夜の意見に久隆はもっともだと思った。
あの時事故に巻き込まれた人々の意識は、未だにこの世界にあるのだろうか?
久隆はふと、そんなことを思う。
だとしたらどこに?
AGこと、【A world with utopia underground】とは『地下に
現在のAGの前作では、いずれ地下世界に行けるようになると謳われていた。だが実際は、その日を待たずして事故が起きる。
久隆は現在十八歳。産まれる前の話しである。
噂では当時のユーザーが事件解明のためにプレイしているとも聞く。もしかしたら彼らも管理塔に向かっている可能性はあるだろう。
「見て、久隆」
スタートして二十分ほど経っただろうか?
管理塔が目の前に迫ってくる。
上階を見上げれば、煙があがっているのが見えた。
「飛来物がぶつかった感じだね」
と咲夜。
その言葉に久隆は眉を寄せる。
管理塔が攻撃された。もしくは何らかの事故が起きたというのだろうか?
ゲームの中なのに?
管理塔とはその名の通り、ゲームの世界を管理する場所。
つまりサポートセンターや運営機関のようなものだ。それがゲームの中に設置されていたとして、こんなことあるだろうか?
まさかイベントだとでも?
次から次へと沸き起こる疑問。
入り口までたどり着くと、ウイングボードから降りる二人。
だがこのままでは登れるのは中途まで。
一般ユーザーが中枢へ行くことはできない。
二人は顔を見合わせると、右手首に触れた。
「ん? あれ?」
本来なら、装置が作動するはずだったが何も起きない。
「不具合かな、仕方ない手動で」
二人はガッカリしながら空間を開く。
先日この世界を統べる『マザー』より
二人はいそいそと物陰へと行き、空間から取り出した衣類に着替え、腕章を嵌めた。
全くカッコつかない。
ワイシャツにスラックス、ネクタイにコート。
これは二人のスタイル。正装はメンバー個々で違っていたが、灰色に近い黒を基調としている。
「そういえば、外部へは連絡できそう?」
と咲夜。
「ダメっぽいね」
久隆は外部との連絡を試みたが、接続することはできなかった。
「嫌な言い方をすれば、僕らは閉じこめられたってわけだ」
咲夜は言って歩き出す。
管理塔入り口に立てば、透明なガラス戸が左右に開く。
久隆もゲンナリした表情をし、彼に続いたのだった。
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