10・適合者、セト
文字数 1,242文字
『これはあなたを守るためのものよ』
そう言って彼女がセトの手首につけたのは、白いリングだった。
『装備には加算されないけれど、外すこともできないから注意してね』
管理塔の一室。
彼女はAGでプレイするユーザーを管理し守る存在、通称マザーと呼ばれている。
彼女の言う注意とは、セト装備を見れば他のユーザーから”指定保護認定者 ”とわかってしまうという意味で、だ。
『そんな顔をしなくても大丈夫よ。規定に従い調停者を任命したの。彼らはわたしの手足となって、AGの秩序を守るために働いてくれるはずよ』
そういってたくさん並んだモニターの一つに目を向ける彼女。
『近いうちに、あなたにも紹介するわね』
セトは部屋を出ると階下へ降りるためにエレベーターに向かう。
管理塔はAGの世界の中心に位置する。
その中でも”管理棟”は上層にあった。
現実世界でも付き合いのあるK学園初等部時代の先輩がチームを作るといっており、セトはそこに誘われている。彼らも手続きの為こちらに来ているはずだ。
セトはこの時、思っていた。
彼らは自分の為にチームを作ろうとしているのだと。
─そう、俺を守るためだ。
セトは手首のリングを見つめる。
セトは以前からずっと、二十年前に起きた事故について調べていた。
こうなったのはある意味好都合なのかもしれない。いや、なるべくしてなったのだと思いなおす。
───思えば、AGを始めた当初からおかしかった。
セトがAGを始めたのは、例の先輩に誘われたからだ。
その先輩はAGでも数少ない、GM《ゲームマスター》という称号を持っている。
それはつまり、このゲームをかなりやりこんでいる上級者であることを意味する。
セトはそんな彼とほぼ一緒に居たにも関わらず、ユーザーから襲われることが多かった。彼の影響によるやっかみなのだろうと思ったりしたこともあったが、どうもそうでは無いらしい。
原因を突き止めるため、二十年前にAGで起きた事故について調べることにしたのだが、一般ユーザーでは立ち入り制限があるところもあり、わからないことのほうが多い。
情報は管理棟にある。
そう睨んでいたところでもあった。
セトがこのゲームをプレイするのは、それだけが理由ではなく他に大きな目的もあるのだが。
到着したエレベーターは特殊なもののようで、一度乗り換えが必要だった。
セトはエレベーターの箱に乗り込むと、階下のボタンを押す。
この管理塔内にある図書館に寄るか悩む。その場所は『管理棟』区域。
Conciliator たちとの顔合わせの後は、行動の規制を受けることが予測された。
どうしようか迷っているうちにチンと小気味良い音がし、ドアが開いた。
セトは仕方なく降りることにしたのだが。
──ん?
外には金髪に明るめの色のスーツを着た少年が立っている。
彼の腕には腕章が。
その腕章を見てセトは驚いた。何故ならその腕章は、噂でしか聞いたことがなく実態の掴めない”審議会”の役員であることを示すモノだったからである。
そう言って彼女がセトの手首につけたのは、白いリングだった。
『装備には加算されないけれど、外すこともできないから注意してね』
管理塔の一室。
彼女はAGでプレイするユーザーを管理し守る存在、通称マザーと呼ばれている。
彼女の言う注意とは、セト装備を見れば他のユーザーから”
『そんな顔をしなくても大丈夫よ。規定に従い調停者を任命したの。彼らはわたしの手足となって、AGの秩序を守るために働いてくれるはずよ』
そういってたくさん並んだモニターの一つに目を向ける彼女。
『近いうちに、あなたにも紹介するわね』
セトは部屋を出ると階下へ降りるためにエレベーターに向かう。
管理塔はAGの世界の中心に位置する。
その中でも”管理棟”は上層にあった。
現実世界でも付き合いのあるK学園初等部時代の先輩がチームを作るといっており、セトはそこに誘われている。彼らも手続きの為こちらに来ているはずだ。
セトはこの時、思っていた。
彼らは自分の為にチームを作ろうとしているのだと。
─そう、俺を守るためだ。
セトは手首のリングを見つめる。
セトは以前からずっと、二十年前に起きた事故について調べていた。
こうなったのはある意味好都合なのかもしれない。いや、なるべくしてなったのだと思いなおす。
───思えば、AGを始めた当初からおかしかった。
セトがAGを始めたのは、例の先輩に誘われたからだ。
その先輩はAGでも数少ない、GM《ゲームマスター》という称号を持っている。
それはつまり、このゲームをかなりやりこんでいる上級者であることを意味する。
セトはそんな彼とほぼ一緒に居たにも関わらず、ユーザーから襲われることが多かった。彼の影響によるやっかみなのだろうと思ったりしたこともあったが、どうもそうでは無いらしい。
原因を突き止めるため、二十年前にAGで起きた事故について調べることにしたのだが、一般ユーザーでは立ち入り制限があるところもあり、わからないことのほうが多い。
情報は管理棟にある。
そう睨んでいたところでもあった。
セトがこのゲームをプレイするのは、それだけが理由ではなく他に大きな目的もあるのだが。
到着したエレベーターは特殊なもののようで、一度乗り換えが必要だった。
セトはエレベーターの箱に乗り込むと、階下のボタンを押す。
この管理塔内にある図書館に寄るか悩む。その場所は『管理棟』区域。
どうしようか迷っているうちにチンと小気味良い音がし、ドアが開いた。
セトは仕方なく降りることにしたのだが。
──ん?
外には金髪に明るめの色のスーツを着た少年が立っている。
彼の腕には腕章が。
その腕章を見てセトは驚いた。何故ならその腕章は、噂でしか聞いたことがなく実態の掴めない”審議会”の役員であることを示すモノだったからである。
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